“プライスレス”なものも、引き算で金額換算しよう
私は今年で42歳になります。この数字を見た瞬間、あなたはおそらく「私と○歳差だ」と無意識に思ったのではないでしょうか。つまり私とあなたの年齢を比較し、2つの数字を引き算することで、「○歳差」という数字を導いたのです。つまり、引き算とは「比べるとき」に使う計算法になります。
世の中には定量化しにくいものがたくさんあります。たとえば「愛」を金額換算するとどのくらいでしょう。
もちろん絶対的な正解はありません。「プライスレス」と言いたいところですが、この難題も引き算を使うことで簡単に定量化できます。「愛があるとき」と「愛がないとき」を数値化して引き算すればよいのです。
たとえば、もし私が恋人に誕生日プレゼントを渡すとして、その予算は5万円程度です(少ないですか?)。一方、ごく普通の友人の誕生日プレゼントなら、予算は5000円くらい。その差額は4万5000円。つまり、この差額を「愛の値段」と定義することができるでしょう。
▼あなたがいなかったら、業績はどれくらいだった?
先ほどの「定量化しにくいテーマを定量化する」という思考回路のポイントは、比較すること、つまり「引き算」をすることです。
たとえば、あなたは先月も一生懸命お仕事をしていたはずです。「私はこの会社に欠かせない存在です」と言えることでしょう。ただ、本当にそうなのかは他人には伝わりません。定量化されておらず、かつ他の何かと比較していないからです。「あなたがした(いた)」と「あなたがしなかった(いなかった)」を比べ、具体的に何がどう違ったのかを数字で表現できて初めて他人に伝わるのです。
「会社への貢献度」を数値化するには
では先月のあなたの会社への貢献度(仕事ぶりが会社の業績のどこにどう反映され、結果的に業績の何%〔いくら〕くらいになったのか)をざっくりと数値化してみましょう。その数字をAとします。収益への貢献度だけではなく、あなたにかかるコストも忘れずに計算してください。
一方、もしあなたが先月1日たりとも仕事をしなかったと仮定したら、会社の業績に何%くらい影響したでしょうか。その数字をBとします。そうしてできた概算値AとBの引き算が、あなたの価値を示す数値の1つとして定義できるでしょう。
今回お伝えしたいことの本質は、このように「価値」を定量化する感覚を持つことの大切さです。仮にあなたの価値がざっくり月500万円だとします。その場合、売り上げがわずか月50万円程度にしかならない新規事業にあなたは携わるべきでしょうか。
それはあなたにとって(もしかしたら会社にとっても)マイナスになるかもしれません。自分の価値がざっくりでも把握できれば、上司や経営層と渡り合い、説得力のある「拒否」だって可能です。
誰もが“プライスレス”と表現したくなるものに出合ったら、ぜひ遊び感覚で数値化にチャレンジしてみてください。
「プライスレス」は封印! 定量化しにくいものは「ある」ときと「ない」ときの差を比較してみよう。
ビジネス数学の専門家。BMコンサルティング株式会社代表取締役、多摩大学非常勤講師。『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など著書多数。人生のテーマは「数字が苦手な人を0(ゼロ)にする」。