時間を“見える化”して人生を取り戻そう
時間だけは、神様が平等に与えて下さった。これは本田宗一郎の名言としてよく知られています。確かにそうです。収入が多くても少なくても、外見がよくてもイマイチでも、理想的なパートナーがいてもいなくても、時間だけはすべての人に1日24時間が与えられている――。でも、この名言には続きが。
「これをいかに有効に使うかはその人の才覚であって、うまく利用した人がこの世の中の成功者なんだ」
これもまさにおっしゃる通り。時間は見ることも聞くことも触れることもできない。うっかりしていると、目の前の情報に気をとられ、その存在を忘れてしまいます。
女性議員が秘書に暴言、有名女優が主治医と不倫、大企業がデータを改ざん。そんなニュースに笑ったりあきれたりしているうちに、あっという間に月日は流れ、やりたかったことが一つもできていないことに気づく――。
そうならないためには、時間を可視化し、自分のための計画を立て、こまめに“メンテナンス”するしかありません。
手帳はまさに、そのためのツール。ページを開くと、そこには持ち主だけに与えられた真っ白な時間が広がっています。
仕事の目標。プライベートの目標。そこから逆算して分解した日々のタスク。いつも持ち歩く手帳にそれらを書き込んでおけば、自分とは関係のない情報に流されることなく、前に進んでいくことができます。人生を取り戻す、というと大げさでしょうか。
「スマホだけ」「手帳だけ」はもう古い?
最近は手帳に加え、スマホ(スマートフォン)などのデジタル端末でスケジュールを管理する人も増えています。「プレジデント ウーマン」がメルマガ読者を対象に行ったアンケート(2017年7月13日~19日に実施。回答数1212)では、5割以上が「手帳とスマホを併用している」と回答。「手帳のみ」は3割弱。「スマホのみ」はおよそ1.5割でした。
手帳は一覧性にすぐれ、名刺やカード入れにもなりますが、ページ数が多いものはかさばるし重い。スマホはコンパクトで、予定の変更や編集がすばやくでき、ペンを忘れても問題ないけれど、ウェブ検索や通話をしながらでは入力できないし、見たいページを表示するのに2~3タップする必要がある。
それぞれに一長一短があるので、併用しながら自分にとって一番いい使い方を探っていくことになります。
10月7日発売の「プレジデント ウーマン11月号」では、第2特集「デジタル×アナログ〈最強〉手帳術」で、スマホと紙のメリットを“いいとこ取り”する方法を提案しています。
有名企業に共通する「時間管理術」とは
「IT企業&文具メーカー〈デジ×アナ〉あわせワザを検証!」では、デジタルに強い企業と、アナログに強い企業では、時間管理の仕方に差があるのか――という視点で、有名企業の社員に取材しています。
「消せるボールペン」でおなじみの筆記具メーカー、国内トップシェアのふせんメーカー、利用者数2800万人のSNSや、月5800人が利用するレシピサイト。そこで働く社員たちは、どんなツールを使っているのでしょうか。ここでは詳細を省きますが、取材に応じてくれた社員には、以下の「4つの共通点」がありました。
基本はGoogleカレンダーなどのウェブツールを利用。それをスマホやタブレットなど、複数のデバイスで見られる設定にしておき、補助的に薄手の手帳を利用する。
PCやスマホを操作しにくい年長者との打合せでは、手帳に書き込むほうがマナー面で安心できます。多色ボールペンで色分けして書くことで、重要度の高いものを目立たせたるなどの工夫をしている。
Evernoteなどのアプリに入力する一方で、とくに大切なものは「ふせん」にも記入して、手帳やPCなどの目立つ場所に貼り付ける「両刀使い」。
デジタル端末には、ToDoが常に表示されているわけではない。リマインドをかけていても、割り込み業務に気をとられてスルーし、そのまま忘れてしまう危険もある。ふせんに書いて常に視界に入れておくようにすれば、抜けや漏れを防げる。
スマホのメモ機能やEvernoteなどのアプリをフル活用。「手書きのほうがスムーズ」と、ふせんにメモしている人も、一日の終わりにスマホで撮影してアプリに保存。フォルダ名やタグを工夫すれば、関連するアイデアを一覧できる。
日々の出来事はSNSにさらりと記録。家族との外出や習い事、夜の食卓など、プライベートを公表している人が多かった。ただし、女性の何人かは「自分だけの記録」を残すために、1日1ページタイプの手帳を「家置き」にして愛用。
デジタルで時短、アナログで満足
面白いことに、「家置き」手帳を使っていたのは、いずれもIT企業の女性社員でした。
仕事ではデジタルツールをフル活用していても、家では手帳にチケットを貼ったり、イラストつきのレシピを書く……といったアナログな作業を楽しんでいるのです。
効率や検索ではデジタルツールが優位ですが、アナログツールには使う人の個性や好みを受け止めてくれる懐の広さがあります。書き込むことで得られる達成感、満足感は、やはりアナログに軍配が上がるようです。
「私にとって、紙の手帳は1カ月単位でスケジュールを俯瞰し、効率化を考えながら作業の優先順位を決めるためのツール。スマホは、メールで受け取った住所をもとに目的地までの経路を検索する時短ツール。どちらも重要です」
そう話すのは、同特集に登場する手帳評論家・美崎栄一郎さん。
ノートや文具の使い方や、仕事の効率化をテーマに26冊もの本を執筆している美崎さんは、最新のデジタルツールを導入した時間管理の方法を、惜しみなく公開してくださいました。
そろそろ、11月始まりの手帳を探しに行こうと思っている人も多いでしょうが、その前に「プレジデント ウーマン11月号」で予習して、スマホとの併用を前提に選んでみてはいかがでしょうか。バッグが重くならない「100g未満の手帳」や、編集部で人気投票を行った「手帳文具ランキング」もお見逃しなく!