森永製菓「春のイースター時期に合わせた限定商品」を紹介

発売から2017年で50周年を迎える森永製菓の「チョコボール」。子どもから大人までファンが多く、国民的チョコレート菓子と言える商品だ。このマーケティングと商品開発を任されているのが野条理恵さん。

「当社の場合、基本的にはひとつのブランドをひとりで担当しており、社長へプレゼンするのも担当者だけ。再提案になった場合は現場テストなども最初からやり直しになることがあるので、必ず通る企画書にしなければならないんです」

「チョコボール」は定番商品のほかに期間限定で年3回ほどテーマの違う商品を発売。今回見せてもらった企画書は春の“イースター(復活祭)”時期に合わせた限定商品のもの。「消費者の主な層は親子。決裁者である社長にも消費者の気分になってもらえるよう、楽しく臨場感のある資料づくりを目指しています」

▼プレゼンテーションクリエイター 前田鎌利さんが資料を判定

◎ピカピカOK資料

【good!】写真は複数使いで
写真付きの資料の場合は、1スライドにつき1枚を印象的に大きく見せるか、上のように多画像を並べ、バリエーションを見せる方法が効果的です。複数枚を使用する場合は、なるべく余白を入れないほうが臨場感が出るでしょう。
【good!】「ポジティブは青」「ネガティブは赤」で統一
世界中の信号は「青は進め」「赤は止まれ」で統一されているように、一般的に青は「良好」や「順調」を表し、赤は「不良」「危険」などを表します。もし社内でこのルールが統一されていれば、決裁者は色を見ただけで、スライド上の情報を一瞬で判断できるはずです。
【good!】画像は左、説明は右に。脳内処理を意識した配置
左脳はテキスト、右脳はビジュアルの処理が得意といわれ、それぞれクロスして情報を処理します。そのため「商品概要」の資料のように、左側に画像やグラフ、右側に文字の説明を配置すると、内容が頭にスッと入りやすくなりますよ。

×あるあるNG資料

【bad!】詰め込みすぎはNG。伝えたいことを絞って
スライド1枚の中で説明することは、なるべく少なくすることがポイント。上図の場合、伝えたいことが3項目も入っており、何を一番伝えたいのかがわかりづらい。本人が説明する前に内容がすべて見えてしまうため、聞き手は飽きてしまいます。
【bad!】棒グラフがすべて同色で比較がしづらい
「イースターの認知」項目の「知らない」+「名前だけは知っている」=71.3% 、「どんなことをして過ごすイベント・日か知っている」=28.7% 。この数字はポジティブとネガティブに分かれているはず。しかし同じ色合いのため、何が問題なのか不明確です。
【bad!】ムダな文字が多く項目別に整理されていない
決裁者は短時間で判断しなければいけないので、文字数を極力減らすことが大事。「商品概要」のスライドでは、「商品概要」という言葉が2回も出てきます。詳しく読まないと、どこに何が書かれているのかわからないので、項目別にまとめると良いでしょう。

<野条さんの資料づくりのコツ>
▼味を想像しやすいように配色にこだわる
資料づくりにおいて、色は多用しすぎないことが鉄則だが、野条さんは菓子メーカーならではの色使いをすることも大事と考えている。たとえばカスタードプリン味の商品なら、背景にクリーム色を使うなど、視覚を通じて聞き手が味わいを想像できるような色を使ってアピール。
▼イベントの写真を多く入れ目で見て楽しい資料に
聞き手を飽きさせないことや、“おいしく、たのしく、すこやかに”という会社の基本理念を常に意識。文字を減らし、イベントなどで撮影した写真を入れて、明るく楽しい雰囲気を伝えるようにしている。アニメーションを効果的に使うこともあるそう。
▼ツイッターなどのSNSでお客さまの声をキャッチアップ
企画書の中にお客さまの声を積極的に入れている野条さん。そこで、ツイッターやインスタグラムなど、スマホを使って商品名の検索をかける。「ブログよりも比較的情報が新しく、お客さまのそのときのシチュエーションや生の声がわかります。それを盛り込むと、説得力が増すんです」(野条さん)
野条理恵
森永製菓 菓子食品 マーケティング部。新卒で入社し、アイスの製品計画担当を経て、チョコレート菓子のマーケティング部門に配属。2006年と10年に産休・育休を取得し、11年より現職。
 
前田鎌利
監修プレゼンテーションクリエイター/書家。ソフトバンク在職中、孫正義氏の後継者育成機関の第1期生に選考され1位を獲得。孫氏のプレゼン資料づくりも数多く担当した。著書の『社内プレゼンの資料作成術』シリーズは11万部を超えるベストセラー。