Q. 私たちが今、読むべき本は何ですか?
Answer:タレント・壇 蜜さん

(左下から時計回りに)『マリア様がみてる』『蒼穹の昴』『プレコ大図鑑』『完訳グリム童話集』『ポケット詩集』

『蒼穹(そうきゅう)の昴(すばる)』と出合ったのは、グラビアの仕事と病院の仕事を半々でやっていた2011年頃。3年で週刊誌の表紙を飾るなどの結果が出なければと、母と約束した2年目でした。

登場人物は辛いことがあっても天命と受け入れ生きていきます。私自身も天命として今の仕事をしているのかも、そう思ったとき、毎日努力して粛々と仕事ができているのなら、見せ方はどうあれ間違いじゃないと思えました。売れなかったらと不安になったり、卑屈になったりせず、クタクタになるまで応援してくれる人に尽くす。水商売でも、病院の仕事でも、グラビアでも。それをやった後に、うまくいかなかったら文句を言えばいいやと思って。

仕事の帰り道、ぐったりして、歩くのもしんどいなあと思ったときに、これでいいんだと。そういう、「人のせいにしない時期」が必要だったのだと思います。

とはいえ、世の中の理不尽に煩わされるときには、同じように理不尽で珍奇な登場人物を寄せ集めた『グリム童話集』で晴れの日が来るまで耐えてほしいものです。

▼ご紹介いただいた本5冊

▼プライベートなら?
『マリア様がみてる』今野緒雪(著)集英社 本体457円+税

私立リリアン女学園高等部を舞台にした大人気学園コメディー。1998年に1巻が発売され、39巻まで発売。アニメ化もされた。「私も女子校育ちなので、しつけや習ってきたものに恥じないようにと襟を正すことも。時折出てくるがさつさを補正してくれるよう」

▼支えになったのは?
『蒼穹の昴』浅田次郎(著)講談社 1~4巻 本体各640円+税

中国・清朝末期。都に上る貧しい少年の春児と幼馴染みの文秀を待ちうけるのは……。シリーズ450万部を超えるベストセラー。「天命に逆らうことなく、夢中で生きることを善とする世界。読むと仕事しなきゃと奮い立つ」

▼落ち込んだときは?
『プレコ大図鑑』アクアライフ編集部(編)エムピージェー 本体1886円+税

観賞用ナマズ、プレコの生態や飼育法を解説した図鑑。「家に4匹います。心がいっぱいいっぱいになったとき、何を考えているかわからない生き物を飼育すると、モヤモヤの落としどころが見つかる。顔を見ていると自分の悩みなんて小さいと思えて救われます」

▼今、読むべきは?
『完訳グリム童話集』グリム兄弟(著)野村ひろし(訳)筑摩書房 1~7巻 本体各950円+税

グリム童話の決定版。「グリム童話は理不尽な出来事の宝庫。おかしな人や話が通じない人が多い時代で、30~40代の女性は生きているなかで一番理不尽を感じる世代。いつかいい潮合いが来ると信じて、理不尽に対抗する底力に」

▼仕事に役立つのは?
『ポケット詩集』田中和雄(編)童話屋 1~3巻 本体各1250円+税

宮沢賢治や茨木のり子、谷川俊太郎など、近現代の精神の高い現代詩を集めた詩集。「胃もたれするような、脂っこくて上質で、ちょっと高貴な言葉たちは、いまの時代から自分を切り離すはさみ。プレッシャーから解放してくれる」

壇 蜜
タレント。1980年、秋田県生まれ、東京育ち。昭和女子大学卒業後、和菓子工場、銀座のクラブ、葬儀場などさまざまな職場を経験。29歳でグラビアアイドルデビュー後は、テレビや女性誌など、多くのメディアで活躍中。調理師免許、英語教員免許、日本舞踊の師範の資格も持つ。
 
●壇 蜜さんの本
『壇蜜日記3 泣くなら、ひとり』(文藝春秋)、『壇蜜歳時記』(大和書房)ほか。