注:旧TOEIC(R)は、TOEIC(R)Listening&Readingに名称が変更になりましたが、この記事ではSpeaking&Writing(S&W)と区別するために「TOEIC」と表記しています。
高得点を売り込めば、転職、昇進で有利に!
さまざまなビジネスシーンで必要とされる英語力。検定で証明された実力は自分をアピールする材料になるが、種類がたくさんあるため、何を選べばいいのか悩むところだ。留学サポートを行う「Sapiens Sapiens」の代表取締役 山内勇樹さんは「ビジネスで活用するのであれば、受けるべきはTOEICです」と語る。
「ビジネス英語と日常英語を扱っているTOEICは年々シェアを広げ、多くの企業で人事や総務が『これぐらいの点数を取っていれば、この業務は任せられる』と判断するための指標として利用されています。高得点をアピールすれば、就活、転職、昇進で有利に働くのは間違いありません」
▼レベルE(10点以上)
コミュニケーションができるまでに至っていない
▼レベルD(220点以上)
通常生活で最低限のコミュニケーションができる
▼レベルC(470点以上)
日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる
(600点以上)
新卒者が就職活動でアピールに使える
▼レベルB(730点以上)
どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている
(800点以上)
外資系企業への転職、国際事業部などへの異動、海外赴任に必要
▼レベルA(860点以上)
Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる
(900点以上)
どの方面に対しても高い英語力があることを誇示できる
さらに現場で役立てたいという人に山内さんが推奨するのが、TOEIC Speaking&Writingテスト(以下S&W)だ。古くからあるリスニングとリーディングの試験、TOEICに対し、TOEIC S&Wは電話の応答を想定した問題、メールの作成などの試験が行われる。
「パソコンを使って実務に近い作業の問題を行い、英語の実践力、応用力を見るテストです。発音などが試されるので一人で学習することが難しく、TOEICよりもハードルは高い。ただしその分、みんなができないことができるというアピールにもなります。S&Wは各技能200点ずつの400点満点で、企業に英語力をアピールできるレベルは大体、合計320点以上と考えてください」(山内さん)
それぞれの英語検定が持つ特徴&強みとは?
その他の英語検定で、老舗の存在感を放つのが英検だ。文部科学省が後援し、中高生の受検者が多いことが特徴。ネーティブでも落ちることがある英検1級を持っていれば、高い英語力の証明になる。
「ただし点数制ではないので、同じ級でも余裕ある合格かそうでないのか、こまかい実力が判断しにくい。そのため、ビジネスの指標としてはあまり用いられていません」(Sapiens Sapiens 代表取締役 山内勇樹さん)
TOEFLは、大学の講義や学生の会話といったキャンパス英語を主体にした検定。一般入試、AO入試などの受験時にスコアが利用できるなど、大学で幅広く活用されている。社会人視点で見れば、海外留学や大学院への進学といったアカデミックな場に戻るときや、国連関係、国際公務員を目指すときに役立つ。
そして世界的にもっともメジャーと言えるのが、IELTSだ。誕生したイギリスだけでなく、オーストラリア、カナダでは移住申請に用いられ、多くの高等教育機関で評価の対象になる。アメリカ以外の海外への移住や就職、ワーキングホリデーなどを考えている人は、スコアを取っておくと有用だ。
なおこれ以外にも英語検定は増えているが、上智大学と英検が共同開発したTEAP、英語学校のベルリッツが実施するGTEC for STUDENTSなど、中高生を対象にした検定が目立つ。現役受験生世代はなおさら、今以上に英語力が求められることがうかがえる。
一度受けてみて損はない!
英語の必要性を感じ、これからTOEICを受けようと考える人は、まず何点を目指せばいいのか。山内さんによれば、新卒で就活するなら最低ラインとして600点以上。海外に関係する仕事に就きたいなら800点以上が必要。そこである程度の実力を証明できたら、スコアを追求せずビジネスに即した勉強にシフトしていくのもひとつの考え方だという。
「ただ、アピールするかしないかは別にして、一度受けてみて損はないと思います。英語を学びたいと思っても『何をしていいかわからない』と迷って前に進めない人が多いのですが、受けると決めれば勉強するきっかけになる。もし結果が悪くても、自分のできることとできないことが把握できて、何点を取るために頑張るという目標も設定できます」(山内さん)
社会人になってから勉強を始めても遅くない
そして「社会人になってから勉強を始めても遅いのでは?」という不安は杞憂(きゆう)だと語る。
「TOEICは部分理解でも答えられる部分がある一方、読みこんでしっかり考える全体理解も必要とされるテスト。特に2016年5月から新形式になって、その傾向が強まりました。全体を関連づけたり、先を予想したりするスキルにくわえて、ビジネスシーンに即した問題も多いので、社会人経験を積んだ30代からのほうがむしろ向いているかもしれません。
転職や昇進を目的に時間をつくって真剣に学習するだけでなく、『海外ドラマを英語で見たい』『あの国を観光したい』とライトな気分で取り組むのもいいでしょう。英語が少しでもできるようになれば、海外の人と交流したり、外国で自由に買い物をしたり、単純に楽しいことが増える。楽しむところから入って興味が湧いたら、英語を学ぶモチベーションもどんどん向上しますから」(Sapiens Sapiens 代表取締役 山内勇樹さん)
▼リスニングセクション(45分・100問・495点満点)
Part1:写真描写問題
〈従来のテスト〉
1枚の写真について4つの説明文の中から的確に描写している文章を選ぶ。(10問)
〈2016年5月からの新形式〉
設問数が減少(6問)
Part2:応答問題
〈従来のテスト〉
1つの質問・文章について、3つの選択肢から最もふさわしいものを選ぶ。(30問)
〈2016年5月からの新形式〉
設問数が減少(25問)
Part3:会話問題
〈従来のテスト〉
2人の会話を聞いて、4つの選択肢の中から適切なものを選ぶ。(30問)
〈2016年5月からの新形式〉
会話の3人バージョン、図や表を参照しながら聞く問題が新たに登場。(39問)
Part4:説明文問題
〈従来のテスト〉
Part3と形式は同じ。会話ではなくアナウンスやナレーションが流れる。(30問)
〈2016年5月からの新形式〉
Part3同様、図や表が登場。視覚的要素により解きやすいとの声も。(30問)
▼リーディングセクション(45分・100問・495点満点)
Part5:短文穴埋め問題
〈従来のテスト〉
不完全な文章を完成させるため、4つの選択肢の中から適切な語句を選ぶ。(40問)
〈2016年5月からの新形式〉
設問数が減少(30問)
Part6:長文穴埋め問題
〈従来のテスト〉
不完全な文章を完成させるため、4つの選択肢の中から適切な語句を選ぶ。(12問)
〈2016年5月からの新形式〉
空欄が4つある文書が3→4セットに。語句だけから文を挿入する問題も(16問)
Part7:読解問題
〈従来のテスト〉
さまざまな文書を読み、4つの選択肢の中から適切な解答を選ぶ。(48問)
〈2016年5月からの新形式〉
3つの文書を読んで答える問題、本文中に文章を挿入する問題が登場。(54問)
「Sapiens Sapiens」代表取締役。1980年長崎県生まれ。バスケットボールをするために単身渡米し、UCLAを卒業。帰国後、語学教育・留学サポートを行う同社を設立。