世界の働く女性たちのワークライフバランスは? ヨーロッパ、アメリカ、アジアの働く女性たちの家事・育児の両立テクニックを聞いた――。

<海外編>

海外のワーキングウーマンは、優先すべきは何かをよく考え、環境を変えるべくすぐにも行動する姿が見えてきた。職場での働き方はもちろん、家事の外注もその一つ。家に他人を入れたくない、人に家事を任せたくないと考える日本人は多いが、それも割り切り方次第。

●FRANCE
Jeannette LE(ジャネット・レ)さん

PUBLICIS(業界世界第3位)クリエーション部/戦略&ソーシャルメディア部・部長アシスタント
仕事内容:広告代理業
家族構成:子ども2人のシングルマザー

[ジャネットさんの1日のスケジュール]
6:30 起床(朝食準備)
8:10 子どもたちを学校に送る
8:45 出勤
17:00 退社
18:00 帰宅(夕食準備・15分)
18:20 夕食(テーブルでデザートのフルーツをカット、子どもとの団らん)
20:30 子ども就寝
~22:30 自主労働(メール処理、電話)
23:30 就寝

▼冷凍食品で夕食準備15分。自主労働でノルマをこなす
8割のフランスの女性が仕事を持ち、合計特殊出生率は2人超。出産を機に、何を守り、捨てるかを明確にした。守るのは子どもとの夕食。そして仕事のノルマをその日のうちに済ますこと。全グループで初めて17時退社を可能にした。誰よりも早く出社し退社。子どもと過ごした後、自宅で残りの仕事を片付ける。この「第2ラウンド」は自主労働だ。「職場の慣例とWLBが合わなかったら、実現可能な方法を提案する勇気を持たなきゃ」。18時に帰宅。夕食準備は15分。前菜は常備のサラダ、メインは冷凍有機食品を温めるだけ。子どもらと楽しく過ごすエネルギーを残すため、料理の時間をスパッと切り捨てた。「仕事の後に料理していたら目がつり上がっちゃう。それより笑顔」。家事はためず、掃除は毎晩ペーパーモップをかけ、洗濯機は乾燥機付き。週末は遊ぶ。「何を守り、何を捨てるかはっきりさせること。全部求めたら、足りないものしか見えなくなるから」

●U.S.A.
Olga Lachayeva(オルガ・ラチャエバ)さん

言語&数学ラーニング・センター(Languages and Math Learning Center:LMLC)代表
仕事内容:語学&数学の学習サポート
家族構成:夫、子ども3人

[オルガさんの1日]
●月・火・水・金曜日
7:00~14:30 家庭の雑用と、4歳の次男の世話
14:30~ 車で長女を迎えに。娘との会話、食事の世話
16:00~21:00 仕事(ロシア語や数学を教えながらスクールを運営。事務処理、14人の教師への対応、生徒の保護者への対応など)
22:00~24:00 家庭の雑用。夫との時間
24:00 就寝
●木・土・日曜日 家族とともに過ごすオフの日

▼夫の万全な協力体制と、外注&ロボット家電を駆使
日本でいう、語学と数学の学習塾を経営するオルガさんは、米大手企業でエンジニアとして働く夫と3人の子どもの5人家族。ロシア人である一家が米国に来たのは夫の仕事が理由。「夫は家事や子育てに協力的で、私の仕事にも理解があります。毎日夕方には夫が帰宅し子どもの世話をしてくれ、私のオフィスのコンピュータートラブルにもすぐに駆けつけてくれるほど。とてもよいチームです」。長男は博士課程に進み、別の場所で暮らしている。高校生の長女と4歳の次男が一緒に暮らしているので、家事はできるだけ効率的に済ませる。隔週でハウスクリーニングを入れ、日々のちょっとした掃除はロボット掃除機を使う。庭掃除も隔週で庭師に依頼。が、小さな子どもがいるため、洗濯は毎日。米国に移住してから起ち上げたオルガさんの学校(LMLC)は、2015年サンホセ市から試験準備のベストスクールとして表彰された。夫の協力あってこその両立のよう。

●SWEDEN
Asa Jacobsson(オーサ・ジェイコブソン)さん
プロジェクトエンガシェマン副社長(Projektengagemang)
仕事内容:建設コンサルティング
家族構成:パートナー、子ども4人(独立)

[子育て期の1日のスケジュール]
6:00 起床(朝食などの準備、子どもの世話)
8:00 子どもを保育園に預ける
8:30~17:45 仕事
18:00 帰宅
18:30 シッターさん家族含め 5人で夕食
~20:30 子どもとの時間
23:00 就寝

▼家事の外注&週末の自分の時間づくりで心身の負担減
建設コンサルティング会社の副社長、オーサ・ジェイコブソンさんは、92年に外交官の夫と死別後、13年間女手一つで2人の子どもを育て上げた。夫を亡くした翌年に通信機器メーカー、エリクソンに自らを売り込み、希望の職場への配属を勝ち取り順調に昇進した。職場では長時間労働より、集中して勤務時間内で仕事を終えることが美徳とされる。朝8時から子どもたちを預け、お迎えは16時に同じくシングルマザーである女性に依頼。通常より多めの家事代を支払い、料理や洗濯もお願いした。18時にオーサさんが帰宅すると、お互いの子どもを交え5人一緒に夕食を楽しんだそう。週末は子どもを両親や親戚に預け、仕事には一切タッチせずに気分転換を図るのがオーサさん流。通信機器メーカーからコンサルティング会社、そして現在の自分の会社を起ち上げチャレンジし続けている。子どもたちは独立し、現在はパートナーと2人で暮らしている。

●KOREA
長鄭 智銀(チョン・ジウン)さん

株式会社BOOK21 人文企画チーム チーム長
仕事内容:出版プロデュース
家族構成:夫、子ども2人

[1週間のスケジュール]
●月曜日
8:00~20:00
 仕事(早朝管理職会議)
11:00~15:00 掃除家政婦来訪
早朝と16:00~20:30 義母が自宅で子育て支援
●火曜日
9:00~20:00
 仕事
16:00~20:30 実母が自宅で子育て支援
●水曜日
8:00~19:00
 仕事(早朝管理職会議)
早朝と16:00~19:30 義母が自宅で子育て支援
●木曜日
9:00~21:00
 仕事
11:00~15:00 掃除家政婦来訪
16:00~21:30 実母が自宅で子育て支援
●金曜日
9:00~19:00
 仕事
16:00~19:30 義母が自宅で子育て支援
●土・日曜日(休日) 一家で1週間分の食料買い出し。料理、洗濯、掃除などを夫婦で分担

▼実母&義母のサポートと、掃除サービスを上手に活用
大手出版社でチーム長を務めるチョン・ジウンさん。彼女の仕事は、書籍の企画や編集、著者との打ち合わせ、部下の育成など、多岐にわたる。家庭では小学校1年生と3歳の息子を持つ2児の母。「早朝会議や、残業で遅くなったりするので、平日の3日を義母に、2日を実母に来てもらい、子どもたちの食事の世話などを依頼」。チョンさんに限らず、韓国ではこうして親に手助けしてもらう共働き夫婦が多い。次男出産後、職場復帰を前に、行き来してもらいやすいようにと、夫の実家から徒歩5分の距離に引っ越した。「子どもが乳児だった頃は、1回使いきりタイプの哺乳瓶や、離乳食の宅配サービスを利用して、負担を軽減しました」。現在は、週2回、掃除専門の家政婦を雇っている。「親のサポート、各種サービス、そして夫との家事分担、職場の理解があってこそ、仕事と家事育児の両立ができていると感じています」