タクシーはスマホで呼ぶのがもはや常識!

物流はアマゾンに代表されるように完全に「お届けする」時代になったが、人流(人の流れ)も「お迎えに行く」時代がそこまで来ている。

たとえば、レストランに予約を入れると、指定の場所に迎えの車が来るようになったり、海外旅行では空港出口で名前を書いた紙を持った人が大勢待ち構えているが、いずれウェアラブルデバイスが誘導してくれるようになるだろう。今でもスマホで、フライト変更から、ホテルのチェックインの申し込みまで瞬時にやり取りができ、地図情報もほぼ完璧だ。

イラスト=Yooco Tanimoto

しかし、旅行先の現地での交通機関は外国人にはまだまだ不便だ。金額未定のタクシー運賃は、両替の必要もあり面倒である。

スマートフォンで手軽にハイヤーやタクシーを呼べる配車サービスアプリ「Uber(ウーバー)」が日本にも上陸しているが、日本に来た外国人に限らず、こうした配車アプリが、ニューヨーク、ロンドンでも大歓迎されている。タクシー台数が規制され、特に郊外部の利用者は不便を感じていたからだ。ニューヨーク市長はGPSによる調査までして、2万台を増加させた。ロンドンでは個人タクシーのブラックキャブしか流し営業ができないが、配車アプリの登場で、車庫待ちのミニキャブ(自家用車)が普及した。

また、外国人にとってはスマホで事前決済できるところも便利だ。都市の魅力を訪問客数で競う時代だから、市長は移動客の足の確保にも敏感になっている。

配車アプリは、目的地を入力するとすぐに経路と所要時間が表示される。高精度GPSが装備され、Wi-Fiにより、地下・高層ビル等でも使えるから、世界中の大都市が「どこからでも車を呼び出せる環境」になってきた。その武器を活用するUber等が話題になるのは必然である。

当然在来型サービスとの摩擦が発生する。自家用車を活用した場合は営業許可のない「白タク」行為だとして大騒動になる。利用者は便利な配車サービスを支持する。自治体でタクシー政策を行う主要先進国では、市長や議会は政治的に様子を見てしまうから、既存のタクシー会社が倒産するところもあれば、厳しく白タク行為が取り締まられるところもある。

配車アプリにより交通サービスの形態が大きく変動する背景には、運送機能の分化がある。従来、運送人は自ら施設管理、集荷・集客、従業員管理をしなければならなかった。今では、飛行機はリースで調達し、乗員は派遣会社に依頼し、顧客もインターネットで集客できる。この運送機能の分化現象の残された分野が、流し営業のタクシーなのだ。

日本と海外の大都市タクシーの大きな違いは「流し営業」と「車庫待ち営業」の在り方である。ロンドンでは、「車庫待ち」は公共交通機関とは認められず、自家用車の扱い。この車庫待ち営業は事前に顧客情報が入手でき、サービス内容も事前に確定できることから、スマホ配車の普及が進展しやすい。ミニキャブが普及する理由もそこにある。

日本は事情が違う。「流し営業」と「車庫待ち営業」の区分が法律上はなく、東京のタクシーは数が多すぎると問題にされるくらいであるから、流しで十分に対応でき、スマホで配車を頼むのが面倒なくらいだ。配車アプリが普及しない。しかし、配車アプリの普及した海外からの利用者にとって、自国でダウンロードした使い慣れたアプリによる配車サービスは、キャッシュレス化や言葉の障害を乗り越える利点があり、東京オリンピック後のビザ緩和時代にはそのニーズも高まるだろう。世界最大の人流大国・中国では、スマホ配車が当たり前であるから、東京でもスマホ配車ができない会社は生き残れないかもしれない。

では、なぜ海外投資家はこの配車アプリに巨額の投資をするのだろう。それはお迎えに行く時代を見越しているからだ。人流のビッグデータを握るものは、正確な予測のもと、先回りしてお迎えに行ける。それどころか、料理の注文まで先に把握してしまっているかもしれない。