自分の病気、婚活、妊活から親の介護……。人生の岐路に立ったときに、どの道を選び、どの道を断つべきか。答えは一つではないけれど、決断のためのヒントがここにあります。(Q1、Q2回答者:産婦人科医・宋 美玄さん、Q3、Q4、Q5回答者:慶應義塾大学大学院 教授・前野隆司さん)

Q1. セックスレスで2人目ができない! 再開するには?

A 年に数回でも!

産婦人科医、医学博士、性科学者・宋 美玄さん「愛があるからこそ、ある程度のことには目をつむります」

一般的には、初産年齢が上がると卵子が老化するリスクばかりいわれていますが、同時にセクシャルアクティビティも激減するんです。第1子の時点で「子どもは欲しいけれどセックスはあまりしないんです」という夫婦が、第2子になると完全レスという場合もあります。第2子を考えているならば、年に数回でいいのでセックスする関係でいることです。なぜならセックスレスは予防できますが、完全レスの状態から復活させることはすごく難しいから。

では、どうしたら男女の関係でいられるか。完璧妻でいる必要はないんです(笑)。定期的に夫婦ふたりの時間をつくること。子どもが寝たあとに、夫婦の時間を持つだけでもいい。パパママではない時間をつくることが重要です。子どもを預けられるのであれば、普段行かないようなレストランで食事しながら、たわいもない会話を楽しむ。具体的なきっかけづくりとしてのお勧めは旅行です。環境が変わることでスイッチが入りやすくなりますし、ツインルームならば、子どもの寝ていないほうのベッドが空いていますからね!

Q2. 夫の家事力を磨くか、代行サービスにお金を払うか……どっち?

A 期待しないことも愛! お金で解決できるならそれで良し

日本では家事も育児も当然のように女性がすべきものというあしき習慣がいまだに残っていますが、そこを憂いてもはじまらない。うちの夫の場合、料理はできますが家事はほとんどしません。私も、仕事で忙しい夫に時間ができれば、家事よりも子どもと関わる時間を優先してほしいと思っています。今の日本で夫婦の平等を求めることはとても難しいですよね。

私の周りは医者同士の夫婦が多いのですが、かなりの割合で妻が家事・育児をしています。稼ぎは同じくらいなのに、なぜ女性がすべてしなければならないの? と思いますが、そこは諦めですね(笑)。何もしない夫に対してキーッとなる自分もイヤですし、夫の意識改革に尽力するよりも自分が我慢したほうが楽なんじゃないかなと。男性ってストレスに弱いじゃないですか。重圧をかけたり怒ったりすると余計ダメ。こちらが大人になっておだてて……。すると手伝いくらいはしてくれる。だから期待しないでおだてるんです。期待しないことも愛! お互いストレスを感じないよう、お金で解決できるならば良しとしましょう。

▼家事代行サービス比較※編集部調べ

●ベアーズ 2350円~/時間
家事の技術のみならずマナーも教育された人材が登録
●CaSy 2190円~/時間
最短で希望日時の3時間前まで予約可能
●カジタク 4720円/1.5時間
ホームアテンダント2級の資格取得の義務づけ

Q3. 夫が「専業主夫になりたい」と言いだしたら?

A 全面否定はNG! ふたりの落としどころを見極めて

まずは話し合うことが大切ですね。日本で育ってきた以上、まだまだ男女の差を感じる社会構造ですが、実は今、過渡期の状態にあると思います。男女差別の時代から平等の時代への過渡期。すなわち、この時代だからこその悩みなのです。家計的なバランスが取れているなら、まずは受け入れてみてはいかがでしょう。そしてふたりのちょうどいい落としどころを探ることです。

Q4. 今からできる親孝行は何がある?

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント 研究科委員長・教授 前野隆司さん

A 1日1分でも声を聞かせよう

幸福の第1因子は自己実現と成長、第2因子がつながりと感謝なんですね。親もそれを満たしていれば幸せではないでしょうか。べったりでなくていいんです。離れているのであれば、1日1分の電話でもいい。メールやLINE、絵はがきや手紙なんかも良いですね。さらに親としてうれしいのは、子どもが自己実現している姿を知ることです。仕事や個人の活動を通して世の中に貢献していることがうまく伝わることが、一番の親孝行ではないでしょうか。わが家は2世帯住宅ですが、仕事で忙しい日々が続くと1、2週間会わないことはざらでした。あるとき、父が大病を患い気付きました。たとえわずかな時間でも直接会うことが大切だと。そうすることで双方の幸せ度は上がりましたし、私も安心感を得られました。大切なのは時間ではなく、日頃から声を聞かせてあげることですね。

Q5. 介護と仕事の両立、職場にはどう伝える?

A できるだけのことはしたうえで、明確に伝えるべし

カウンセリングテクニックに“アサーション”というものがあります。人って権利を強く主張するか、我慢するかのどちらかに陥りがちです。そうではなく、その間を取ろうというのが“アサーション”です。つまり「私が介護のため早く帰ることで、これくらい仕事が遅れます。そこは精いっぱいフォローします」と、自分ができる限りのことをしたうえで、相手に明確に伝えることが大切です。

すべては愛! 「職場の皆さんを愛しています。親も愛しています」と自信を持って伝えましょう。それでも理解してもらえないなら、幸福の第3因子である楽観的視点に立ち、「嫌われてもいい、仕事を辞めてもなんとかなる」くらいの気持ちでいることですね。仕事はどこにでもあるけれど、親は唯一無二の存在。辞める覚悟があるとものすごく強い。人目を気にせず正論が言え毎日ハッピーです。

宋 美玄
産婦人科医、医学博士、性科学者。大阪大学医学部卒業後、同大学産婦人科に入局。周産期医療を中心に産婦人科医療に携わる。2007年、川崎医科大学講師に就任。ロンドンに留学し胎児超音波を学ぶ。12年に第1子、15年に第2子を出産。
 
前野隆司
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント 研究科委員長・教授。東京工業大学卒業、同大学修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校訪問研究員、ハーバード大学訪問教授等を経て現職に。専門は人間システムデザイン、地域活性化、教育工学、幸福学など。