米大統領選で快進撃を続けるトランプ氏。その理由とは?

「誰と一緒にビールを飲みたい?」

アメリカ大統領選挙が近づくと、必ず行われる世論調査の質問である。この質問で1位になった候補者が、往々にして大統領に選ばれている。

Yooco Tanimoto=イラスト

じつは私の頭に初めに浮かんだのはドナルド・トランプ。たとえば質問を変えて、「誰が上司だったらいいか?」とした場合も、頭に浮かんだのはトランプだ。一番仕事を任せてくれそうだし、男女差別なく評価してくれそうだ。しかもアメリカン・ドリームの体現者である。

日本には強硬姿勢を見せ、非常に不人気なトランプだが、アメリカの白人、反体制派層からは熱烈に支持されている。

彼の妄言は有名だが、女性蔑視発言でも話題になった。トランプは、ある討論会で女性司会者のメーギン・ケリーについて「彼女の目から血が出ていた。どこであれ、血が出ていた」と発言。「生理だからイライラしている」という意味合いで受け取られ、非難された。だが、こんな発言をしても実際はそれほど大事になることはなかった。

なぜ彼は許されるのか。実は彼は、非常に女性を見る目があり、しかも育て上手。それをアメリカの女性は知っている。

トランプといえば3回の結婚歴で有名だが、妻たちは押しなべて才女である。

最初の妻・イヴァナは、東ヨーロッパ時代のチェコスロバキアからスキーヤーとしてオリンピックに参加。その後、西側に亡命しモデルになり、トランプと結婚。彼はイヴァナのビジネスの才能を開花させた。彼女は、当時のニューヨークのランドマークだったプラザホテルを任され、離婚時は莫大な慰謝料を受け取ったうえで、個人のブランドで起業した。

2番目の妻はテレビでホストショーを務めた才媛。そして現在の若妻は、スロベニア大学を出たモデルである。見た目が良いだけではなく、彼女の有能ぶりにトランプがひかれたことは有名だ。

また、トランプは結婚の回数は多いが、愛人を囲っているという報道もなく、それぞれにそれなりの誠意を見せている。

また、3人との間にそれぞれ子どもをもうけているが、跡取りはイヴァナの娘・イヴァンカと宣言している。イヴァンカには兄と弟がいるが、優秀なら息子である必要はないと考えているようだ。

私も一度、ニューヨークの某レストランでトランプと握手したことがある。その時の印象は、エルビス・プレスリーとテディベアだった。

松下幸之助曰く、成功に必要なのは「運と愛嬌」である。トランプは事業では何度も失敗しているが、そのたびに復活もしている。彼の成功を信じて、融資する人が常に存在してきたのだ。運と愛嬌の塊のような人なのだと対面して感じた。これは彼が支持されるゆえんだろう。

私が考えるに、トランプが当選しようとしまいと、日本が期待する世界の警察としてのアメリカではなくなる。ヒラリー・クリントンが当選したとしても、それが少し先延ばしされるだけのことだ。

正反対のように見えるが、表のように、今回のもう一人の台風の目である民主党のバーニー・サンダースとトランプは非常によく似ている。トランプの発言は、一定の割合のアメリカ人が本音とするところであり、日本はそのことを肝に銘じて対策を考えておく必要がある。

横江公美
政治アナリスト。松下政経塾15期生。ヘリテージ財団で上級研究員を務める。VOTEジャパン株式会社社長を経て、現在「PACIFIC21」代表。