婚活の場でよく耳にする「相手は普通の人でいい」という台詞。実は“普通の男性”は、超高倍率の人気者。その理由は? 必勝法とは?

婚活女性が希望する“普通の男性”とは?

結婚相談所に入会して1年以内に結婚が決まる人は、業界平均で1割と言われている。“普通”の考え方をしていては、結婚はできない。

今日、私が婚活カウンセリングをしたのは、カズミさん32歳。都内企業で派遣社員として勤務している。茶色がかったセミロングの髪が魅力的なハイヒールの似合う美人だ。

「私、それほど条件にこだわりません」こんな美意識の高そうな女性が条件にこだわらないはずがないと直感する。「では、どんな男性でもいいんですか?」

「誰でもいいってわけじゃないですけど、普通の人ならいいです」「“普通”ってどういう条件のことを言っていますか」「えっと、条件は……」

“普通の男性”という条件が、具体的にどんな男性を指すのかを曖昧にしてはいけない。人によっては、年収800万円以上のサラリーマンだったり、人並み以上のルックスだったりする。しかし、そういう条件を“普通”という人は少ない。話を聞いていくと、だいたい下記のような条件に落ち着く。彼女も例外ではなかった。

■首都圏在住
■年収400万円以上
■年齢は、5歳年上まで
■正社員限定(経営者不可)
■婚歴なし

確かにこの条件に当てはまる男性は、たくさんいそうだ。しかし、問題がある。それは、女性の8割以上が“普通の男性”を希望することだ。“普通の男性”に対する需要が供給を遥かに上回ってしまうのだ。

こうして“普通の男性”市場は超激戦区となる。資本主義の原則通り、“普通の男性”の価値が婚活界で高騰するのだ。そのため“普通の男性”は売り手市場で、女性に対して強気に希望条件を出せることとなる。

一方、女性は「私は“普通”だから、普通の男性がちょうどいい」とつい思ってしまう。悲しいことに、婚活界では、普通の男女は対等の立場にはならない。

私の感覚でいうと、普通の男性と、普通の男性を希望する女性の比率は1:5以上の開きがある。男性は、5人の女性から1人を選べるので、年齢が若いか、かわいい女性を優先的に選びがちだ。特に、アラフォーの女性は同世代の普通の男性を求めるがゆえに、どんどん出会いという名の争いに敗れていってしまう。

ごく普通の女性が、ごく普通の男性を望んでも結ばれない!? その婚活市場ならではのメカニズムとは――。

カズミさんは、アラサーなのでまだいい。アラフォーの普通の男性を狙えば、たとえ競争率が5倍でもその勝負を勝ち抜ける可能性が高いからだ。

「カズミさん、“普通の男性”って一番人気がありますので、お相手に望む年齢は40歳まで引き上げておいたほうがいいです。できる限り、37歳、38歳あたりまでを目安にお相手を探しますので、希望する年齢の上限を考え直してみませんか?」「分かりました。大西さんを信用して40歳まで上げます」

こうして彼女は半年後に、38歳、年収500万円の公務員の男性と結婚を決めた。

では、アラフォー女性の場合は、どうしたらいいのか。理屈で言うと、アラサーと同じ作戦をとればよい。アラフィフまで上限を引き上げればよいのだ。しかし、現実はそれではうまくいかない。なぜか。39歳で正社員のカオルさんの例を見てみよう。

なぜアラフィフ男性が避けられるのか

アラフォーから婚活を始める女性の多くが、「子供が欲しい」という動機で結婚相談所の門をたたく。だから、子育てをしやすいパートナーを求める。アラフィフ男性は選びたくない。子供が中学校に行かないうちに定年退職を迎えることとなり、後の暮らし向きが不安だからだ。

結局、5歳年上までという条件は譲れなくなる。そうすると、アラサー女性がターゲットとする男性と被ってしまう。もちろん、年齢が重視されがちな婚活界では圧倒的に不利な戦いを強いられる。

この説明を聞いたカオルさんから絶望の声が漏れた。「大西さん、それじゃあ私は希望の人と結婚できないのでしょうか……」「そうですね」「どうしたらいいのですか?」「そもそも、なぜそのような条件を出したのでしょうか。目的を思い出してみましょう」「え、目的?」

目的を考えて、条件を再構成する

「カオルさんは、子育てを考えているのですよね」「はい」「では、安心して子育てをできるならば、“普通の男性”という条件を満たす必要はありませんよね?」「まあ、そういうことになりますね」

「“普通の男性”という条件の中で、まず削れそうなのは、“首都圏在住”ですね。今のお仕事をやめなければいけなくなるかもしれませんが、その分、地方在住で年収が高めの男性という選択肢もありますよ」「地方ですか……。今の仕事をやめることはちょっと考えられません」「では、“首都圏在住”のままでいきましょう」こうやって、目的に応じて必要な条件、不要な条件を洗い出し、修正していくことが大切なのだ。

「カオルさんが今のお勤め先で働き続けるならば、お相手の年収は350万円でも大丈夫じゃないですか? お相手に望む年収を50万円減らすだけで、アラサー女性との戦いをかなり避けられます。月収に換算すると、年収400万円の人との差は4万円くらいです。それならどうですか? 年下の男性もターゲットにしやすくなるというメリットもあります」「それはいいですね。男性の働ける年数も長くなりますしね」

このように、自分にとっての譲れない望みである「子育てが安心してできる」ための条件を再構成する。“普通の男性の条件を全て満たす人を選ぼうとしたら大変な戦いを強いられる。みんなと同じことをするから、結婚相談所に入会しても9割が結婚できないという事態に陥ってしまうのだ。

結婚とは結局、その人を愛することができるかどうかで決まる。だから、その人の人柄とは関係ない、また自分にとって重要な意味を成さないところで無駄な戦いをする必要はない。

相手に望む条件を挙げることは、決して悪いことではない。私の経験から言うと、条件を挙げられる人の方が、結婚が決まりやすい。自分にとって譲れないことは何なのかをしっかりと見極め、絞り込むことが、幸せへの第一歩と言える。読者の皆さんが、お互いの希望をかなえ合えるようなパートナーと巡り会えることを、心より祈っている。

※今回で連載「仕事は得意だが、婚活がうまくいかないあなたに」は最終回となります。ありがとうございました。

大西明美
婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。
著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。