年下男性との結婚を希望して結婚相談所の門をくぐるアラフォー女性のうち、成功するのは約1割。その人達の多くに共通する趣味とは?
「若い男と結婚する!」、賭けに勝つ女性とは?
結婚相談所にやってくるアラフォー女性の9割以上が年下男性を希望している。
私の経営する結婚相談所にやってきた、都内で会社員をしているミホコさん(42歳)もその1人である。結婚相手に求める年齢は、20歳から45歳まで。「おお、幅広い年齢層!」と一瞬思ってしまいそうになるが、よく考えると年上は自分の年齢プラスは3歳以内。年下は成人式を迎えたばかりの20歳までが含まれている。
「あのー、お相手の年齢ですが、せめて47歳くらいまでを範囲として考えてもらえないでしょうか」私はいつものように年齢の上限を上げる交渉を始めた。「私、交際相手として考えると、年上の男性苦手なんですよね。オジサンって感じがすると無理なんです」
「あなたもオバサンじゃないか!」とは絶対に言わない。昨今、40代の独身女性は若々しく、人によっては20代にすら見える。ミホコさんも見た目年齢は35歳前後だ。一方、40代男性の場合は「僕、気持ちは若い方です」とはいうものの、見た目はだいたい歳相応。だから、40代同年齢の男女が一緒に歩いたら、歳の差が5歳くらい離れているように見えるのも確かだ。
「男性はたいてい、お相手として年下の女性を希望されますから、このままいくとミホコさんにご紹介できるのは、42歳から45歳の男性という感じになりますが、大丈夫ですか? このように紹介できる相手が限られるというリスクがあることをご承知くだされば、ご希望の年齢でお相手を探します」「はい、オジサンを紹介されるぐらいなら1年でも2年でも待ちます」
彼女たちはこちらが思っている以上に、「女性の年齢」という厳しい現実を理解している。理解した上で、自分の人生を賭けようとしている。「私は若い男と結婚する!」と。
このうち、9割は結婚が決まらない、もしくは、少し年上の男性と結婚していく。そう言ってしまうと、年下の男性と結婚したい女性はがっかりするかと思う。しかし、1割の女性はこの賭けに勝つのだ。
では、いったいどんな女性が、勝者となり得るのだろうか。私は、彼女たちの多くに共通する趣味があることに気付いた。
「山ガール」が引く手あまたな理由
年下男性の心をつかむ女性の多くに共通する趣味、それは「登山」である。ミホコさんも、山ガールだった。
彼女はお見合いパーティーにも積極的に参加していた。「どうせ、年下にしか興味がない態度を取るんだろうな」と思って様子を見ていたが、彼女は予想外のふるまいをしていた。
苦手と話していた年上の男性が相手であろうと、分け隔てなく笑顔で話をしているのだ。彼女と話す男性は、トークタイムが終わる頃には表情が緩み、彼女に好意を持っていることが伝わってきた。その結果、年上だけでなく、年下の男性からもたくさん交際の申し込みを受けることとなった。
ミホコさんを筆頭に、なぜ山ガールたちは男性の心をつかむことができるのか? それは包容力があり、気取りがないからだ。
登山とは危険が伴う趣味であり、チームワークが重視される。チームメンバーと助け合いながら、苦しいプロセスを越えて山頂に立ち、全員そろって下山する――そんな経験が、彼女たちの人間性を高めている。限られた材料で食事を作ったり、眠りづらい状況下で眠ったりと、生活力、生命力、応用力にも富む。自力で登頂、下山する必要があるため、依存心も低い。
また、チーム外の人と声を掛け合うことも多く、初対面の人とのコミュニケーション力も鍛えられる。山の愛好家には年配の人も多い。ミホコさんは「年上は苦手」と言ったが、それは交際相手としてであったようだ。
さらに山ガールはなかなかの美人ぞろいだ。山では水を汚してはならないため、化粧した顔を洗うのは御法度である。そのため、登山中は日焼け止めを塗るだけ、という人もいる。故に、素顔をさらせるレベルの薄化粧なナチュラル美人が多い。婚活においては、化粧映えする派手な美人よりもこういった女性の方がモテる。恐るべし、山ガール。
しかし、ミホコさんは、実際に交際するというところまでは至らなかった。お見合いで年下男性からお付き合いしたいと言われても、首を縦に振らなかった。
「年下と結婚したいんじゃないんですか? こんなにお申し込みを断るなら、年上の人も対象に入れないとお話がなくなってしまいます」と、私は切り出した。すると、彼女は胸の内を話してくれた。
人を思いやれるがゆえに、思いやりがほしくなるという悩み
「私、どうしても婚活相手をいつもいる仲間と比べてしまうんです。そうすると踏み切れなくなってしまうんです」「えっと……いつもいる仲間とはどなたのことですか? それと、どういうところが見劣りしてしまうのですか?」
彼女は私の目を見据えて言った。「登山仲間です。山登りは、自分のことだけ考えていると、誰かが命を落とす危険があります。ですので、体調の悪い人や初心者が無事についてこられているか、天候など安全面に問題はないかなど、いろいろと気を配ります。特に、男性は重たいものを積極的に持ってくれたり、引っ張り上げてくれたりと、すごくサポートしてくれるんです。まあ、そういう人たちはみんな結婚しているんですけどねぇ……」
なるほど、山ガールが魅力的であるのと同様に、山ボーイも恐ろしく細やかな気遣いができる素敵な男性たちなのだ。だから、婚活男性のあらが見えてしまい、交際に踏み切れないのか。
「ミホコさん、婚活は平地でやるので、気遣いをしたくても山のような機会がありません。山ボーイと比べたら酷です」「そうですよね……」「だからといって、気遣いができない男性はダメですよね。それならば、ミホコさんの示す気遣いを理解して感謝してくれる相手を選ぶというのはどうでしょうか。そういう相手は、ミホコさんが大事にしている思いやりや気遣いを大切にしてくれます。大切にしているものが一致することで、いい関係が作れます」
彼女は、私の提案を受け入れてくれた。そして、7歳年下の男性との結婚を決めた。彼はいつも機嫌の良い笑顔で接するミホコさんの魅力に気づき、「こんなに自分を大切にして、愛してくれる女性はもういない」とメロメロである。
人は相手に、自分が示すのと同じレベルの思いやりや気遣いを求めがちなものだ。そうではなく、思いやりや気遣いを察し感謝してくれる男性を選ぶという発想に立てば、結婚も現実のものとなりやすいのだ。
婚活に限らず、相手に求めるものが多くなると、自分の基準に合わないからといって切り捨ててしまったり、逆に重く感じられたり敬遠されたりしてしまう。見返りを期待しないということが、すべての人間関係を良くするポイントかもしれない。
婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。