仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、110冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「仕事と愛情を天秤にかける婚約者」に関するご相談です。

【今回のご相談】
20代後半の会社員です。学生時代から長く付き合っている男性と結婚することになりました。彼はいわゆる“9時5時”の定時で終わる仕事をしており、私は“毎日終電・休日出勤”の激務です。結婚式や新生活の準備を進めるうちに、彼が「そんなに忙しくて家のこととかできるの? 大丈夫なの?」と言い出しました。先日、仕事が理由で式場の下見をキャンセルせざるを得ないことがあったのですが、その時は「僕と仕事、どっちが大切なの!?」とキレられました。全く仕事をしたことがない人ならともかく、同じように働いている男性からそのような言葉を浴びせられたことがショックです。私は結婚後も、今と同じように働きたいと考えています。結婚自体を考え直したほうがいいのでしょうか。
「私と仕事、どっちが大事なの!?」は、男女間の喧嘩の定番フレーズでしたが、「僕と仕事、どっちが大事!?」も勢力を伸ばしているようです。(イラスト=伊野孝行)

彼もあなたも変わらねばなりません

【河崎環さんの回答】

「あなたこそ、そんなに世間知らずで私との結婚生活できるの? 大丈夫なの?」と言い返してやりたいですな! 9時5時仕事だか何だか知りませんが、学生時代から長々付き合ってきたくせにあなたの仕事の実情なんか全く見えてなかった大バカ野郎ですよ。今までどこ見てたんだ、その節穴は目か!(あっ、逆だった。)

……はっ、すみません、つい逆上してしまいました。そういう男性は、頭で理解していることと、目の前の現実とをすり合わせるのがちょっと不器用なんです。実際に自分の身に降りかかり、暮らしに関わってきて初めて「奥さんがフルタイムで、しかも激務ってこういうことなんだ」と知るわけですが、そこで必ず一度感情的にゴネたりキレたりしてみせるのが面倒くさいですなー。まぁ、坊やなんですよ……世間知らずなんです。きっと彼のママンもおうちのことをしっかりやるタイプの女性なんですよね。

彼がショックを受けたこと自体があなたの側のショックだったように、結婚とはお互いの育ってきた家庭の文化や暮らしの流儀を持ち寄ってすり合わせ、新しく“二人の”流儀や家庭文化を作り出していくもの。カルチャーショックはつきものです。違って当たり前なのですから、違うこと自体は問題ではありません。ただ、お互いに「違う」を前提に受け入れたり、要求や意見をきちんと伝え合たり調整したりできる関係であるかどうか、それこそが大切な部分です。変にどちらかが無理をして柔軟なふりをし、それに乗じた方が相手の流儀を軽視して踏みにじり、自分流を押し付けるようなことになっては、まぁ不幸です。私の周囲はみな結婚10年や20年選手ばかりですが、それ、ホントーに後を引きますよ。

彼も変わらねばなりません。同様に、あなたも変わらねばなりません。“9時5時”の定時で帰れる彼が、“毎日終電・休日出勤”の激務のあなたと結婚すると、日々どんなタイムテーブルになるのか。誰が何をするのか。何かを変えるのか(例えばあなたの“結婚後も、今と同じように働きたい”意思であるとか)。それで二人は幸せなのか。結婚前に衝突があって、本当によかったですね。ここでしっかりとぶつかって話し合い、現実的にライフプランを確認していくのがいいと思います。結婚後の人生の方が、長いですから。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。

お互いの「構ってほしい」気持ちと向き合って

【本田健さんの回答】

結婚自体を見直す必要はないかもしれませんが、結婚生活に対して、パートナーの方とじっくり話し合う必要はあるでしょう。

「仕事と自分とどっちが大事なの?」という質問は、「僕のことをどうして大事にしてくれないの?」と翻訳して聞いてみてください。実際に、この質問は子供が生まれた後、よく旦那さんから聞かれることがあります。「僕と子供と、どっちが大事なの?」と聞かれて、相手の未熟さに反吐(へど)が出たという女性はたくさんいます。

恋愛と違って、結婚生活では、生々しい感情が荒れ狂います。恋愛時代なら、「どうして、もっと自分の方を向いてくれないの?」というセリフもかわいく聞こえます。そして、「ごめんね。気づかなくて」とすぐに相手に謝れたかもしれません。でも、リアルな結婚生活では、子供時代からためこんできた感情が一気に噴出するようになっているのです。その多くが、「自分のことを構ってもらっていない」という不満に根ざすものです。

精神的に健康で満たされた子供時代を送った人は、こういった感情を持つことが少ないのですが、私たちのほとんどはこの不満を抱えて生活しているのです。日常の仕事や友人との関係で、この不満を爆発させる人はあまりいないと思います。ですが、結婚相手には、100%ぶつけてもいいと、何故か考えてしまうのです。ちょっと不思議ではありますが、それだけ、相手に感情的に近いということなのでしょう。

そういう感情に向き合って、お互いを受け止めて、癒すのが理想ですが、なかなかそうはいかないものです。幸せな結婚生活を続けていくためには、お互いに感情と向き合う習慣が大切です。それができそうな相手かどうかの見極めは、結婚する前にしておいた方がいいでしょう。

男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2200万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は110冊以上、累計発行部数は700万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/