これまで延べ2500組以上のカップルの結婚カウンセリングをしてきた石井希尚さんは、「8割以上の人が結婚というものを誤解している」と断言。恋愛と結婚の違いが区別できていないために、多くの人が不幸な結婚生活を送る羽目になっているという。夫の心変わりを恐れている人には、「奇跡の時間」に注目するようアドバイス。幸福な結婚につながる夫選びのポイントを示してくれた。

男性と女性の本能的な違い

恋愛というのは感情でするもの。ドキドキしたり、時にはドロドロした気持ちを味わうこともあるでしょう。一時的なものなので、長続きしなくてもいいし、破局することもあるのが恋愛です。しかし結婚は、この先何十年にもわたる長い人生をゆだねる「契約」です。感情の赴くままに楽しむ恋愛とは大きく違う。まずは、この恋愛と結婚の違いを自分の中ではっきりと区別することが、最初のステップです。

結婚カウンセラー 石井希尚さん

次に知っておくべきことは、男性と女性の本能的な違いです。男性には獲得欲求や征服願望が、女性には共有願望というものがあります。これは生き物としての生理的な欲求で、誰にでも多かれ少なかれあるもの。理屈ではなく本能です。

女性は、相手の気持ちを察して共感できる生き物です。その分、自分の気持ちも相手にわかってもらいたいという欲求が強い。一方で、男性は自分がすべてを掌握してコントロールできることに喜びを感じます。セックスは、征服欲を満たすという意味では最たるものです。

このような男女の本能的な違いを考えると、結婚して夫が変わってしまうというのは、ある意味自然なことだと気づくでしょう。なぜなら、結婚前は女性を手に入れることが目標だったのが、結婚することで征服すべき対象が仕事でのステップアップや家庭生活を維持することに変わるから。まずは、この男性特有の性質を理解しましょう。

しかし、夫が大切な部分で変わらないでいてくれることは、結婚生活においては大事なポイントです。そのような幸せな結婚を続けるには、結婚前にいかに準備をしっかりしていたかが大きく影響します。

“奇跡の時間”を夫婦で共有し続けよう

結婚後もいい関係を維持する鍵は、出会いから結婚前までの時間の積み重ね方にあります。そもそも、見知らぬ男女が出会い、結婚するということは、「奇跡」という以外にありません。

その奇跡には3つの要素があります。1つ目が、ドキドキ感という魔法。2つ目が、相手をとにかく素晴らしい人として評価すること。3つ目が、2人の未来は絶対に幸せになる、と何の根拠もなく信じられること。

結婚後、うまくやっていけるカップルは、この結婚前の奇跡の時間について、普段から話したりして、風化させない努力をしている。この思い出を語り合うことは、幸せな時間を持続させるためのガソリンの役割を果たします。

イラスト=深川 優

逆に考えると、いかに結婚前にこの奇跡の時間を素晴らしいものにできるかが重要になってきます。生涯大切にできるような思い出を一緒につくることができれば、その相手は未来の夫としてふさわしいといえるでしょう。

ただし、奇跡の時間をつくる努力、風化させない努力は、2人同時にやらないと意味がない。そういう意味でも、結婚に対するお互いの考え方が同じでないと、難しいですね。結局は、同じスタンスで結婚前の準備ができる相手かどうかが、大切になってきます。

恋愛と結婚が違うということは、当然、恋愛相手と結婚すべき相手は違うということです。奇跡の時間を共有し、風化させない努力のできる相手が結婚するのにふさわしいのだとしたら、反対に結婚に向かないのはどんなタイプでしょうか?

結婚に向かない男性とは?

一番わかりやすいのは不倫です。あなたに対してどんなに誠実に見えても、どんな美点があろうとも、その男性は「パートナーを裏切ることができる人物」です。結婚という契約をするには、あまりにもリスキーな相手といえます。

経済力がない男性も、結婚相手には向きません。「私が支えればいい」と、母親のような気持ちになる女性もいます。初めはいいのですが、その状態が続くと、心が疲れてしまいます。なぜなら女性は「安全欲求の強い生き物」だからです。「自分が稼がないとダメ」という追い詰められた状況では、本能的な安全欲求が満たされず、幸福感が得られないのです。

金銭感覚や、家族との距離、仕事の仕方を独身時代のまま変えたくないという男性も、結婚には向かないですね。

イラスト=深川 優

お互いバツイチのカップルは冷静で、結婚への価値観を共有しやすいため、相性がいいのですが、難しいのは女性が初婚で男性がバツイチの場合。憧れが強い女性に比べて、男性は冷めている分、どうしても温度差が生じやすい。

キャリア女性にとって、自分を理解してくれるパートナーとの結婚は、重要なテーマのはず。夫となる相手に望むことをリストアップする前に、まずは自分自身をプロファイリングすることをおすすめします。特に自分にとっての仕事の位置づけについてはしっかり考えておきましょう。それによって、結婚生活と仕事のバランスも、結婚相手に望むことも変わるはずです。

誤解してほしくないのは、出会いそのものがドラマチックである必要はないということ。結婚相談所や婚活パーティーで出会ってもいいんです。そこから、奇跡の時間を積み重ねていける相手なら問題ありません。ただし、相手を選ぶときに、自分が絶対譲れない条件を5つくらい持っておいたほうがいいでしょう。

もし結婚したいと思うような男性と出会えたときは、彼の友達や周りの人にできるだけたくさん会うことです。周囲の人とどう付き合っているのかを知る中で、彼という人物が客観的に浮き上がってくれば、自分にふさわしい相手かどうかも判断しやすくなります。

最も避けてほしいのは、年齢や寂しさからくる不安で、焦って結婚を決めることです。そういう気持ちで選んだ相手とは、幸せが続かないことが多い。一生を共にできる、自分にふさわしい相手を選ぶ――。そんな強い意志で未来の夫を選ぶようにしましょう。

石井希尚(いしい・まれひさ)
結婚カウンセラー、作家、牧師。東京都出身。アメリカで一般カウンセリング、プリマリタル・カウンセリング、聖書学などを学び、インターンを経て牧師となる。20万部を超える代表作『この人と結婚していいの?』(新潮文庫)をはじめ著書多数。経営するカフェ「KICK BACK CAFE」にて、結婚・恋愛問題を中心にカウンセリングを行う。久美子夫人との二人三脚で多岐にわたって精力的に活躍中。