「結婚してみたら、相手が恋人時代と比べて全く変わってしまった」離婚カウンセリングをしている岡野さんのもとには、そんな相談がしょっちゅう寄せられる。結婚前と結婚後で、別人のように変わってしまう男性も少なくないという。では、自分が結婚を考えている相手は結婚後、「変わってしまう人」なのか。変わるとしたらどんなふうに変わるのか。見極めのヒントを教えてもらった。
相手の長所を“短所”に置き換えて、冷静に判断しましょう
男性が結婚した後にどう変わるか。それを事前に判断するのはなかなか難しいことです。なぜなら、結婚前は誰しも自分をよく見せようと多かれ少なかれ猫をかぶっているから。結婚してからも、2~3年は相手に合わせて「いい顔」を続けられる人だっているのです。
つまり、結婚して夫が変わってしまったのではなくて、もともと彼が持っている性格が現れてきたということ。
恋愛時代は、相手が猫をかぶっているのに加えて、女性側も相手を実際よりよく見てしまいがちです。彼のいいところだけを見ようとするフィルターが自然とかかってしまうんですね。でも、そうすると、以前は気づかなかった夫の嫌な部分が、結婚してから目につくようになってしまう。「優しい」は「優柔不断」、「男らしい」は「強引」の裏返しです。夫選びではそこを冷静に判断することが大事ですね。
「この人は優しいけど、優柔不断なところもある。彼のそういう部分を結婚してから私は本当に受け入れられるだろうか?」と自問してみてください。彼の裏の性格なんて思いつかないという人は、反対に彼の素敵なところを思い浮かべてみればいいんです。いいところをあえてネガティブな言葉で言い換えて、彼の裏性格をあぶりだします。
完璧な人間なんてどこにもいないし、誰にでも裏性格はあります。だからこそ、夫となる人の裏性格がどんなものかを分析して、それを一生受け入れられるかを結婚前に考えておくことが大事。それは、自分の覚悟を決めることでもあります。そこで「男らしいのは素敵だけど、私の意見を聞いてくれない強引さはやっぱりイヤ」と思うなら、結婚はやめたほうがいい。
結婚前に自分の強み、弱みをしっかり自己分析する
相手の裏性格を分析することも大事ですが、結婚するにあたって、自分自身の強みをわかっていることも大切です。その強みは、1つだけあればいい、というものでもありません。最初は1つでもいいですが、結婚生活を続けていくには、その強みを生かしながらさらに足りないところを補う努力も必要。残念ながら、人はどんなに素敵な部分にも、慣れたり飽きたりしてしまう生き物です。結婚してから夫との良好な関係をキープするためにも、結婚前に自分の強み、弱みをしっかり自己分析しておくべきですね。
なかには、若さや美しさが自分の武器だという人もいるでしょう。もちろん、美しさを自覚して、それを武器に婚活をするのはありです。ただし、見た目や若さで妻を選ぶ男性は、世間体や自己満足を重視する傾向があることも知っておくべき。美しさだけでなく、あなた自身の本質を彼が本当に理解してくれているのか、そこはしっかり見極めておくべきですね。
家庭的な夫を理想に挙げる人も増えています。確かに今、世間ではイクメンがもてはやされていますが、現実的に本当のイクメンなんて10人に1人か2人くらいのもの。世間のムードに踊らされて期待を持ちすぎると、がっかりしてしまうだけ。子どもの世話を喜んで引き受けてくれる夫なんて、そうそういるものではありません。
バツイチの人は、次の結婚では絶対失敗したくないという思いがあるでしょう。離婚したことで自分への自信を失っているかもしれません。でも、だからこそ妥協や逃げの再婚をしてはダメ。離婚というダメージから立ち直った自分に誇りを持ってほしい。大事なのは、最初の結婚を決めたときよりも「成長した自分にふさわしい相手」を夫に選ぶと決めること。お金持ちと結婚して離婚したから、今度は貧乏な人でもいいと考えるのはダメ。次は、経済力があって、なおかつ優しい人を夫に選んでください。
働くスタイルによって分かれる「夫選び」の傾向
失敗しがちな夫選びは、女性の働くスタイルによっても傾向が分かれます。
一番失敗しやすいのは、フルタイムで働く正社員。自分に自信がある一方で、仕事に疲れを感じて、「そろそろ結婚でもして癒やされたい」と考えがち。とはいえ、強気な部分もあるので、相手に対して「結婚してあげる」と上から目線になることも。仕事での自己分析は得意なのに、結婚するにあたっての自分の強みや弱みを分析するのは苦手です。男女平等意識も強く、結婚後の家事や育児参加への要求も多いはず。これでは、相手も負担を感じて嫌気がさしてしまいます。結婚後に「こんなはずではなかった」というパターンに最も陥りがちです。
似たようなタイプが、フリーランスで働く女性。仕事が忙しいので、相手や自分への向き合い方が足りないし、つい自分が頑張りすぎる傾向があります。結果的に、男性側が受け身になりがち。そういう関係性は結婚後にお互いが不満をためこみやすくなります。
一方で、婚活への真剣味が違うのが派遣社員。相手の職業や経済力、性格などもしっかり分析し、自分の強みもわかっています。「絶対、幸せな結婚をする」とゴールに向かい戦略を練るので、夫選びでも成功しやすいです。
アルバイトやフリーターの女性は、相手に対して受け身になりやすい傾向があります。夫となる男性からは、言うことを聞いてくれて、気持ち的にラクな相手と受け止められます。そして彼女たち自身も、夫への要求があまり多くないので、後から「失敗した」となることが少ないでしょう。
とはいえ、どんな組み合わせのカップルでも、幸せな結婚生活を続けていくには、お互いの努力が不可欠です。そのためには、「好きな人と暮らしたい」という結婚の目的が2人とも同じであることが大事。その目的が違うと、いくら努力したところでひとり相撲になってしまうだけ。夫選びでは、自分や相手を冷静に分析し、同じ目的を持って結婚できる相手かどうかをしっかり見極めてください。
夫婦問題研究家、離婚カウンセラー。1954年、埼玉県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科(社会学MBA)修了。自らの離婚経験をもとに、夫婦問題に関するカウンセリングを行い、相談件数は累計3万件超。『「最高の離婚」のつくりかた─The Best Divorce』(自由国民社)、『貴女が離婚を決める前にしなければならない8つのこと』(ゴマブックス)など著書多数。