お見合い結婚をしたカップルの離婚率は10%程度。恋愛結婚したカップルの離婚率は35~40%。それでも“価値観の不一致”を理由に離婚に至るケースがあります。未然に防ぐ方法とは?

お見合いでも離婚する人は離婚する

オフィシャルな数値ではないが、婚活業界ではお見合い結婚をしたカップルの離婚率は、10%程度と言われている。一方、恋愛結婚したカップルの離婚率は35~40%。比べればお見合い結婚の離婚率の方が圧倒的に低いが、ゼロではない。

今日も私の経営する結婚相談所に、お見合い結婚を経ての離婚、すなわち“お見合い離婚”をして約1年となるマサオさん(34歳)がやって来た。中堅企業で働くサラリーマンで、年収は約450万円。前妻との婚姻期間は約2年。そのうち、1年半は別居だったため、結婚生活は実質半年にも満たない。子供はいない。

現在は実家に戻り、両親と同居している。やはりお見合いをしないと出会いがないということで、結婚相談所を変えて婚活を再開することにしたという。

「マサオさんはどうして離婚をしたのですか?」そう聞くと決まって、次の答えが返ってくる。「価値観の不一致ですね」

「なぜ、結婚前に離婚に至るほど価値観が合わないと気が付かなかったのですか?」マサオさんは前の結婚のために、仲介型の結婚相談所を利用していた。仲介人には結婚相手に臨む条件を、外面だけではなく内面についてもしっかりと伝えていたはずだ。価値観の不一致が起こらないような相手を紹介し、結婚に導くことが仲介人の使命である。だからこそ、お見合い結婚の離婚率は低いのだ。

マサオさんは、ため息混じりに答えた。「結婚するまでに、ぼくと彼女の価値観が本当に一致するかを確かめる時間がなかったんです……」そうして、彼は重たい口を開いた。

マサオさんが婚活を始めたのは29歳の時だった。Facebookで、親友が生まれたばかりの自分の子を抱いている写真を見て、結婚への焦りがピークに達した。

「ヤバい、俺。一生一人だったらどうしよう!」こうした思いに駆られて、仲介型の結婚相談所の戸をたたいた。彼が結婚相手に望む条件はいたってシンプルで、「明るくて、料理ができ、共働きを希望している32歳までの女性」というものだった。

相手はすぐに現れた。市役所勤務のナミエさん(31歳)だ。一人暮らしが長く、自炊をしており、マサオさんの希望条件と合致していた。2人はハリウッド映画が好きだということで意気投合した。

仲介人という第三者がマッチングを行うため、自分とよく合う相手と出会えることがお見合いのメリット。では、デメリットとは?

結婚相談所経由のお見合いならではの落とし穴

順調に交際が始まり、3カ月が過ぎた頃、彼の運命を左右する出来事が起こった。それは、結婚相談所からのある連絡だった。

「交際開始から90日を過ぎましたので、成婚料金が発生します」。突然の連絡に思えたが、契約書には確かにそう書いてあった。入会時には、交際後にどんな段取りで事が進むかなんてイメージできてなかった。

こんな形でプロポーズをすることになるなんて……。どこか人ごとのような気持ちのまま、結婚相談所によってもたらされた流れに任せてのプロポーズとなった。

出会いから3カ月で結婚を決めると、今度は結婚式の準備に追われ始めた。のんびり交際をしている時間はない。日取りや式場の決定、ウェディングドレスなどの衣装選び、招待客は何人で誰にするのか、席順は……、やらなければならないことは山積みだ。

こうして、マサオさんとナミエさんの話題は結婚式一色となった。そして婚約から半年後、無事に結婚式が終わり、直後に出かけた新婚旅行先のハワイで彼はハッとした。

ナミエさんが3日間で30万円以上の買い物をしていたのだ。映画鑑賞以外のマサオさんの趣味は貯金だ。バンバンお金を使う彼女の姿に危機感を抱いた。思えば結婚式に関わる費用も、あれやこれやと彼女の要望に応えるうちに、当初の予定をだいぶオーバーしていた。しかし、「一生に一度のことだし」と、それ以上は気にとめていなかった。いや、気にとめる暇など無くここまで来てしまったのだ。

新婚生活がスタートしてすぐに、家庭は口論が絶えない状態になった。マサオさんがナミエさんに財布を預けるのを拒否したことがきっかけだった。「生活費は折半しよう」「そんなの変よ! どこの家も奥さんがお財布を預かってるわよ」「君みたいに経済観念のない人にぼくの財布は預けられない。ハワイでのあの買い物はなんだ!」「記念に買っていただけよ! あなた、頭おかしいんじゃない!?」

新婚生活は半年に満たずに破綻した。

“お見合い離婚”を避けるために

「マサオさん、そんなことがあったんですね……。確かに、多くの結婚相談所では交際開始から3カ月で、結婚の決断を迫ってきますよね。その後は結婚式の準備に没頭してしまい、お互いのこと放ったらかしにしがちなものです」「ああ、それを失敗する前に知りたかった!」

そう、仲介型の結婚相談所を利用した“お見合い結婚”の落とし穴とは、3カ月と短い交際期間で結婚の決断を迫られることが多いため、その後、実際に結婚するまでの期間が結婚式の準備だけに追われ、他のことが目に入らなくなってしまうことだ。

特に、婚活をしていると結婚が決まっただけで、「やっとこの苦行が終わる!」という開放感に支配されてしまいがちだ。だからこそ、結婚式の準備に追われようとも、2人で向き合い、互いを見つめる時間を意識的にとる必要がある。例えば、週に1度は結婚式の話題をしない日を設ける、1カ月に1度は純粋にデートだけを楽しむ、というように。

このような時間があれば、マサオさんはお互いの金銭感覚の違いが致命的なものかどうか、またお互い譲り合える余地があるかどうかを見極めるチャンスが得られたかもしれない。

しかし、これだけでは、価値観の一致、不一致を見極めるには不十分だ。婚約や結婚後に相手と別れることとなり、結局、成婚料をドブに捨てて、婚活を再開せざるを得なくなるというリスクはつぶしきれない。だから、出会いからの交際3カ月間は、プロフィールから見えてこないお互いのパーソナリティーを理解し合う時間として、大事にしなければいけないのだ。

大西明美
婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。
著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。