仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、110冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「早期退職を目指す夫」についてのご相談です。

【今回のご相談】
会社員の夫がアーリーリタイアメント(早期退職)にあこがれています。実際に自分のお小遣いで投資を行うなど準備を進めており、成果を挙げているようです。「生きていくために必要な資産を早々に形成し、仕事を離れ悠々自適」という生き方もありだとは思うのですが、晩婚で息子がまだ小さいため、「働く父親の背中」を見せられなくなるということに抵抗があります。私の考え方が古くさいのでしょうか。
夢のアーリーリタイアメント。大人の目には“勝ち組”と映りますが……(イラスト=伊野孝行)

人間はクリエイティブにできている

【本田健さんの回答】

ご主人が投資で成功しているとのことですが、早期退職は面白い人生の選択だと思います。私の周りにも、早期退職したことがある人はたくさんいますが、みんなそれぞれに楽しい生活をしています。自分の好きな仕事を再開する人もいれば、いろいろなところを旅行している人もいます。

どうして、あなたは旦那さんがお金持ちになったら、何もしなくなると考えるのでしょうか。

人間は、クリエィティブにできています。お金があったとしても、やりたいことがでてくると思います。そうなったら、お金のための仕事ではなく、本当にそれがやりたいからやるというようになるでしょう。その姿をお子さんが見るのは、とっても素敵なことです。

私も4年間、育児だけを行っていた時期がありましたが、その後、作家、講演家の道を選びました。本当にやりたいことをやって社会に貢献する姿を見せるのは、教育上、とてもいいことだと思います。実際に、私の娘は、父親が大好きなことをやっているのを間近で見てきて、自分も才能を使って、仕事をしたいと考えているようです。

ですので、お金ができたらどういうことをやりたいのかということも、ご夫婦でお話になるとよいのではないでしょうか。ワクワクすることを家族で追いかけるのは、楽しいことです。投資を成功させる過程で、ぜひ次のプランについても話してみてください。目的がはっきりすると、投資はさらにうまくいくと思います。

男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2200万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は110冊以上、累計発行部数は700万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/

望み通りの人生を、手にする父はカッコいい

【河崎環さんの回答】

ご相談者がお考えになる働く父の姿とは、黒っぽいスーツにネクタイを締めて、朝から晩まで会社勤めをするビジネスマンの姿でしょうか。季節の移ろいと気候の変化にいつも関心を向けながら、腰を曲げ手も顔も真っ黒にして汗をかく農家の姿でしょうか。あるいは、教壇に立ち生徒の人生に真剣に向き合う教師、自分たちにしかできないものづくりにプライドをかける町工場の職人、スポーツ選手や電鉄の職員や、世にはさまざまな「働く男たち」がいますよね。

子にとって、父の姿とはどんな姿であっても「父」なのです。ご自分の価値観に沿った理想の父親の背中を欲しがっているのは、お子さんというより本当は妻であるご相談者なのかもしれません。アーリーリタイアメントを目標にして、自ら稼いだお金を原資に投資に成功し、望んだ通りの悠々自適な人生を手にする父の姿は、充分にカッコいいのではありませんか。

悠々自適ついでに、きっと旦那さんは家庭に割く時間もたっぷり取ってくれるのだと思います。晩婚でもうけた大切な息子さんを、お父さんが傍らでしっかりとその成長を見つめてくれる。これまでの社会経験と、投資の知見から旦那さんが手にした人生観や社会観を、息子さんに語りながら。それこそ私などから見れば理想の人生、うらやましい限りです。

この際、ご相談者は「うっわー、こんな上等のダンナ持って、私ったらラッキー!」とばかりに、あとは男子(父と息子)2人に任せて職業人生に邁進(まいしん)してしまいましょう。その母親の背中もまた、息子さんには学ぶものが大きいと思います。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。