誰もが起業で100パーセント成功するわけではない。失敗もつまずきも経験であり、それを糧に成長したいもの。インターネットショップを個人事業で立ち上げ、現在2社1団体の代表を務める菊川朱美さんに、“自分スタイルで事業に突き進むコツ”を、聞いた。

女性の起業スタイルが決まる3つのハードル

「いつお布団で寝たのかもわからないほど、昼夜ダラダラと仕事を続けていました。冷静に考えれば、そんな状態で長く続けられるはずもなかった」

そう語る菊川朱美さんは、1997年にインターネットショップを個人事業で立ち上げ、年商3000万円まで伸ばし、法人化した経験者であり、現在2社1団体の代表を務める起業の先輩だ。

菊川朱美さん「ひとりでは限界があることも、チームなら乗り越えられます」

「出産後に自宅で立ち上げた事業でしたが、最高月商600万円を売り上げたときも。育児をしながらひとりでなにもかもやったことで体を壊し、結局3年で閉鎖しました」

女性起業家の多くがひとりで事業をスタート。国を挙げて女性の活躍を応援する機運があるが、どこかで無理をしている女性起業家もいるはずと、自身の経験からも心配を寄せる。

プライベートでも役割が多い女性の起業には、3つのハードルがあると菊川さん。どのハードルかによって大体の事業範囲が決まり、自分の起業スタイルになる。「ハードルを無理して跳び越える必要はないし、自分が思うだけで、実際はハードルじゃない人も」。これは多くの女性起業家、起業をめざす女性と接した経験、また自身が最初のひとり起業で時間も体力も無駄にした反省から見えてきたこと。

●起業スタイルが決まる3つのハードル
1.起業への迷い
起業を迷うなら、まずは手始めに副業からスタートしてみても。
2.従業員の雇用
社員の生活を保証する覚悟がなければ、個人事業orひとり会社でまい進。
3.借金への不安
事業規模拡大には借金はつきもの。不安が払拭できないなら、現状維持を。

精神的シェアができる環境が女性の起業には必要

「チームで足りない部分を補い合えば事業の可能性は広がります。女性の起業にはワークシェアではない、精神的シェアができる環境が必要です」

役割の多い女性だからこそ、お互いさまの精神で補い合う組織づくりが可能。これは男性にはできない、女性ならではの発想。「ひとりだけで事業を続けていると、いつか破滅してしまう」と経験から語る。では女性の起業において破滅しないコツとはなにか。

「長期の視点を持つ。絶対評価を大切にする。どんなときでも常にニュートラルでいること。この3つが大切」

●破滅を招かない3つのオ・キ・テ
1.長期の視点を持つ
現在直面する問題も、長い目で見れば心に余裕が持てる解決方法が見つかる。
2.相対評価を意識しない
他人を意識してばかりいると、自分の信念や目標が揺らぐ。絶対評価を意識。
3.常に気持ちをニュートラルに
振り幅が大きいほど、その反動も大きい。どんなときもニュートラルで冷静に。

結婚・出産・育児なども、50歳、60歳の長期の時間軸で見れば、今直面している数年間の問題と考えられ、判断に余裕が持てる。また、他人がどう思うかに重きをおく「相対評価」では信念がぶれる。さらに事業には常に波があり、波に乗って事業が急激に伸びたときも、逆に荒波にのみ込まれそうになったときでも冷静な判断が必要。「絶対評価」で、5年後、10年後に目標を定め、時代の波の振り幅に翻弄(ほんろう)されないよう常に気持ちをニュートラルに保っておくと、自分自身納得ができて心地よく、事業もやりやすくなるという。

「私同様、一度“えらい目”に遭った人は腹が据わり、事業の冷静な判断が可能になります。失敗も経験。次のステップへの大切な足掛かりです」

最初から最後までうまくいく起業はほんのひと握り。多くの先輩起業家の経験を参考に、自分スタイルでの起業をめざしてみよう。

菊川朱美
株式会社アイエスおよびバックオフィスサービス株式会社の代表取締役であり、女性の事業育成をサポートする女性起業家ネットワーク、一般社団法人NeoWoman代表理事を務める。