日本人の平均初婚年齢は男女ともに上昇を続けています。しかし女性の場合、歳を重ねるにつれて婚活が難しくなり、40代ともなると若い頃に比べて苦戦するのは事実。結婚相談所を経営する大西さんが、40代女性向けのための婚活イベントで体験した“失敗”と“気付き”とは……?
40代女性の魅力を婚活で輝かせるために
仕事としてお見合いカウンセリングを行うようになり、気が付いたことがある。それは、40代女性は、20代や30代前半の女性に比べて柔和でコミュニケーション力が高く、話題も豊富だということだ。
当時、30代になったばかりだった私は、「こんなに素敵な女性たちがなぜ独身なのだ!」と不思議で仕方なかった。そこで私が導き出した結論は、「40代女性の魅力を知ってもらうために、彼女たちのトーク力を生かせるような婚活イベントを開催しよう」だった。
通常のお見合いパーティーは1対1でのトークタイムを設けていたが、そのパーティーは、ドリンクを持ち歩きながらフリートークができる形式にした。年齢制限なし、自由に動けて話題も何でもOKという企画が好評を博し、普段は10名程度のところ、40名を超える申し込みがあった。男性参加者のうち、8割以上が30代。40代女性参加者の9割以上が年下の男性を希望していたので、年下男性との出会いのチャンスもたくさん作れる。全てが順調に見えた。
そして、パーティーは始まった。私は、しばらくニコニコしながら様子を見ていた。しかし5分程経ったところで、異変が起こった。40代女性たちが集まって話し始めたのだ。「えっ、どういうことなの? 何でこんなことに?」私は慌てて、彼女たちが集まっている場所に駆け寄った。
40代女性の戦意を喪失させたもの
40代女性の集まりの中の一人、サユリさんが質問をしてきた。「大西さん、今回は1対1でお話をする時間はないのでしょうか」「え、ないです。だって今日のパーティーは、“みなさんのトーク力を生かして年下男子と結ばれる”っていうコンセプトなんですよ?」
そう、1対1形式だと、私の主催するお見合いパーティーでは一人に対して5分しか話すことができない。大手の結婚相談所のお見合いパーティーでは、2~3分ということがほとんどだ。若い女性たちに負けない高いコミュニケーション力、積極性を発揮して、これぞという男性を囲いこみ、しっかり自己PRして欲しいというのが私の願いだった。
「……お気持ちはありがたいのですが、これでは無理です。男性は自由に歩き回れるならば、若い女性のところに行ってしまうのです。私たちも若い女性のところに行きたいんだろうなぁと思うと、男性をつなぎとめるのは気が引けます。短くても平等に時間をいただかないと……」言葉の途中でサユリさんは涙をこぼした。すると、他の人たちが涙をにじませながら続けた。「男性とお話できないのです」
一方でこのお見合いパーティーでは3組のカップルが成立し、結婚した。女性は全員20代だった。結果的に40代女性たちを引き立て役にしてしまったのだ。これほど開催を後悔した婚活イベントはない。
40代女性はコミュニケーション力が高く相手をおもんばかれる分、人を押しのけて出会いのチャンスを得に行くなんて厚かましいことはしないのだ。つつましやかに、「若い人に」と譲ってしまう。テレビで報じられる婚活関連のニュースなどでは、高望みの厚かましい女性ばかりが取り上げられ、「だから40歳まで結婚できなかったんだ」と批判されることも少なくない。しかし現実は違う。譲りすぎて婚期を逃した人の方が多いのだ。
なぜ少人数なのに高い成婚率となったのか
私は大いに反省し、新たな婚活イベントを企画することにした。40代女性にチャンスが集中するものだ。
それは、40歳以上の女性に限定したお見合いパーティーだ。男性の年齢は、下限なしで上限は50代までとした。つまり20代男性も参加してもいいのだ。40代女性からは非常に受けがよく、募集開始後1日で定員いっぱいになった。しかし、男性はやってこない。女性からの申し込みが8名なのに対して、開催1週間前になっても男性は1名だった。
そこで私は「子供を産むだけが女性の価値ではない」というスローガンを掲げて、募集活動を続けた。もしかしたら産めないかもしれないけれども、夫婦二人で生きていく道もある。また、男性に原因がある不妊ということだって考えられる。「妊娠・出産の能力や可能性だけで決めないで、まずは会ってみませんか?」と訴え続けたところ、全部で5名の男性が集まり、そこから2組の結婚が決まった。
なぜ、男女合わせて13名しか集まっていないのに2組も結婚が決まったのか。それは若い女性がいないことで、40代女性が遠慮せずに自分の魅力を伝えることができたからだ。若い女性がいると思うと、「私が存在するのは悪いことだ」と体が固まり、どんどん自分で気配を消していってしまう。これが40歳を過ぎた女性の婚活を難しくする原因だ。
年齢を理由に遠慮しない生き方
40代女性に寄り添った婚活イベントは準備が大変なため、他の年代に比べると開催が少ない。だからこそこういった機会には、「私は若くないから」と卑屈にならずに、「全員が同世代」という大きな気持ちで婚活に挑む。これができれば、自分の魅力を最大限に伝えられるようになり、出会いのチャンスが一気に広がる。同様に、同世代かそれ以上の年代の人が多く集まるサークルなどに参加してみるのも、「自分の年齢を理由に遠慮してしまう」という癖を改めるにはよいきっかけとなる。
そして、最終的にはどんな年代の人の中にあろうとも、つつましさはそのままに、自分の魅力を伝えられるようになってほしい。今、40歳を目前とした私は、同世代アラフォーの気持ちがよく分かるようになった。昔の失敗を反省しながらも、「40代女性の皆さん、自信を持てばあなたの輝きは伝わりますよ!」と背中を押し続けたい。自分の年齢に自信を持つということは婚活に限らず、この先何十年と続く人生を、楽しく過ごすために必要なことだから。
婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。