政府は熊本地震を大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定

2016年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震源とするM6.5の地震(前震)が発生し、震度7を観測しました。さらに4月16日1時25分にも熊本県熊本地方でM7.3の地震(本震)が発生し、震度7を観測しました。

熊本地震は5月14日で1カ月となりますが、余震が1400回を超えてもおさまらず、各地では甚大な被害をもたらし、今も多くの人が避難生活を強いられています。

政府は、熊本地震を大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定しました。これにより、地方自治体が管理する道路や橋、トンネルなどの復旧工事を国が肩代わりすることに。政府は熊本地震の復旧費などに充てる2016年度補正予算案の総額を約7800億円とし、財源は赤字国債の増発で賄うそうです。

復旧工事を国に肩代わりしてもらった分、自治体が被災者支援に専念できるのはよいことでしょう。

災害の際に被災者の生活を支え、再建の一歩となるのがさまざまな支援制度です。支援制度は申請しないともらえないものが大半なので、被災地以外の人もイザというときに活用できるよう頭に入れておきましょう。

災害による生活再建支援制度と手続き先を紹介

地震など自然災害で被災した際に、国と自治体には別々に生活再建への取り組みを行うさまざまな制度があります。イザというときは使えるものをどんどん利用して、1日も早い生活再建をめざしましょう。

<何はともあれ「リ災証明書」を発行してもらう>

まず、地震や風水害などの災害によって家屋が被災した場合は、住まいの自治体より「り災証明書」を発行してもらいます。「り災証明書」は給付金や融資、災害義援金の受給、税金や国民健康保険などの支払い猶予や減免、地震保険の支払い請求、仮設住宅への入居申請などに必要となります。

現在、熊本地震では、多くの被災者が「り災証明書」発行の手続きをしています。自治体自体も被災しているので、手続きが遅れているのは仕方のないところ。「り災証明書」の交付は、建物被害認定調査が完了してからとなります。

<「災害弔慰金」は最大500万円の給付>

災害によって亡くなられた方、あるいは行方不明になった方の家族は、自治体より「災害弔慰金」の給付を受けることができます。

給付金は、生計維持者が死亡した場合は最大500万円、その他の人が死亡した場合は最大250万円です。住宅のある市区町村から支給されます。

また、災害によって重度の障害を被った場合には、自治体より「災害障害見舞金」を受け取ることができます。対象者は障害の程度により生計維持者なら最大250万円、その他の人は最大125万円です。

<生命保険や損害保険の「保険証券の照会」の仕方>

生命保険や損害保険の保険証券の紛失や契約者の死亡などで、保険内容がわからない場合も多いはず。そんなときは生命保険協会と日本損害保険協会が、被災地の個人契約者を対象に保険契約照会をしてくれます。保険契約をしているかどうか、契約しているのならどこの保険会社かがわかります。

<暮らしを立て直すための「被災者生活再建支援金」>

災害により住宅が全壊するなど、生活するのに著しい被害を受けた世帯に自治体から支給されるのが「被災者生活再建支援金」です。こちらは阪神大震災を契機に制度が作られました。

支給額は、全壊などは100万円、大規模半壊は50万円。こちらにプラスして住宅の再建方法に応じた支援金は建設・購入で200万円、補修で100万円、賃借で50万円です。

つまり支援金は最大で300万円もらえるのですが、全壊した住宅を建て直すには少ない金額であり、支援金をもらって建て直すのなら自費をプラスすることになります。心配な人は地震保険などで備えることも考えましょう。

<低金利で借りられる住宅金融支援機構の「災害復興住宅融資」>

国の金融機関である住宅金融支援機構では、災害からの早期復興を支援するため、住宅を建て直す「災害復興住宅融資」を行っています。

5月12日現在の金利は、返済期間最長35年の固定金利で年0.47%と低金利。建て直すのではなく補修の場合も年0.47%の低金利です。

<住宅や家財を買うための融資「災害援護資金」>

災害により負傷または住宅や家財の損害を受けた人は、自治体からも低金利でお金を借りることができるのが、「災害援護資金」です。自治体によって異なりますが、目安として住宅が全壊してしまったら250~350万円を超低金利もしくは据え置き期間無利子にて融資を受けることができます。

<気になる住宅ローンは一部減免も>

住宅ローン返済中に被災して住宅が壊れると、ローンを払いながら賃貸住宅を借りたり、または仮設住宅に住むことになり、住まいの負担が増えます。新たに家を買うならば二重ローンになってしまうでしょう。住宅ローンについては借り入れ銀行と交渉することになりますが、交渉はうまくいかないことも多いです。

しかし、奇しくも熊本地震前の4月に運用がはじまった全国銀行協会が事務局の「自然災害による被災者の債務整理によるガイドライン」にて、条件を満たせば住宅ローンの免除・減額を受けることができるようになりました。

災害救助法の適用を受けた自然災害の被災者で住宅ローンの返済ができない人は、ガイドラインの手続きを希望することを銀行に申し出てください。その後、国の補助により弁護士などの登録専門家による手続きを無料で受けることができ、債務整理を支援してもらえます。生活再建に必要な現金を手元に残したあと、できる限りのローンを返し、返済しきれない分は減免になります。

ガイドラインを利用すれば自己破産を免れ、その後、新たな住宅ローンを組むこともできます。窓口は借り入れ銀行なので、相談してみましょう。

<自らの力で住宅を確保できない人は「仮設住宅」へ>

災害により居住する住宅がなくなり、自らの力で住宅を確保できない人は自治体が建設する仮設住宅へ入ることができます。

今回の熊本地震で、熊本市長は、仮設住宅の建設費に58億5900万円、「みなし仮設住宅」として民間の賃貸住宅などを借り上げる経費に13億9700万円を充てると発表しました。これから申し込みが始まるでしょう。

<年金や税金なども減免される>

災害の規模や被災程度に応じて、税金や保険料などの減免や控除を受けられる場合もあります。一覧表にしましたので、放っておかず手続きをしましょう。

表を拡大
【上】災害時には税金なども減免される【下】災害時、子どもの学校への復学支援

被災時の税金の減免には、損害額に応じて課税所得が控除される「雑損控除」と、「災害減免法」で定めた条件で税額そのものを減免する制度の2つがあります。「雑損控除」は災害に限らず、盗難や横領による被害も認められます(災害や盗難にあったら税金が安くなる「雑損控除」とは? http://woman.president.jp/articles/-/1022を参照)。

「雑損控除」と「災害減免法による措置」は損害額や所得額によって有利なほうを選べるので、該当する人は税務署の相談コーナーで相談しましょう。

地震予知の分野で、南海トラフや首都直下型地震に焦点が当てられている中で発生した熊本地震。日本は至るところに活断層があり、今、このとき、どこで大きな地震が起きてもおかしくない状況であることを、私たちは自然から見せつけられました。

日本に住む限り、私たちは地震と付き合っていかなければなりません。しっかりと地震に備えて、イザというときに慌てないようにしたいものです。

マネージャーナリスト 坂本君子(さかもと・きみこ)
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。