主な手続きは「健康保険」「失業保険」「年金」「税金」

終身雇用制度が見直され、転職するのがあたりまえになった昨今。かくゆう私も3回転職し、4社目を退職するときに個人事業主として独立、その後、起業をしました。

現在、転職する人はどれくらいいるのだろう……と思って調べてみたら、平成26年の1年間の入職者数は798万人(年初の常用労働者数に対する割合の17.3%)、離職者数は713万人(同15.5%)。そして転職入職者数は504万人で、この1年間で転職により新たな職を得た人は労働者全体の10.9%、つまり10人に1人は転職しているという計算になります(首都圏で働く私の肌感覚では、もう少し多い感じがします)。

会社を退職し、すぐに会社員として転職先があれば、転職先の会社が働く環境を整え、社会保険や税金の手続きを行ってくれますが、退職後に就職先がない、あるいは就職をしないとなると、退職後のいくつかの手続きを自分ですることになります。

今回はちょっと面倒な退職後の手続きを、「健康保険」「失業保険」「年金」「税金」の4つに分けて説明します。

退職時に「会社へ返却するもの」と「会社からもらう書類」

まずは会社を退職するにあたり、「会社に返却するもの」と、退職後に「手続きをするために会社からもらう書類」をチェックしましょう。

<退職時に会社に返却するもの>
・健康保険被保険証
・社員証やIDカード
・定期券(退職日に期間途中でも返却する)
・制服やロゴの入った作業着
・名刺
・事務用品などの備品
・パソコンは中身をきれいにして返却

<退職時に会社から受け取るもの>
・離職票
・雇用保険被保険者票
・源泉徴収票
・年金手帳

退職後の「健康保険」は自分で選ぶ

退職後の健康保険は、自分で健康保険制度を選び、自分で加入しなければなりません。申請期間が短いものもあるので早めに準備をしておきましょう。

退職後に加入できる健康保険は「任意継続被保険者制度を使う」「国民健康保険に入る」「配偶者や親の扶養になってその人の健康保険に入る」の3パターンです。どの健康保険に加入しても医療費の自己負担3割は変わらないので、保険料が安いところを選びましょう。

●任意継続被保険者制度を使う……会社を退職しても、その後2年間はそのまま同じ健康保険に加入することができ、これを「任意継続被保険者制度」といいます。もちろん扶養家族もそのままの健康保険に加入OKです。ただし、在職中は会社が2分の1を負担していた保険料が退職後は全額自己負担になるので、保険料が上がるでしょう(任意継続被保険者制度の保険料には上限があるので、在職中と変わらない人もいます)。

手続きは加入していた健康保険組合か住まいの年金事務所にて、退職後、自分で20日以内に手続きを行います。

なお、保険料を毎月10日までに納付しないと、自動的に資格を喪失するのでご注意。

●国民健康保険に入る……退職の翌日から14日以内に、住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口にて手続きをします。扶養家族がいる場合は、一人一人が国民健康保険に加入することになります。保険料は前年の所得、家族の人数などを基にして市区町村ごとの計算式によって決められ、世帯主に納付書が届きます。また、納付の方法も市区町村ごとに異なります。

保険料の金額、納付の方法を窓口に問い合わせてみましょう。

●配偶者の扶養になって配偶者の健康保険に入る……共働きだった一方が退職し、もう一方の扶養になるのなら、配偶者の健康保険に入れてもらうことができます。被保険者になれば健康保険料の自己負担はゼロです。

加入するには配偶者が勤める会社を通じて、健康保険組合に必要書類を提出します。会社の担当者が求める書類を用意するようにしましょう。

次の会社へ転職をするまで病院へ行かないし、もし病気になってもその時点で健康保険に入ればいいと手続きを怠る人がいますが、そればNGです。

健康保険に加入することは国民の義務です。健康保険の手続きで提出する書類(前の健康保険を辞めた証明書)には資格を喪失した日が記載されており、健康保険に入らずに病気やケガで病院にいったら医療費は全額負担となり、健康保険料は遡って払うことになります。

求職の申し込みをしないと「失業保険」はもらえない

会社を退職後、すぐに転職しないのであれば、住まいを管轄するハローワークに求職の申し込みをしましょう。失業保険(正しくは雇用保険の失業給付金)をもらうためには、ハローワークで求職の申し込みをし、就職活動しても勤め先が決まらない「失業の状態」にあることが条件です。

もし、結婚や出産ですぐに働けないけれど、落ち着いたら働きたいと思っている人は、ハローワークで受給期間延長の手続きをしておきましょう。失業給付をもらうためには再就職をする積極的な意志と能力が必要です。ハローワークで求職を申し込み、企業説明会に参加する、求人へ応募する、各種講習やセミナーを受けるなどの必要があります。

<ハローワークに行くときに必要なもの>
・雇用保険被保険者離職票
・運転免許証など本人確認書類
・写真(縦3cm×横2.5cm)2枚
・印鑑
・本人名義の普通預金通帳(銀行印の代わりになるので必ず持参)

失業保険の受給資格が決定すると、ハローワークの窓口で「雇用保険受給者初回説明会」の日時が指定されます。説明会は指定された日に必ず出席しなければなりません。持ち物は、「雇用保険受給資格者のしおり」「印鑑」「筆記用具」です。

説明会にて「雇用保険受給資格証」「失業認定申告書」をもらい、第1回目の「失業認定日」も教えてくれます。

失業保険をもらうためには、指定された日程を守ることが大切です。日程の選択肢や“リ・スケジュール”はありませんので注意してください。

なお、失業給付は、自分から会社を辞める「自己都合」と、リストラや倒産など会社の理由によって辞める「会社都合」によって、もらえる金額が異なります。また、自己都合だともらえるまでに7日間+3カ月の待期期間があります。会社都合の人は、7日間の待期期間を過ごした後、給付が行われます。

再就職するまで「国民年金」に入る

60歳まで国民年金に加入するのは国民の義務です。会社を退職し、すぐに再就職をしない場合は、短い期間でも国民年金に入ることになります。退職日から14日以内に、住まいの市区町村の国民年金の窓口での、手続きを忘れないようにしましょう。

また、サラリーマンの扶養の妻が、夫の退職で扶養から外れたときも、夫婦それぞれが単独で国民年金に入る手続きをし、国民年金保険料を納める必要があります。

逆に、働いていた妻が退職してサラリーマンの夫の扶養になるなら、年金制度の第3号となり、年金保険料の自己負担はなくなります。この場合は夫の会社に手続きを依頼します。

年金変更の手続きを怠ると保険料が未納になります。未納すると65歳からの老齢基礎年金が減ったり、年金の受給権に影響を与えることもありますので、注意しましょう。

<国民年金加入のための必要書類>
・国民年金被保険者種別変更(第1号被保険者該当)届書(窓口にある)
・本人または厚生年金に加入していた配偶者が退職した日が確認できる書類の写し(雇用保険の離職票、退職辞令、退職証明書など)
・年金手帳
・印鑑

退職後の「所得税」と「住民税」の払い方

同じ税金でも「所得税」と「住民税」は納め方が異なります。

所得税はあらかじめ年収を想定し、それを月割りにして給料から差し引かれています。年の途中で退職をし、その後、年内に再就職しない場合は所得税を多く納めていることになります。余分に払った所得税は確定申告によって戻してもらうことができます。

なお、退職金の所得税は源泉徴収で会社が納めてくれるので、確定申告をする必要はありません。

住民税は退職した時期によって納め方が違います。

●1~5月に退職した場合……前々年の所得に対して課された税額のうち、5月までに納めるべき残額を退職時に一括で支払います。

●6~12月に退職した場合……前年の所得に対して課された税額のうち、翌年5月までに納めるべき残額を、退職時に最終月の給与や退職金から一括で払うのが一般的です。分割で払いたい場合は、その旨を会社に伝えてください。後日、役所から納税通知書送られてくるので、自分で支払います。

退職は人生の節目であり、次のステップへの扉です。退職後の手続きはいろいろ面倒ですが、ひとつひとつクリアしていくうちに次の道が開けてくるというものです。ファイトです(と経験者は語る)。

マネージャーナリスト 坂本君子(さかもと・きみこ)
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。