電子書籍の出版社や雑誌読み放題サービスをのぞくと、普段は読まないタイトルが目に飛び込んでくる。新鮮な出会いがあるかも!?
電子書籍市場はどうなってる?
電子書籍の市場規模は、2014年で1000億円を超え、2018年までに2014年の2倍以上になるといわれる。スマートフォンやタブレットの普及が市場拡大を後押しした。
主な売れ筋はコミック、エロ・官能、ボーイズラブ、ライトノベルなどだが、それらのジャンルは価格競争が激しいため、最近は専門書や読み物などに売り上げの伸びが期待されている。
電子書店はAmazonが最大。楽天のkobo、アップルのiBooks Storeが続く。ほかはコミックなどのeBookJapanやBookLive!、ライトノベルなどの電子書店パピレス、雑誌のマガストアやFujis an.co.jpなど、専門店化している。
「従来の紙の書店と違って、電子書店には玉石混交な面白さがある」と鈴木さん。今後はニッチ化や専門特化が進むとみられる。
専門書、ビジネス書は「セール」でゲット
紙の本には「定価」があるので、値下げをすることができない。しかし、電子書籍は再販制度の対象外なので、セールが可能だ。
「ビジネス書の古典や新書、専門テーマの書籍などは、まず電子書籍のセールをチェックして、安く購入するのが賢い買い方ですね」と話すのは、電子出版サービスを手掛けるブックビヨンドの鈴木秀生さん。
鈴木さんは、電子書籍を読書の「入り口」と位置づける。
「専門書などは2000円以上するようなものもあります。ちょっとちゅうちょする金額ですよね。そういうときに電子書籍を探してみると、500円以下の入門書が見つかることがあるんです。まずはそれを買い、もっと知りたくなったら紙の専門書を買えばいい」
電子書店ではビジネス書などの一般書も値下げされている。買った本を読まないまま部屋に積み上げているような人は、「ちょっと読んでみたい」という程度の本なら、電子書籍で安く手に入れたほうが、財布のためにもいいはず。
「書店で買われる本よりも公共図書館などで借りられる本のほうが多くなった2010年が、電子書籍元年といわれます。“所有”から“閲覧”の時代に変わったということです。電子書籍は『買う=所有』ではなく、閲覧権をユーザーが保持するだけ。そのぶん、“安い”というメリットを享受できるのです」
書籍化できなかった「レア本」が面白い
紙の本にはないコンテンツと出会えるのも、電子書籍の魅力のひとつ。『190センチの世界』や『日本全国レトルトカレーの旅』などの電子書籍を出版する「あの出版」は、電子書籍専門の出版社。編集部は部長の鶴田千佳子さんただ一人。
「企画会議は私の脳内で行われます(笑)」と話す鶴田さんは、2012年からあの出版の企画・運営を行う。
「紙の本ではなかなか出版されないようなニッチな企画を、意識的に狙っています」
電子書籍市場が爆発的に伸びるには、もっとクオリティーを上げる必要があると鶴田さんは考えている。
「電子には電子の良さがあります。紙の本のように在庫を抱えなくていいので、たくさん売れなくても出版できるのは大きな特徴。だからニッチなテーマでも本にすることができます。また、移動中などのスキマ時間で気軽に読めることもメリット。そうした電子書籍の良さを生かしたコンテンツをつくりたいですね」
青空文庫で公開されている小説を編さんした「オトナの短編シリーズ」は、もくじにその短編を読める目安時間が表記されている。あの出版の独自調査で、人間が読むスピードを「1分で600文字」と割り出したそうだ。太宰治の「美少女」は10分、芥川龍之介の「秋」は25分。10分の空き時間なら、太宰治を選べばよい。スキマ時間を有効に使える、電子書籍ならではの読書が楽しめる。
働く女性が「SPA!」を読んでた!
2014年の電子書籍界隈(かいわい)を騒がせた話題のサービス「dマガジン」。NTTドコモが提供する、スマートフォンやタブレット向けの電子雑誌の読み放題サービスだ。月額400円で100誌以上の雑誌が記事ごとに読み放題。ドコモユーザー以外でも登録可能で、爆発的にユーザー数を増やし、2015年3月には191万契約に到達した。
「多くの人にいろいろなジャンルの情報を提供したいという考えから、ある程度、安価なサービスを目指しました」と同社マーケットビジネス推進部の多田康彦さんは振り返る。
「『経済・ビジネス』『グルメ』などのジャンルや『桜』などの特集でも記事をまとめているので、複数の雑誌を読み比べできます。『占い』では雑誌ごとに自分の運勢が違っていたり(笑)。防水の端末ならお風呂に持ち込むこともできますし」と同社奥野光紗さんは女性ならではの活用法を教えてくれた。
「通勤電車の中づり広告の記事がその場で読めるのも面白い」と奥野さん。「週刊SPA!」や「Beg in」などの男性誌の記事も、女性に読まれているという。
「読める雑誌は今後も増やしていきますが、独自性も追求していきたい」と多田さん。欧米では主流となりつつある雑誌の定額購読サービス。お風呂で雑誌を読んで、思いもよらない記事に出会う――そんな楽しみ方はいかが?