「結婚して親を喜ばせたい、安心させたい」という気持ちが強いほど、婚活がうまくいかないという話を聞きます。親思いでまじめな女性ほど悩む相手選び。親との折り合いを上手に付けて、祝福される結婚をするための3箇条とは?
恋人いない歴15年、その真相とは?
「23歳で彼と別れてから、一度も男性と交際をしていません」私の経営する結婚相談所を訪れたサナエさんの告白を受けて、手元の申込書に目を落とした。
年齢:38歳
職業:中堅企業正社員
住居:実家で両親と同居
恋人いない歴:15年
恋人いない歴15年とは、恋愛盛りの20代から30代の大半を、職場と実家の往復に費やしたということだ。恋人がいないということすら信じられないほど、美しい容姿の彼女にいったい何があったのだろう。
「最後に付き合った男性とはどのように別れたのですか?」15年も恋愛をしていないとなると、別れ方がトラウマになっている可能性が高い。「実は私の親からの反対に遭いまして……」彼女は、話を始めた。
結婚を遠ざける過去のトラウマ
サナエさんには大学時代からお付き合いをしていた男性がいた。シンゴさんだ。
年齢:23歳
職業:大学生(留年中)
見た目:やや長めの金髪
趣味:ギター
将来の夢:ミュージシャンになること
年収:200万円程度(推定)
2人は同い年。有名大学在学中に軽音部で出会い、交際が始まった。彼はギターに夢中になり過ぎて留年をした。それでもサナエさんの気持ちが変わることはなかった。「彼が夢を追い続けられるように、私が支えていきたい」と、本気で思っていた。
サナエさんが就職した年に、「甲斐性のない俺でもよければ一緒になりたい」とプロポーズされた。彼は金髪を真っ黒に染めて、サナエさんの両親への挨拶に来た。しかし……
「サナエ、何のために大学まで出したと思ってるんだ。こんなプータローみたいなやつと結婚させるためじゃないぞ!」親の反発はすさまじく、彼はわずか5分で家から追い出されてしまったのだ。
2人は、親がなんと言っても付き合い続けようと決意したが、3カ月後に破局を迎えた。「私と結婚したいなら定職についてよ」と迫ったところ、彼から暴力を受けたことがきっかけとなった。「親の方が正しかったと痛感しました。男性を見る目にも自信がなくなりました」15年前の恋愛での失敗が、いまだに尾を引いていたのだ。
突然やってくる親からの「相手はいないのか」攻撃
「それ以来、異性関係について親から警戒をされるようになりました」「サナエさんは、自分の見る目も信じられないし、親にも迷惑をかけたくないから、恋愛に消極的になったんですか」「はい、そうです。でも30歳を過ぎたあたりから『おまえ、相手はいないのか』と、父親がプレッシャーをかけてくるようになりました。今まで『変な男と付き合ってるんじゃないだろうな?』と警戒していたのに。恋愛をしないで結婚できますか? 親って本当に勝手です。それで毎日毎日『早く結婚しろ』と言われるようになり、婚活を始めました」サナエさんは30歳から婚活を始めていたのだ。それから8年も経過している。
「サナエさんは、ご両親の求める条件でお相手を探しているということはないですか?」「その通りです。だって私には男性を見る目がありませんし、親を怒らせたくもないですから」
親が求める条件とは、次のようなものだった。
年齢:40歳まで
学歴:有名大学卒業
勤務先:一部上場企業もしくは公務員
年収:600万円以上
結婚歴:絶対未婚
これは、“20代の女性から人気のある男性”の条件だ。いくらサナエさんがきれいな人とはいえ、婚活で20代との競争となると、かなりの苦戦を強いられる。「では、サナエさんが結婚してもいいなと思える人の条件を、ご両親の意向抜きで教えてもらえませんか」もしかしたら、一筋の光が見えてくるかもしれない。
年齢:45歳まで
学歴:こだわらない
勤務先:正社員であれば可
年収:自分と同等以上
結婚歴:相手による。子供がいる人は不可
一筋の光以上だ。これならばお見合い候補はいっぱいいる。「サナエさんの求める条件であれば、たくさんご紹介ができます。しかし、そのパートナーが現れる前に考えなければならないことがあります」
親の愛を信じ、大人の女性としての選択を
私は、結婚相手に望む条件が親と自分とで乖離(かいり)している場合にとるべき3箇条を伝授した。
1.親から経済的に自立をすること
サナエさんは実家暮らしだが、家にお金を入れていなかった。これでは親から子供扱いされても文句は言えない。最低でも、ワンルームの家賃の80%くらいの金額を家に入れることを勧めた。実家暮らしの恩恵の対価を払ってこそ、初めて自立していると言える。それが嫌ならば一人暮らしをすること。
2.親の愛情を信じるからこそ、親に対して少しだけ無責任になること
「親が祝福してくれない結婚はしたくない」と思い込み、親の意向通りに婚活をする人の多くがうまくいかない。それは、自分の好みでもない相手を探すのと同じだからだ。最低限の生活力があって、娘が愛している男性ならば結婚を祝福しようというのが親心だ。親の意向ではなく、自分の意思で婚活をしよう。
3.男性に「私の親の意向通りになれ」と強要しないこと。男性を両親の反対から守る覚悟で
絶対に言ってはならないのは、「あなたがこんなふうだから、親に反対される」という一言。まさに、サナエさんが失敗したパターンだ。これは男性のメンツを潰し、愛を冷めさせる大きな原因になる。むしろ、覚悟を決めて「私があなたを両親の反対から守る」という姿勢を取り、親ではなく彼の味方になると、2人の信頼関係はびっくりするほど強くなる。
1年後、サナエさんの結婚式に招待された。お相手は中堅企業勤務の45歳、年収500万円の男性。親の意向とは違う相手だ。しかし、花嫁から両親への手紙の朗読後、親子3人で涙ながらに抱き合っている姿がそこにあった。
「親は何があっても子供の幸せを願っている」、その1点さえ信頼できれば、親のプレッシャーから解放される。婚活では、親思いでまじめな女性ほど、相手選びの段階で身動きが取れなくなってしまうことが多い。そんな人はぜひ3箇条を、今日から実践してほしい。
婚活アドバイザー。結婚相談所を経営。1977年大阪府生まれ。東京都文京区在住。過去20年で延べ4万3000件の恋愛を研究してきた婚活指導の第一人者。小中学校ではイジメを受け友達がいなかったため、周囲の人間関係を観察することを目的にして登校を続ける。特に恋愛に注目してコミュニケーションを学ぶ。高校生のとき、初めてできた友人に恋愛相談を持ちかけられ、日頃鍛えた人間観察眼を生かしたアドバイスを行い、無事に解決。それをきっかけに恋愛相談が立て続けに舞い込むようになる。婚活指導を通して、5年間で200組以上のカップルを成婚へと導いている。著書に『となりの婚活女子は、今日も迷走中』(かんき出版)がある。