建築は地図に残る仕事。その建築物をつくる現場の醍醐味はチームワークだと廣作さんは言います。一方で「この仕事が本当に好きだ」と実感する瞬間があるとも。その瞬間とは?

▼【前編】はこちら→http://woman.president.jp/articles/-/1116

建設現場の醍醐味はチームワーク

大成建設に入社して初めての仕事は、駅前の再開発施設の地下の施工だった。

大成建設 東京支店 1級建築施工管理技士 廣作利香さん

あらゆるサイズの鉄筋、それを束にして軽々と持ち上げて運ぶ作業員たち、さまざまな種類の工具や機械――。

「とにかく見るものすべてが新鮮で、毎日が本当に楽しくて」

特に、コンクリートの打設作業を当初の計画通り、流れるように進められたときの現場の一体感は格別だった。この仕事の醍醐味(だいごみ)を感じずにはいられなかった。

「それに工事を終えて建物を引き渡したとき、お客さまが喜んでいる姿を見ると本当にうれしいんです。その場面に繰り返し立ち会いたくて、ここまで来たように感じています」

入社当初は女性社員に対する周囲の遠慮を感じたこともあったが、「それも最初の頃だけ」。尊敬できる先輩にも恵まれ、時に紅一点となる環境にハンディを感じることもほとんどなかったという。

建設の現場で何より重視されるのはチームワークだ。限られた予算と定められた工期の中で、一つ一つの工程をいかに順序よくこなすかを、廣作さんは常に考えてきた。

「やるべきことをしていれば、どの現場でも、すぐに仲間として受け入れられる。そんな職場でもあるんです」

これまで10以上のプロジェクトに携わり、昨年は秋葉原のオフィスビルの現場で初めて副所長を務めた。

建設は地図に残る仕事だ。すべての現場に思い出がある。夫とともに東京の街を歩き、近くを通りかかるたびに、誇らしい気持ちになる。最初は何もなかった敷地にビルが建ち、そこに人々の営みが生まれている。その様子を見ていると、彼女は自分がこの仕事が本当に好きなのだと実感する。

Holiday Shot!【写真上】日曜日は、日帰りで森林浴をすることが多い。静岡に行ったときは、1596年(慶長元年)創業のとろろ汁の老舗「丁子屋」も訪れた。【写真下】海外旅行に行くときは、趣味と勉強を兼ねて建築物を必ず見に行くことにしている。

「建設現場の所長は、仮囲いの中でタクトを振る指揮者みたいな存在です。いずれは自分も所長になり、そこで働くみんなが『あの現場にいて良かった』と後々まで思えるような仕事をしたいですね」

大成建設に限らず、大手ゼネコンには部長などの女性管理職はまだまだ少ないという。

「誰かがしっかりと会社で立場を得ていくことが大事。そうすれば、若い人たちもこの業界に興味をもってくれるのでは」

そう語る彼女はいつの日からか、より責任の大きなポストに就いて、後輩の女性社員たちに自分の姿を見せたい、という思いを抱くようになった。

「一回しかない人生、やっぱり何でもやってみたいんです。会社の中でもっと上に行きたい。その気持ちはいつももっています」

■廣作さんの24時間に密着!

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【写真左上から時計回りに】朝礼は7:50開始。作業員に安全注意を呼びかける。/現場で気になったことは、その場で打ち合わせる。/昼食はいつも現場の仲間と談笑しながら食べる。/午前中に巡視した場所も、自分の足と目で再確認。/夕方にも資料作成などのデスクワークをこなす。

6:00~6:30 起床
6:30~7:30 自宅出発

7:30~8:00 現場到着/朝礼
8:00~9:00 現場巡視
9:00~10:00 ミーティング
10:00~12:00 内勤
12:00~13:00 昼食

13:00~14:00 現場巡視
14:00~15:00 打ち合わせ
15:00~17:00 ミーティング
17:00~18:00 内勤
18:00~20:00 打ち合わせ
20:00~21:00 退社、買い物
21:00~21:30 夕食
21:30~22:00 明日の準備
22:00~24:00 趣味の時間
24:00~6:00 就寝

廣作利香(ひろさく・りか)
1971年生まれ。日本大学理工学部建築学科を卒業。2007年に大成建設の駅前再開発の現場監督を担当する。その後複数の現場を経て、現在は約800人が働く建築作業所で副所長を務めている。