世にはびこる「40歳を過ぎたら絶望的」という説は正しいのか。人口動態のデータから不妊治療の実績に関するものまで、さまざまなデータで検証していきます。
スワジランドでは、40代の平均出生率が0.90にもなる
ここで、医学ではなく、人口統計からまったく別の数字を挙げておきます。たとえばこんな話はどう思いますか?
アフリカ南部にあるスワジランドという国では、今でも40代に1人の女性が平均で0.90人子どもを産んでいます。リベリア、ナミビア、マラウイなどのアフリカ諸国や、サモアのような南洋国でも、1人の女性が平均で40代に0.50人弱の子どもを産みます。いずれも先端医療や不妊治療が望めない国で、この数字なのです。
ただ、これだけ遠い国の話だと、民族も異なるし、体の作りも違うから、そのまま日本人には当てはまらない、と思う人も多いでしょう。
では、日本人はどうだったでしょうか。たとえば、大正時代の日本人は、1人の女性が40代に0.43人の子どもを産んでいました。40代で未婚の女性や、夫に先立たれた未亡人を含んでもこの数字です。
「でも、今とは食生活も体格も違うから」と思う人もいるでしょう。しかし、40代の平均出生率は1948年まで0.30を超えていました。それが、急激に落ち込み、60年には0.03と今よりも低くなっています。この間の12年で、体格が急激に変わったとは思えません。それよりも、「40代では産まない」という気持ちの変化が、出生率を下げたのではないでしょうか。
イラスト=Takayo Akiyama