「出会いの機会がない!」という嘆きをよく耳にしますが、職場は出会いの場たり得ないのでしょうか。フランス人を母方の祖母に持つアメリカ人女性、ジェイミー・キャット・キャランが、国による職場恋愛事情の違いを浮き彫りにしながら、その女性観の違いに迫ります。
出会いの場はどこにあるのか?
フランスは狭い国です。国土の狭さと、人々に広く浸透している高等教育への傾倒ぶりを考え合わせると、多くのフランス人が学生時代に将来のパートナーに出会っているというのもうなずけます。子どもの頃から知っている相手と結婚するケースも珍しくありません。おたがいの家族が何世代も前からの知り合いだということもよくあります。特定の社会階層では、同じような階層の男女を引き合わせるためのパーティがひらかれることだってあります。
もちろん、すべてのフランス人がパートナーとそのようにして知り合っているわけではありません。でも、家族や友人、あるいは共通の価値観を通じて知り合うこのやり方は、社会構造の重要な一部になっているのです。これらのルートで出会いがなければ、仕事を通じて知り合うこともあるでしょう。そう、フランスでは職場恋愛も多く、しかもアメリカのように眉をひそめる人もあまりいません。それどころか、アメリカ人がセクハラに敏感なのを面白がっているふしさえあります。
あるフランス人男性から聞いた話ですが、アメリカに転勤になったとき、アメリカでは女性とエレベーターで2人きりになっちゃダメだよ、セクハラで訴えられるからね、と友人連中にからかい半分の忠告をされたとか。彼は誤解を与えないよう細心の注意を払い、職場で同僚女性に軽口をたたいたりしないのはもちろん、たとえほめ言葉であっても個人的なことには触れないよう気を遣ったと言っていました。
中性を目指すアメリカ女性、女であることを忘れないフランス女性
アメリカ人男性は、職場での女性との接し方にとても神経質です。人事部ににらまれるようなことは絶対避けたいので、男と女は違うものだという事実を徹底的に無視しようとします。職場では性別や性差という考え方を頭の隅に追いやり、女性を男性とまったく同じように扱おうと必死です。
アメリカ人女性にとっても、男女平等という法律はありがたいものです。男性と同じ仕事をしていれば同じ給料を払ってもらいたいし、プロとして、その能力を正当に評価してほしい。
でもその反面、自分たちの最も重要な部分――わたしたちは女性であり、男性とは違うということが、ないがしろにされているという矛盾した感覚もあるのです。
アメリカ人女性は仕事で認められようと努力を重ね、また認められるためには中性的な服装をすべきだと教えられてきました。というわけで、わたしたちが職場に着ていくのはパンツスーツなど、基本的に男性っぽいファッションです。そして夜、アメリカン・デートに出かけるときになってその反動が出てしまう。職場で女性らしさを押し殺しているぶん、デートには胸の大きくあいた超ミニのカクテルドレスに15センチのハイヒール、なんてことをやってしまうのです。
スイッチオンか/オフか、極端に走ってしまう。
これでは自分のためになりません。
フランス女性は、自分が女であるということをどんなときも忘れません。パリ5区の自宅近くを散歩しているときも、職場でミーティングをしているときも、自分が女性だという感覚はずっともっています。ピンクの花柄やフリル、レース、リボンなどから連想されるような女性らしさという意味ではなく、“女である”本質をちゃんとわかっているという意味においてです。
ビジネスに適したベーシックな服装にアクセサリーをひとつだけつけて、主張しすぎない範囲で女性らしさを表現します。おしゃれなブローチをつけたり、男っぽいジャケットにセクシーなスカートを組み合わせたりしてみる、スリムなパンツにハイヒールを履くなど、ほんの少し色っぽさを毎日のビジネス・ファッションに取り入れ、融合させるのです。
出会いの場としての職場を見直す
フランス女性は、オンか/オフか、白か黒か、という考え方はしません。「わたしはガチガチのビジネスウーマンよ!」でもなければ、「色気ムンムンのセクシーガールなの!」でもないのです。
だからといって、男性の女性に対する失礼なふるまいや、どう見ても不適切な言動が許されると言っているのではありません。職場での罪のない軽口や冗談はけっして悪いものではなく、会社生活をより風通しがよく、魅力的なものにしてくれるということを言いたいのです。
よく考えてみたら、職場でのあなたは、自分のいちばんいい面が出ているのではありませんか? 服装だってきちんとしているし、人からは能力のある、成熟した、しっかりした人間だと思われているのでは? 仕事関係で会う男性たちはどうでしょう?
仕事関係の男性からは、その人の本当の姿を観察することができます。上司や同僚との接し方。ストレスにはどうやって対処しているか。彼とはデートする関係ではありませんから、じっくり時間をかけてどんな人間かを見きわめ、先に進みたいかどうか決めればいいのです。さらに、職場という禁断の場所での恋愛や、それを秘密にしておかなくてはならないというシチュエーションが、ロマンスの炎をいっそう燃え上がらせてくれます。
ちょっぴりセクシーな格好で出勤したからといって非難されることはありません。フランスのテレビのニュースキャスター、クレール・シャザルは、毎晩8時のニュース番組に胸の谷間がはっきりと見える服装で出ています。「彼女は女性だ。女性だからバストがある。それを強調して何が悪い?」。フランスでは、女性のニュースキャスターはみな多かれ少なかれ胸の谷間を見せていますが、とやかく言う人は誰もいません。
※本連載は書籍『セクシーに生きる ――年を重ねるほどに、フランス女性が輝きを増す秘密』(ジェイミー・キャット・キャラン著、プレジデント社刊)からの抜粋です。
アメリカ生まれ。フランス人である母方の祖母のもとで育ったアメリカ人女性。書籍『セクシーに生きる』(プレジデント社)(http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=1067)は、リアルな告白エッセイとして高い評価を得、たちまちベストセラーとなり、10カ国以上で翻訳されている。ニューヨークタイムズ紙をはじめ多くの新聞雑誌に恋愛指南コラムを執筆するほか、ニューヨーク大学、エール大学、 UCLAでライティングの講座をもつなど、著作以外の活動も活発に行っている。マサチューセッツ在住、気象科学者の夫とともに暮らす。http://www.jamiecatcallan.com