今、働く女性の間でも、将来を見据えた投資への関心が高まっています。本記事では、元経済キャスターでファイナンシャルプランナーの資格を持ち、現在IG証券でマーケティングを担当しているあざみ陽子さんにインタビュー。最終回となる今回は、単にお金だけではない投資のメリット、またリスクとの付き合い方について聞きました。
投資を通じてニュースが身近になり、経済の動きも見えてくる
――忙しい日々の中でも、ツールを上手に使えば、時間や場所を選ばずに手軽に投資ができる。前回はそんなお話をうかがいました。「お金のリテラシーが実地で身に付く」ということで、実際に挑戦してみたいという読者もいると思います。あらためて、投資を始めることのメリットについて聞かせてください。
【あざみ】少額でも自分のお金を使って投資をしてみる。そうした行動は、自分のものの見方や考え方を広げたり、深めたりするきっかけになると思います。
金融にかかわる仕事をしていると、世界各国の経済や政治情勢と連動しながら、投資マーケットが刻々と動いていることを体感できる瞬間に出会います。そんなときは、自分の視野が少し広がったように感じますね。例えば、ある企業が画期的な新製品を開発したというニュースがあればその企業の株価が上がり、反対に不祥事があれば下がる可能性が高くなる。各国の要人の発言が相場に大きな影響を与えるといったことも……。
投資を始めることで、経済や企業のニュースが身近になり、世界の経済がつながっていることがリアルに感じられる。すると、そこから投資のヒントも見い出せるようになると思います。
チャンスをとらえ、リスクと上手につき合う
――実際に、「これから投資を始めたい」と考えている人に、知っておいてほしいことなどはありますか。
【あざみ】1つには、日本国内ばかりでなく、海外にもぜひ目を向けてほしいですね。今は新興国も含めた世界中の通貨や企業の株式、さらに貴金属や農産物といった商品まで、幅広い資産クラスに投資ができるチャンスがあります。
また、例えばニュースなどで日々耳にする日経平均やダウ平均などの「株価指数」に連動した銘柄へ投資すれば、各国の代表的な企業に分散投資する効果が期待できます。個別株と比べて値動きも安定しているうえに、日々の価格動向も把握しやすく、少額からの投資も可能なため、初心者に向いているかもしれません。
たとえ日本が不況になったとしても、世界に目を向ければ成長している地域や企業があります。そうした投資のトレンドにアンテナを張っておくことは、経済情勢への感度を高め、自分の仕事やキャリアに役立つことも少なくないはずです。
――それでも、「リスクが怖い」という人に改めてアドバイスはありますか。
【あざみ】貯蓄志向が強い日本人の間では、そうした思いを持つ人はやっぱり少なくないですよね。ただ、日本でも確定拠出年金を導入する企業が増えるなど、個人が自分で運用先を考えなくてはいけない時代になりつつあります。また、これから政府の目標どおりにインフレが進んでいけば、現金の価値が下がり、貯金も目減りしてしまいますから、何かしら対策をしておくことが大切です。こうした時代に、投資のスキルを身に付けていれば、きっと大きな力になるでしょう。
貯蓄が目減りする可能性があるように、リスクというものは何にでも存在していて、完全に排除することはできません。リスクを怖がるのではなく、うまくコントロールする方法を学んで、上手に付き合えるようになれるといいと思います。
投資と貯蓄の割合をあらかじめ決めておく
――具体的に、リスクと上手に付き合っていく方法があれば教えてください。
【あざみ】いざ投資をしようと決めたら、まずは「投資にいくら回せるか」を考えましょう。やみくもに投資するのではなく、貯蓄と投資の割合を決めておくと安心です。そのうえで投資対象を分散させ、例えば、8割程度は比較的値動きの安定した資産で運用し、残りの2割を値動きが大きく、リターンが期待できる商品に投資をしてみるのもいいでしょう。投資で利益が出たら自分の楽しみや学びのために使えば、きっとモチベーションもアップするはずです。
もう一つ、例えばもし、あなたが株式投資をしている場合なら、「株価がここまで上がったら利益を確定させる」というラインを決めておいて、その値を超えたら欲張らずに清算することも心がけたいですね。これは株価がマイナスの方向に動いたときも同じ。指定したレートになると自動的に清算する機能などを活用すれば、予想以上に損失が膨らむことを避けられます。最初から大きな利益を狙わずに、実践のなかで知識と経験を蓄えていくという気持ちで臨むことが、投資を長続きさせるコツかもしれません。
――まずは地道に投資を実践しながらスキルを身に付け、培ったスキルを再び投資に生かしていくという考え方ですね。
【あざみ】これからは、投資スキルが必須の時代がやってきます。それは決して言いすぎではないはずです。そして投資のスキルは、一度身に付ければ一生使えるものです。定年後、退職金などをもとに投資を始める人は多いですが、現役世代であれば失敗も学びに変えて次の投資に生かしていけますし、そのなかで学んだ経済の知識や情報を仕事に役立てることもできる。
実は、働き盛りの今こそ、スキルを磨く絶好のタイミングなんです。保険や貯金といった将来への備えも大切ですが、未来を見据え、成長のために前向きにお金を生かすことも、日々の暮らしとキャリアを輝かせるうえで重要だと思います。