現場で経験を積めないもどかしさ

最初から分かっていたことではありましたが、実際周りの先輩や同期が世界中の現場を飛び回っているのを見聞きすると、遅れを取っているような思いというかどうしようもない焦りが胸に湧いてきてしまうのには困りました。

国際石油開発帝石 技術本部 大竹真由さん

エンジニアとしてまだまだ未熟な時期ですから、一つでも多くの経験を積みたいのは当然です。この仕事では机上の計算で可能だと思っても、それを現場に適用させようとすると「そんなことできる訳ないだろう」と言われることも多いんです。だから、しっかりと現場の経験を積む必要があるのですが、それを思うように積めないことが正直つらかったです。

現場に行けない代わりに、その頃の私は机上の検討では誰にも負けないようにと心がけていました。現場からのレポートは必ず隈なく読み、分からないことは同僚にしつこく教えてもらう日々でしたね。

いま、私には3人の娘がいて、長女は中学生になっています。次女を妊娠中に東京の本社勤務になったのですが、子供が小さいうちは毎日が必死でした。同じ会社に勤める夫は新潟に単身赴任していたので、仕事に野心を抱くどころではなくて……。「いま子供が熱を出したらアウトだよな」という緊張感の中でずっと働いていたように思います。

例えば、ちょっとしたミーティングでも、前日や直前にそれが設定されてしまうと、今仕掛中の仕事の締め切りに間に合わない。「夜に仕事を回せばいい」という選択肢がなく、常に時間に追われているあの感覚は、当人でないとわからない感覚だと思います。

7~8割の出来を納得するしかない

でも、そのおかげで仕事に対する時間の使い方がとても効率的になったような気もします。

当時の仕事は、エジプトやベネズエラの油田の生産シミュレーションを行うというものでした。締切の期限から逆算してしっかりとスケジュールを立て、その通りに一つひとつの行程をとにかく地道にこなしていく。そして、明日に回せるものは明日にする。今日すべきことに集中するという癖がつきました。

それから育児と仕事を両立させるためにもう一つ大事だったと思うことは、一つひとつの仕事に過剰な完璧さを求めないという姿勢でした。7割~8割の出来でも終わらせざるを得ないとき、「もう少し時間があればもっと良い結果が出るのに――」と諦めることにはもちろん葛藤があります。でも、自分の中で納得するしかない。継続こそが力だと信じて、いまはそういう時期だという割り切る気持ちが、仕事を続けていく自分の気持ちを支えてくれたように思います。

もっと欲を出して仕事に取り組みたい

私が就職した頃と比べると、女性社員に関する当社の状況もずいぶんと変わってきました。今では毎年3~4人の女性エンジニアが当社に入社しています。石油開発業界は同業他社の人とも仲が良いところに特徴があって、子育てしながら働く同業他社の人たちと女子会をすることもあります。

また、以前アフリカのアンゴラ共和国のプロジェクトを担当し、現地にもたびたび出張していたのですが、海外の会社では井戸の掘削現場にも女性エンジニアがたくさんいますし、女性が活躍しているのを当たり前の光景として目にします。その意味では日本は遅れていますが、話をしてみれば、海外の女性エンジニアたちの関心も「家族と一緒に暮らせているか」「子供との時間をどう作っている」といったもの。皆同じ悩みを抱え、なんとかやりくりして会社で働いているんですね。

子供たちが大きくなってきた最近では、ようやく時間にも余裕を持てるようになってきました。目の前に与えられた仕事だけではなく、論文や教科書を読んだりするインプットの時間もエンジニアには必要です。そうした勉強の時間を作れるようになってきたので、もっと欲を出して仕事に携わっていきたいです。そして将来は、海外の現場での業務や、マネジメントの立場で油田開発に携わってみたいと考えています。

●手放せない仕事道具
計算機。単位表を張り付けてある

●好きな言葉
継続は力なり

●ストレス発散法
飲み会

大竹真由
1999年(旧)帝国石油入社。国内油ガス田の管理を経験の後、本社技術企画部に異動し、各種シミュレーションスタディを担当。アメリカ・アフリカ事業本部にてプロジェクト管理業務を経験の後、2015年より技術基盤ユニット教育研修グループマネージャー。