仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、新刊『決めた未来しか実現しない』が話題の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、連載第2回は「暗く悲しいニュースの受け止め方」に関するご相談です。
テレビ、新聞、ネットなどで流される暗く悲しいニュースには、どう接したらいいでしょうか? そのようなニュースは、今までできるだけ避けてきました。感情移入して、悲しさややり切れなさを感じた方がいいのでしょうか?
感受性の向きを決めるのは自分
【本田健さんの回答】
あなたは、感受性が素晴らしい方だと思います。そして、優しいので、周りの人の感情と共振しやすいタイプなのでしょう。なので、日常的に周りの人が辛そうにしていたり苦しんでいたり、悩んでいたりすると、自分も共感してしまうのです。そういった人を英語でエンパスと言います。満員電車やショッピングセンターなど、人混みにいると人あたりするのは、周りの人と自然に同調してしまうからです。
それは、世界の反対側で起きている事件に対しても同じです。災害で苦しんでいる人、悲しいニュースを見ると、切なさがあなたの優しい心にドッと押し寄せてきて、コントロールが利かない感じがしていると思います。
そのように感じるのは、あなたの心のアンテナが、より悲しみ、辛さ、苦しさに向いているからです。決して悪いわけではありませんが、習慣としてそうなっているのです。そしてそれは、人の痛みや悲しみを感じるという、素晴らしい才能でもあります。
でも、この世界には、うれしいこと、幸せなこと、楽しいことも起きています。あなたが、どの世界をより見たい、感じたいかという選択する力があるのを思い出してください。テレビを見ないようにしても、この問題の本質は変わりません。自分のアンテナをどちらに向けて生活しているのか、そしてこれからはどうしたいのか、今一度考えてみてください。
男性回答者プロフィール:本田健(ほんだ・けん)
作家。神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は2000万ダウンロードを記録。
代表作『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房刊)など、これまでに著書は100冊以上、累計発行部数は680万部を突破。
【本田 健 公式サイト】http://www.aiueoffice.com/
「知ること」が自分を守る
【河崎環さんの回答】
「無知は言い訳になりません。知り、考えなさい」。大学生時代の私が提出したレポートへの、アメリカ人女性政治学教授からのコメントでした。世界で起こっている悲劇に対して「知らなかった、衝撃だった」と上手く書けばいいだろう、と小娘だった私が高をくくって書いた短いレポート。彼女はそれを「初めて知った? だから何なのか。中身がない」とバッサリ切り捨てたのです。大人にとって、無知は恥じることであり、考えないことは怠惰である。彼女の言葉は、以来ずっと私の胸に残っています。
“ナイーブ”という言葉があります。英語でナイーブと言われたら、それは「未熟」という負の評価ですが、なぜか日本では「繊細」という良い意味で通っています。日本では無知を「世間知らず」と言い換え、純朴で汚れておらず、あまつさえ可愛らしいと読み換える。「可愛いからいいよ」と無知を放置したまま、体だけ大人になれてしまう。その結果、成熟した精神を持たない「お子様中高年」が跋扈(ばっこ)しているのかもしれません。
知るとは時に痛みを伴うものです。共感や共鳴で、自分の心も痛むのが人間です。暗い悲しいニュースをやたらと追いかけろとは言いません。ただ、知るとは怖いことではなく、むしろ知らないということこそ怖い。知恵が自分を守るのです。「避けてきた自分」を認識しているあなたの視界は、すでに開き始めています。人間の成熟は、恐れや怠惰と向き合うことから始まると戒めたいものですね。
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。