海外の旅行予約サイトが日本にも進出してきています。利用するときの注意点は。
2015年4月、米アマゾン・ドットコムは、運営サイト「アマゾン・ローカル」内で、ホテルの予約サービスを開始した。「アマゾン・デスティネーションズ」と呼ばれるこのサービスでは、場所を選択すると地図上にホテルの位置がプロットされ、目的地との距離感が把握でき、美しい写真で構成されたページは、旅へ行きたい欲求へ視覚的に訴える。今のところ対象地域は限定的だが、小さな民宿やB&Bなども多く取扱っており、旅行者とホテルの新たなマッチング手段となりそうだ。
こういったオンライン上でホテルや航空券などの旅行予約をする企業は、オンライン・トラベル・エージェント(以降、OTA)と呼ばれる。新規参入がある一方で、日本でも知名度が高い「エクスペディア」や、アゴダ、ブッキングドットコムなどを傘下に持つ「プライスライン」など既存の大手OTAは、各国に進出。競争も激しく、今年に入りエクスペディアは、「トラベロシティ」「オービッツ」という北米でメジャーなOTAを相次いで買収したことで話題となった。さらに、世界のOTAを横断検索して料金を比較できる「ホテルズコンバインド」などのサイトも存在感を増してきている。
OTA各社は日本のホテルの取り扱い拡大や、日本向け専用サイトの設置など、日本への進出も積極的だ。こうした海外の動きは、「じゃらん」「楽天トラベル」などの和製OTAに加え、新たな選択肢をもたらす朗報だが、気をつけたいこともある。
まず、海外に登記のある企業には、日本の旅行業法の適用は難しい。法的な規制が期待できない分、トラブルを防ぐためにも、旅行者自身が慎重に対応する必要がある。具体的にはサイトの信頼性を吟味すると共に、個別の宿泊手配について、税金・サービス料の取り扱い、前払いか現地払いか、決済通貨は何か、キャンセルは可能か、などをしっかり確認し納得してから手配したい。「予約が取れていない」「キャンセル操作がわからない」など万一の際、サイトは日本語でも問い合わせは英語のみというケースもあるので注意が必要だ。
グローバルなサービス展開が進むことによる問題は他にもある。例えば2008年米国で創業し、現在190カ国以上でサービスを提供する「エアビーアンドビー」。個人が所有する空室を旅行者に提供するCtoCのマッチングサイトだが、個性的な施設、ホスト(貸し手)との交流、あるいは価格の安さなどが付加価値となり、日本でも急速に市場を広げている。しかし日本では、宿泊提供をする際に、旅館業法に基づき設備を整え、許可を得る必要がある。ホストの中には、法律に基づいた対応をしないまま旅行者を受け入れるケースも多く、問題となっている。
サービスのグローバル化のスピードに法律が追いついておらず、法整備は急務だ。一方で、自己責任の姿勢が問われる時代でもある。2020年の東京オリンピック開催に向け訪日外国人が増加する中、特区に限り旅館業法緩和の動きもある。今後国内でも新しいタイプのOTAが生まれ、私たちも利用の機会があるかもしれない。リスクも頭にいれ賢く利用し、旅を楽しみたいところだ。
旅行ジャーナリスト。2001年サイトオープン時よりAllAboutのガイドに従事。「旅で元気になる」をモットーに各種媒体で情報提供を行う。