新居探しや住み替え時、悩みどころは「住まいの安全性」と「業者の選定」。ここ数年増えている自然災害は無視できないし、業者のトラブルも多いと聞く。知って得する不動産目利きのワザを“住まいと街のプロ”中川寛子さんがそっと教えます。

不動産会社そのものの、信頼性をチェック

メリットがあればデメリットもあるのが世の中。だが、不動産情報に関しては長らく、メリットばかりが語られてきた。情報開示が進み、ここ10年ほどで状況はだいぶ良くはなったが、それでもネガティブ情報はなかなか表に出てこない。とはいえ安全な不動産は、信頼のおける会社から、さらに納得して購入したいもの。今回は、一般の人が不動産周りの気になる情報を知るためのノウハウをまとめた。

一戸建てなどを地元の中小規模の不動産会社から購入する場合、その会社情報が少なく、「この会社、大丈夫かな」と思うことがある。そんな時に活用したいのが、平成19年から公開されている、その名もずばり「国土交通省のネガティブ情報等検索サイト」だ。

物件の建築業者、仲介業者などの信頼度は、国土交通省のサイトである程度調べられる。トラブルに巻き込まれる前に自衛ツールを駆使しよう。

ご存じのように宅地建物取引業を営むには、国土交通大臣または都道府県知事の免許が必要である。その免許業者の業務は宅地建物取引業法によって規制されており、法令違反があった場合には免許権者が行政処分を行う。その行政処分情報を公開しているのがこの「国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト」。宅地建物取引業者だけでなく、建設業者、マンション管理業者や鉄道、バスや旅行事業者など国土交通省が所管している業務であれば、過去の行政処分を調べることができる。

特に宅地建物取引業については、同サイト内で「都道府県知事が行った監督処分情報」(一部の県を除く)も公表されているので、併せてチェックすると、その会社が信頼できるかどうかの目安になる。

といっても、行政処分はされていないものの、顧客とのトラブルの多い会社などは存在するし、行政処分といっても軽微な内容もありうる。処分歴があることを意識しつつ、その会社が信頼できるかどうか、注意深くやり取りをチェックし、その上で購入を判断するのが賢明だろう。

不動産に関するネガティブ情報はココでチェック!
■国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト
http://www.mlit.go.jp/nega-inf/index.html
■都道府県知事が行った監督処分情報
http://www.mlit.go.jp/nega-inf/takken/index.html

自然災害関連は自治体ホームページと古地図をチェック

自然災害の多発する昨今、これから住まう場所の安全性は気になるところ。購入を検討するための事前調べは怠れない。その安全性を効率的に調べるツールの一つとして、地元自治体のホームページをフル活用したい。必ず見ておきたいのはハザードマップ。その土地で想定される危険に応じて作られており、多くの都市圏では地震、水害を対象として作られていることが多い。ホームページで閲覧できる自治体も増えており、簡単に確認できる。

ハザードマップの利用はもちろん、古地図に照らすと整地前の土地の様子がよく分かる。スマホでは、海抜を調べられるアプリも。住む場所の安全性はしっかりと把握したい。

この他、意外にヒントになるのが自治体の歴史、地名の由来である。ご存じのように地名はその土地の来歴を示すもので、“災害地名”(下記「地名があらわす災害の歴史」参照)ともいえる危険な地名があることが知られている。“地名辞典”を見るのが正攻法ではあるが、自治体によってはホームページで紹介しており、それを調べるのが手っ取り早い。地元に歴史博物館のような、郷土の歴史に関する施設があればそこに問い合わせてみる、訪ねてみるのも手。地域に詳しい学芸員がいれば、かなり深い情報が得られるはずだ。東京23区に関しては「公益財団法人特別区協議会」が特別区自治情報・交流センターという23区に関する資料を集めたスペースを作っており、有益な情報が入手できる。

また地図あるいは現地で、交差点や小学校、公園などの地名をチェックし、“危険地名”が含まれていないかを見るという方法もある。たとえばある通り沿いに●●橋という地名が複数あるとしたら、その通りは以前河川だった可能性があるし、公園に水由来の名称があるとしたら、それも疑ってかかろう。

こうした危険地名を発見した場合はもちろん、そうでない場合でも、過去の土地利用や状況を知ることは危険察知には欠かせない。そのために有用なのが埼玉大学の谷謙二先生が無料で公開している「今昔マップon the web」。現在と過去の、同じ場所の地図が左右で一度に見られるようになっており、過去の地図に置いたポインターが現在の地図に表示されるので、過去の池が今は宅地になっているなど、土地の変化が一目瞭然で分かる。地盤は弱くないか、液状化の心配はないかなど、古地図から懸念されるネガティブ情報を探ることができて重宝する。

街の土地に関するネガティブ情報はココでチェック!
■公益財団法人特別区協議会
http://www.tokyo-23city.or.jp/
■今昔マップon the web
http://ktgis.net/kjmapw/
■内閣府 政府広報 地名があらわす災害の歴史
http://www.gov-online.go.jp/cam/bousai2015/city/name.html

街の本性は掲示板から――犯罪情報は警視庁ホームページと防犯メールを活用

初めての街で、その街がどんなところかを知るためには掲示板、張り紙が手掛かりになる。当然だが、「●●をするな!」と書かれている場所では、周囲に迷惑をかける行為が繰り返されていることが分かるし、「フランス語で料理教室」などといった習い事の掲示がある場所には趣味にお金をかける余裕のある住民が多いことが分かる。自治体、町内会の掲示板のほか、マンションの掲示板、公園の張り紙なども見ておきたいところだ。

犯罪事情は東京都に限られるが、警視庁の「事件事故発生状況マップ」で調べられる。最近では万引き、公然わいせつなど犯罪の種類によっては発生した地点も表示されるので、それぞれの街でどこが危ないかもピンポイントで分かる。また、警察署によって統計、情報の出し方は異なるが、管轄エリアでの犯罪の発生状況を細かくホームページにアップしている署が増えており、それをチェックすれば、地域の犯罪事情は推察できる。

昼間と夜間では、人通りや治安ががらっと違う地域も。事前情報で住まう場所の安全性を確認しよう。

住みたい街として候補の街があり、早くからリサーチをしておこうと考えるなら、地元の防犯メールに登録、情報を集めておくという手もある。自治体、行政、警察署など発信元はさまざまだが、どのような情報を発信しているか、自治体、エリアを比較してみると意外に差があることが分かる。速報性、内容を比較してみると、自治体の危機管理意識が分かろうというものである。

「住まいの解説者」という仕事柄、多くの人から街や住まいの調べ方を聞かれるものの、確実な良し悪しを言いにくいのが学校の情報。街の掲示板や、学校の評判が書かれている教育系サイトはあるものの、主観が入りやすい内容だけに、全てを鵜呑みにするのは危険。具体的な記載があれば別だが、参考程度に捉えるほうが良い。もし、気になるようであれば事前に連絡の上、校内を見学させてもらい、雰囲気から類推してみよう。

街の犯罪情報・交通事故に関する情報はココでチェック!
■警視庁 事件事故発生状況マップ
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/annai/map_annai.htm
中川寛子
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。