入り方次第で保険料は大きく変わる
自動車保険が満期に近づいているという、友人のS恵。
我が家が保有するミニバンと同等クラスの車種で、お互い事故もなく等級は同じくらいのはずですが、保険料を聞いてビックリ。我が家の保険料が年間4万円弱なのに対し、S恵は10万円をかる~く超えているというのです。
「はぁ? どうしてそんなに高いの?」(私)
「え~! なんでそんなに安いの?」(S恵)
……というわけで、大差の理由を探ってみることにしました。
S恵が所有しているのは自家用小型自動車。新車で購入した際にディーラーを通じて自動車保険に加入し、以来、ほとんど見直さないまま毎年更新しているといいます。
我が家も新車購入時はディーラーで加入しましたが、2年目からはインターネットを介して加入する通販型自動車保険に切り替えました。さまざまな補償がパックになった保険とは異なり、必要な補償だけをチョイスできるリスク細分型。我が家は補償を絞り込み、保険料を大幅に安くすることができました。インターネット割引もあるので、仮に同程度の補償を確保したとしても、通販型の方が保険料は安いはずです。もちろん、保険会社が変わっても等級は引き継げます。そこでS恵と一緒に、ある通販型自動車保険の見積もりをネットでとってみることにしました。
運転者の範囲は保険料へのインパクト大
まずはS恵が持ってきた保険証券をチェック。な、な、なんと! 最初に驚かされたのは、「補償の対象となる運転者の範囲」です。
我が家の場合、マイカーを運転するのは我々夫婦で、時々友人に運転を任せることがある程度。このようなケースでは「運転者限定特約」とした契約にできます。
S恵も夫婦と友人しか運転しませんが、なんと、同居する子どもも運転できる契約になっていました。運転者限定特約が付いていないことで、保険料は大幅に高くなるはずです。
運転者の範囲には、本人、本人と配偶者のみ、本人と配偶者と同居する子、限定なし、などがあり、運転者が限定されるほど保険料が安くなります。
実際、どの程度の差が出るか、ネットで試算してみました。結果は表1のとおり。
補償内容が同じでも、運転手を限定するか、しないかで4万6000円以上も保険料が変わってくることがわかりました。
子どもが運転するのなら、運転手を限定することはできませんが、S恵の場合は運転免許を持った子がいないのですから、不必要に高い保険料を払っていたことになります。「ディーラーに任せきりできちんと確認しなかったのかも……」(S恵)と言いますが、みなさんにも同じような間違いが起きているかもしれませんから、要チェックです。
運転者の年齢も、限定なし、21歳以上、26歳以上、30歳以上、35歳以上などの区分があり、年齢が高いほど保険料が下がります(ただし最近は60歳以上の保険料が高くなっています)。
またゴールド免許の人はブルーの免許の人より保険料が安くなります。
S恵はブルー免許ですが、加入時にブルーだった人がそのまま更新し続け、ゴールド免許になっても変更していない、というケースもありそうです。もったいないですから、しっかり契約条件をチェックしましょう。
補償内容にダブリやムダはないか
補償内容も突っ込みどころ満載な感じです。
S恵が現在加入している保険の補償内容はほぼ表1のとおりですが、必要性の低い補償もありそうです。
たとえば事故によってケガをした場合の補償である「人身傷害」と「搭乗者傷害」。前者は実際にかかった費用や損害額が補償されるため、金額の確認や必要書類の準備などに時間を要し、すぐに保険金を受け取ることが困難です。対して、後者は症状によってあらかじめ決められた金額が迅速に支払われるため、当座の費用を賄うことができます。つまり、当面の費用を預金などで賄うことができれば、「搭乗者傷害」の必要性は低いといえます。
S恵の場合、搭乗者傷害を付けなければ保険料は1060円安くなります。
そのほか、ゴルフセットといった車の積載物の損害補償、外出先でのケガなどの補償、バッテリー上がりや脱輪などに対応してくれるロードアシスタントなど、さまざまな特約があります。どれも付けておきたくなりますが、別途、傷害保険に加入している、JAF(日本自動車連盟)に入会している、といった場合、補償が重複しないかを確認し、不要なものはカットしましょう。
ネット上で見積りができる通販型自動車保険では、補償内容をあれこれ変えることで保険料がどうなるかがわかるものメリットといえます。
車両保険が悩みどころ
私自身もつい最近、自動車保険を更新しましたが、悩んだのは、車両保険をどうするか、です。
車両保険は、車同士の事故などで自らのクルマが負った損害をカバーするものです。補償内容を絞ったエコノミー型と、当て逃げなども補償される一般型と呼ばれるタイプがあります。
補償額は車種や経過年数などによって上限が決められているほか、事故の際に一部を自己負担するかどうかや自己負担する額などによって保険料が決まります。
購入から間もない時期では、クルマがダメージを負うとショックも経済的負担も大きいため、車両保険に加入しましたが、5年が経過し、「多少、傷が付いても修理せずに乗ればいいか」「ある程度、減価償却もしている」という思いも。
また、事故などで保険金を請求した場合、翌年からは等級が下がり、保険料が高くなります。自動車保険の制度が変更になり、昨年からペナルティが厳しくなって、事故内容に応じて高い比率で、長期間、保険料が高くなることもあります。
ちなみに、保険料支払い対象になる事態になった際にも、事故の程度によっては保険金を受け取って翌年から保険料が値上げされるより、保険金を受け取らずに保険料が高くなるのを避けた方がトクになる可能性も。もしものときには、保険会社にどうすべきかを相談したほうがいいでしょう。
そのようなことからかなり悩んだのですが、結局、車両保険は継続しました。理由は2つ。ゲリラ豪雨や台風による水災が気になったこと。もうひとつは、万が一、廃車になった場合に、新たに車を買うために予定外に貯蓄を減らすことは避けたかったからです。
ただし、保険金額は最小限、自己負担額は最大の20万円・20万円(1回目の事故でも20万円、2回目以降も20万円までは自己負担)にして保険料を抑えました。
補償を絞れば保険料は大幅ダウン
さて、S恵はどうするか。
補償を絞り込んで見積りをすると、表2のような保険料になりました。車両保険を付けると3万3900円、車両保険なしでは2万5570円です。
整理すると……。
(1)運転手を限定せず、補償もたっぷり……約10万7000円
(2)補償はそのまま、運転手を限定……約6万1000円
(3)補償を整理し、車両保険も縮小……約3万4000円
(4)補償を整理し、車両保険はなし……約2万6000円
……ということになります。
車両保険を付けても、(1)の3分の1まで保険料がカットできます。
「しっかり考えれば保険料が安くなるのね」と、S恵。そのとおりです。だいぶ節約できそうだから、少し奢ってもらってもいいですよね?
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。