26人中、女性は1人

ところで、この仕事をしている3年間の中で、数えきれないほど聞かれたのが「どうして道路の会社に来たのか」という質問でした。

NEXCO東日本 湯沢管理事務所 高麗 藍さん

実際に会社には女性の技術職が少なく、ここ湯沢管理事務所では26人中で私だけ。上司は初めて女性の部下を持ったということでした。施設系エンジニアの女性総合職の採用が始まったのが日本道路公団が民営化されてしばらく経ってからなので、まだ10年も経っていないのです。

私は大学院では気象学を学びました。その中で雨の研究をするために、インドやバングラディッシュに何度か行く機会があったんです。

そうした国の地方で雨量計による観測をしていると、周囲にはまだまだ道路がないし、整備もほとんどされていません。砂埃が立つ道をひたすら車で走って、ようやく目的地に辿りつく日々を送っていると、道路というのが人の生活にとってどれほど大事なものかを実感しました。就職活動で進路を考えたとき、NEXCO東日本がインドの高速道路事業にも参画していることを知り、そうした道路に関係する海外事業でいつか働いてみたいと思ったのが、この会社に来た大きな理由の1つでした。

ただ、実際に入社してみると、これほど女性のエンジニアが珍しがられるとは思いませんでした。とくに建築工事の現場などに行くと、現場の親方に「小娘は黙っとけ」と言われたりすることも。電話に出ても「社員に変わってください」と言われることが多くて、社内からも社外からも、この会社は男性の職場だというイメージが強いですね。

でも、そうしたイメージも今後は変わっていくと私は思っています。「女は口を出すな」と現場で言われるのも、男性社員が「新人は黙っていろ」と言われるのと同じこと。いちいちめげたり泣いたりしていては、前に進めませんから。明るくきちんとした仕事をすることで、だんだんと事業の一員として認められていくことは、男も女も変わらないと思っています。

自分の世代が道をつくっていく

そんななかで意識しているのは、自分たちの世代がこの会社の中では、まだ女性エンジニアの道を作っていく立場であるということです。私はこの春に結婚したのですが、今後、出産や育児のことを考えると、転勤も多いので不安になることもあります。

でも、同じ施設担当の女性で産休や育休を取っている先輩もいるので、そうした方たちをモデルにしながら、社内の制度の活用の仕方を工夫して、仕事と家庭を両立させていくやり方を自分で作っていきたい。そうすることによって、もっと女性の技術職が働きやすい職場環境が自ずとでき上がっていくことを期待しています。

そのためにも今は勉強の時期ですね。関越トンネルを維持管理しているこの湯沢管理事務所は、雪も降れば、設備の老朽化問題や最新の技術にも触れられる勉強になる事務所。新入社員にとって打ってつけの職場だと言われているんです。

最初の配属先では新人でも、次の職場ではもう新人扱いはされません。エンジニアとして大切なこの時期に湯沢に来られたことは、本当に幸運だったと感じています。

●手放せない仕事道具
ヘルメット、安全靴……現場に出るときの必需品。

●趣味
農作業

●好きな言葉
挑戦

高麗 藍(こうま・あい)
2013年、京都大学大学院理学研究科を卒業後、東日本高速道路入社。同年6月に湯沢管理事務所に配属され、現在に至る。