2015年度に入って急に発売され始めた「プレミアム付き商品券」って何?

2015年度に入った5月頃から、多くの自治体で「プレミアム付き商品券」が次々と発行されているのをご存知でしょうか?

「プレミアム付き商品券」とは、販売金額に一定のプレミアム分(2~3割程度)を上乗せした商品券。

例えば、1万円払って購入した商品券の額面は、1万2000円や1万3000円になり、支払った金額よりも高い金額(プレミアム)分の買い物ができるのです。地元消費の拡大、地域経済の活性化のために自治体が発行するものなので、利用有効期限が購入後数カ月間と短く、利用できる店舗は地元の商店や飲食店などに限られます。プレミアム分がついておトクなため、1人当たりいくらまでと購入制限を設けたり、その自治体に住んでいるか、働いている人に限定して販売している自治体もあります。

なぜ2015年度に、「プレミアム付き商品券」がこんなにたくさん発行されているのでしょうか?

9月までに9割超の自治体が「プレミアム付き商品券」を販売

これは、2014年度補正予算に盛り込まれた地方の消費喚起などを目的とする交付金「地域住民生活等緊急支援のための交付金」を活用した事業が、2015年度に入って始まったためです。この交付金のうち地域消費喚起・生活支援の分野には約2500億円が充てられ、そのうち1564億円が「プレミアム付き商品券」の予算として各自治体に分配されています。

今年度はこの特別予算がついたため、全国の自治体の約97%が参加を表明し、「プレミアム付き商品券」をそれぞれ発行しているのです。

「プレミアム付き商品券」は、5月頃から多くの自治体で発行されているので、「すでに購入した」、「使った」という方もいらっしゃるかもしれませんし、「買いたかったのに売り切れていた」という方も多いでしょう。

2015年8月17日に内閣府が発表した調査結果では、「プレミアム付き商品券」の対象事業数2120事業のうち、約4割が4~6月期にすでに販売を開始、7~9月期には9割超が販売を開始する予定です。

即効性を期待されているため、利用期間は数カ月間。使い切れる分を購入して

私が住む東京都国分寺市も、8月28日から「国分寺市プレミアム付ぶんじ商品券」というものが発行されます。

いつも買い物をする駅前の八百屋さんも商品券の販売所、利用可能店舗になっていて、先週、店頭でチラシを見つけました。6000円分(500円券×12枚綴り)を5000円で販売するというから、20%のおトク。今の銀行の普通預金金利0.02%と比較してみると、1000倍もおトク。商品券と預金なので、単純には比べられませんが、どのくらいおトクかということはご理解いただけるのではないでしょうか。

1人当たり10万円(20冊)までが購入限度額で、市内金融機関や市役所、地域の販売店で購入でき、利用有効期間は、2015年8月28日~2015年12月31日です。利用できる店舗は、地元の商店や飲食店、美容室や工務店、自動車販売会社、スーパー、コンビニなど多岐に渡ります。切手、印紙、ギフト券など換金性の高い金券や公共料金の支払いには利用できないことと、つり銭が出ないことが注意点です。

日常の買い物や食事、美容院代、やろうと思っていたリフォームや車検にも使えるので、確かに何冊か買っても使えそうです。しかし、有効期限が約4カ月しかないので、その間に使い切れる程度の金額分を購入しないと、かえってムダになってしまいます。

「プレミアム付き商品券」の発行で期待されるのは、商品券を購入することで、日頃買わない高額商品など(たとえば家電・家具の購入や旅行へ出かけるなど)の購入を検討してもらうことと、今回の経験から地元で買い物をするよさを再認識してもらい、それ以降も地元の商店を利用するようになってほしいということです。日頃消費しているものを商品券で購入するだけでは効果がありません。それ以上の消費を喚起するために、プレミアム分をつけておトク感を出しているのですから。

「プレミアム付き商品券」のおトク度と問題点

「プレミアム付き商品券」のプレミア率や購入単位、販売方法などは、自治体ごとに違います。

熊本県が発行した「プレミアム付き旅行券」、「くまもっと楽しむ旅行券」は、2500円で5000円分の阿蘇郡市内の宿泊費に使えるという50%のプレミア率で、7月に販売を開始し、すでに完売しています。

大阪市など、子育て世帯に優先購入権を設ける自治体もありました。

神奈川県湯河原町は、「湯河原温泉お座敷券」というユニークな企画を実施。8月1日から、温泉宿で芸者を呼んだ際のお座敷代に使える商品券を1万5000円(2万円分使える)で販売しています。

「プレミアム付き商品券」は、期間限定でおトクだから人気も高く、東京都では、販売を取り扱う信用金庫の職員が事前購入したり、顧客に優先販売していたことが7月に発覚し、ニュースでも話題になりました。また、販売窓口で先着順ということになると、高齢者や子育て世帯は並んでまで購入することができず、不公平なのではないかという声や、ネット販売のみでは、ネット環境が整わない高齢者が購入できず不公平だという声も。

逆に人気がなくて売れ残る「プレミアム付き商品券」もあります。理由は、使える範囲が狭い、往復はがきでの申し込みのみで手続きがわずらわしいなど。実際の「プレミアム付き商品券」の運営は地元の商工会などに委託されるので、利用できるのはそこに加盟している地元の商店に限定される場合がほとんど。また、販売所の近くの人だけが買いやすいという不公平をなくそうと往復はがきの申し込みのみにするなど、工夫をしたことが人気低迷の理由となっている自治体も。

人気のポイントは、プレミアム幅(どのくらいおトクか?)と使える場所の汎用性(買った後の使いやすさ)と、商品券そのものの購入しやすさにあるようです。

自分の住んでいる自治体では発行されないのか、いつ発行されるのか、ホームページや市の広報誌などで情報をチェックしてみてください。すでに自分が住んでいる所では販売が終了していたら、近隣の自治体で居住者でなくても購入できるものがないか調べてみましょう。ただし、確実に使えるものにしないとかえってソンになります。事前のネット申し込み、ハガキでの申し込みという自治体もあるし、販売が始まったら売り切れるのも早いと思われるので、まずは売り出し前に情報を知っておくことが大事です。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。