隣家からの延焼も自分の火災保険を使う

9月1日は防災の日。もしものときに家族でどう連絡を取り合うかなどに加え、火災保険についても確認しましょう。

住宅ローンの借入時に加入したなど、慌ただしい中で火災保険に加入することが多く、補償内容についてよくわかっていない人がほとんど。たとえば、ゲリラ豪雨などの自然災害による損害も火災保険で補償されることを知っていますか?

どんな損害が補償されるのか、みていきましょう。

まずは火災。自宅が火元になって火事が起きた場合はもちろん、隣家からの延焼で火災に遭った場合も、自身が加入した火災保険で補償を受けることになります。故意で火災を起こした場合などを除き、火元に損害賠償を請求することはできないので、延焼被害でも火災保険に入っていないと大変です。

火災保険は建物と家財、それぞれ契約が別になっており、建物分しか保険をかけていない例もあります。テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなどの電気製品、リビングやダイニングの家具など、すべてを買い替えるとなると、かなり高額になりますから、家財の補償が付いているか、確認しましょう。

火災保険は自然災害も補償

火災保険は火事以外にも、風水害など、自然災害によって受けた住まいの損害も補償します。

台風、暴風、ここ数年で耳にすることが多くなった竜巻も火災保険で補償されるのが一般的ですが、保険証券を見てもよく分からない場合は保険会社に確認しておくと安心です。

ゲリラ豪雨や土石流などの水災の補償の有無もチェック。また補償の内容も契約によって異なり、保険金額(原則的には、同じ水準の建物を再建するのにかかる金額で設定)全額は補償されないものが多く、自宅を再建する際に費用の一部は別途、用意しなければなりません。

雹や雪による損害も、火災保険で補償されますが、補償内容は契約によって異なります。

落雷によるテレビやパソコンなどの家財の故障なども多くの火災保険で補償されますので、請求漏れに気を付けましょう。

地震保険は入った方がいい

地震、噴火、津波は火災保険では補償されず、それらの損害に備えられるのは地震保険です。

噴火の危険も気になりますし、地震が多いのは言うに及びません。耐震性が高くても地盤に問題があれば絶対とはいえませんし、地震を原因とする火災は火災保険では補償されません(地震保険の対象です)。

よくよく知っておきたいのは、地震や津波で自宅を失ったとしても、返済中の住宅ローンはそのまま残る、ということです。

失った自宅のローンを払い続けるのは精神的にもつらいですし、借家住まいをすれば住宅ローンの返済と家賃との二重負担となります。返済に家賃が加わっても、あなたの家計は大丈夫ですか?

地震保険で契約できる保険金は火災保険の保険金額(自宅を再建するのに必要な金額)の半分までという制限があるものの、半分であっても、あるのとないのとでは大違いです。

もちろん、我が家も加入しています。

地震保険は火災保険とセットで加入するものなので、加入したい場合は、火災保険を契約している損害保険会社や代理店に連絡してください。

地震保険は国が関与する公共性の高い制度で、内容や保険料はどの保険会社で入っても同じです。一部で地震保険は高いという声もありますが、損害保険会社には利益が生じない仕組みになっており、保険料は地震のリスクに応じたものであることを知ってください。

10月に保険料改定。大幅アップの地域も

自然災害による被害が増えたことなどにより、火災保険は2015年10月から大幅に改定されます。九州や沖縄では3~5割程度引き上げられる地域があったり、東京や大阪の一部地域では引き下げられるなど、地域によって改定の内容は異なります。

まずは現在加入している火災保険の内容を確認し、補償内容に不安がある場合は入り直すことも含めて検討するとよさそうです。契約が残っている場合は、残りの期間分の保険料から一部、手数料などを差し引いた額が戻ってきます。

最長10年の契約が可能ですから、保険料が高くなる地域であれば、値上がりする前に契約したいところです。(改定前はもっと長期の契約が可能でしたが、最長10年になります)。

また地震保険の保険料も2017年1月から全国平均で2割近く上昇する見込みです。最長5年契約が可能ですから、5年契約を検討するといいでしょう。

災害に遭うと保険証券を失ってしまうこともありますが、契約の有無や内容が分からない場合、損害保険協会が「自然災害損保契約照会制度」により調べてくれます。

補償内容を把握していないと、まさかのときに保険金を請求することができませんから、しっかり点検しておきましょう。

親戚やお友達が被災した際には、「火災保険で補償されない?」「証券がみつからないなら調べてくれるよ」の一言を。とても喜ばれるお見舞いになると思います。

フリーライター 高橋晴美(たかはし・はるみ)
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。