Love Fashion. Love Shose. Hate Heels!
おしゃれ大好き。靴大好き。ハイヒール大嫌い。ロンドンの人気ファッションエディター・ハンナが書いた“ぺたんこ靴”のバイブル『フラットシューズ宣言』を、おしゃれとお金の賢い関係を綴った『ケチケチ贅沢主義』の著者・muccoが初翻訳。
どんなシーンにも合って履き心地抜群、ストレスフリーな靴が大集合したこの書籍からの抜粋を、ちょい読み版としてご紹介。PRESIDENT WOMAN Online描き下ろし&撮り下ろし、ハンナの最新お気に入りシューズもレポート!

Introduction

『フラットシューズ宣言』著者ハンナ・ロシェル(Hannah Rochell)。ファッション誌「InStyle」の看板編集者として活躍。(撮影=プレジデント社)

はじめまして。わたしはハイヒールを履かないファッションエディターのハンナ・ロシェル。この本は、スタイリッシュなぺたんこ靴ばかり紹介しているわたしのブログ(EnBrogue.com)から生まれました。わたしはもともと男の子っぽいタイプで、ハイヒールは苦手だったのですが、ファッション関連の仕事に就いたのだし、と無理をしてハイヒールを履いていました。その結果、自分らしさをすっかりなくし、いやというほど転ぶはめになりました。

持っているハイヒールを処分して自由になろう! と決心したまさにその瞬間のことは、いまでもはっきりと覚えています。その日は雨でした。ピエール・アルディとGAPがコラボレーションした、グリーンスウェードにシープスキンの裏地付きプラットフォームブーツを履いた私は、ウォータールー駅で電車に乗り込もうと猛ダッシュ! そして思いきり派手に転倒。「たいへん! あなた、その素敵なブーツでつまずいちゃったのね!」と、女の子が叫びながら助けに来てくれました。そんな大恥をかいて、しかも膝のひどい痛みに耐えてまで履く価値のある靴なんてない――。わたしはハイヒールとはきっぱり別れることを決心し、1足残らず友だちにあげるか、チャリティーショップに寄付しました。

女性は「攻め」のヒールを履かなければ美しくなれないというわけではありません。わたしにとって、フラットシューズは快適でありながらスタイリッシュ、WIN-WINの関係になれるパートナーなのです。

ロンドンファッションウィークで履いていたフラットシューズの画像をインスタグラムに投稿したことがきっかけで始まったわたしのブログ、En Brogueには、ぺたんこ靴好きの人たちがどんどん集まってきました。その日以来、わたしは文章を書き、イラストを描き、フラットシューズについてひっきりなしに更新しています。ファッションが大好きだけれどハイヒールは苦手というあなたにも、きっとこの本を気に入ってもらえることでしょう。スタイリッシュなフラットシューズ万歳!

Ballet pumps (バレエパンプス)

French Sole(フレンチソール)

ゼロ年代に入ったころのこと。ハイヒールにうんざりしながら、紐靴ではないもっとフェミニンな靴を求めている女性たちの願いを叶えた靴がある。バレエパンプスだ。人気の火付け役はケイト・モス。彼女はシンプルなルーズフィットのトップスとスキニージーンズにバレエパンプスというスタイルだけで、3年間くらい通していたんじゃないかしら(スキニージーンズというのもフラットシューズ同様、「隠れた需要」が最近になって顕在化した)。

お誕生日会におよばれした8歳児のようにならないためには、バレエパンプスは細身で足指のまたが少し見えるくらい履き口が浅いカッティングが理想的。その点ではケイト・モスも愛用しているフレンチソールのバレエパンプスが、ずばぬけて脚をきれいに見せてくれる。ハイヒールに負けないくらいの美脚効果、といってもいいくらい。

Jesus sandals (ジーザスサンダル)

Havva(ハヴァ)のAthena

わたしが「ジーザス(キリスト)サンダル」と呼んでいるのは、伝統的なタイプのレザーサンダルのことだ。伝統的というのは、とんでもないくらい昔からあったという意味。古代ギリシャ、古代エジプト、ローマ時代の人々が履いていたサンダルは、履き心地がよくてシンプルなため、いまも人気がある。しかも大量の皮革を使わずに作ることができるので、時代を超え、社会的地位や貧富に関係なく、あらゆる地域のあらゆる人々に愛されている。

エンシェント・グリーク・サンダルは私の好きなブランドだ。2012年に発表されたここのシンプルなレザーサンダル(言うまでもなくギリシャ製)は、大ヒットとなった。写真はハヴァのサンダル。ふつうだけどクラシックなスタイルが気に入っている。

adidas Stan Smith (アディダススタンスミス)

adidas Stan Smith (アディダススタンスミス)

1972年、アメリカ人テニスプレーヤー、スタンレー・ロジャー・スミスがウィンブルドンで優勝したときに履いていたのがアディダスのテニスシューズ、ロバートハイレット。フランス人プレーヤー、ハイレットにちなんで名づけられた靴だ。でも当のハイレット選手は、不運なことにグランドスラムで1勝もできなかったうえ、“スタン・スミス”ほど響きのいい名前でもなかった。ということで、ウィンブルドンでのスミス選手の功績を讃え、アディダスハイレットのモデル名はスタンスミスへと変更された。

この控えめな白いテニスシューズが売り上げ4000万足を超えるベストセラーとなったのは、当然といえば当然だ。すっきりとしたデザインは、コート上で洗練されて見える(特にウィンブルドン規定の白いウェアと合わせると)だけではなく、スポーツの世界からいとも自然にファッションやストリートスタイルに取り入れられていった。この成功は、必要最小限のデザインによるところが大きいと思う。すっきりと並んだ通気穴で3本線のアディダスストライプを表現し、1カ所にだけアクセントカラーがある(わたしの一押しはイラストにあるようなグリーン)。そして、どんなタイプのワードローブにもすんなりと溶け込む。

ヒップホップのジャージは? ……〇
 ピンストライプパンツは? ……〇
 ペンシルスカートとカシミヤニットは? ……◎

デヴィッド・ボウイからファレル・ウィリアムスまで虜にしているのも、当然といえば当然だ。

Derbys(ダービー)

ハンナ:Clarks(クラークス)のHotel Image
夫:Clarks(クラークス)のDerby Desert

ダービーは同じようなフォーマルな紐靴のオックスフォードと似ているため、よく間違えられる。両者を見分けるには、ヴァンプと呼ばれる甲の前部、そして靴紐を見るといい。ダービーは「外羽根式の靴」とも呼ばれ、ハトメ穴のある2枚の革がヴァンプの外側から縫い付けられている。ということは、ヴァンプの内側に縫い付けられている内羽根式のオックスフォードよりも履き口が大きく広がるのだ。加えて甲部分の調節ができるためフィット性も高く、履いたり脱いだりしやすい。

形やサイズ、ブローグの有無など、ありとあらゆるダービーが存在する。冒険心あふれるわたしの夫は、写真のような品のよいブローグと、取り外し可能なフリンジ付きのおしゃれなダービーを持っている。わたしが履いているダービーは、切り込みのおかげで風通しがよく、足元爽快。夏の装いに最適だ。

(以上、書籍『フラットシューズ宣言』より抜粋)

著者:Hannah Rochell(ハンナ・ロシェル)
ファッション誌『インスタイル』の看板編集。ファッションジャーナリストとして7年以上の経験を持つ。フラットシューズのファンが集まる彼女のブログ、EnBrogue.comが話題となり、これまでにBBCラジオ、ガーディアン紙、タイムズ紙、サンデータイムズマガジン、オンライン版レッド、オンライン版ルックなどにとりあげられた。
訳者:mucco
おしゃれと節約の両立を実践した生活を綴った人気ブログ「ケチケチ贅沢日記」を主宰。2013年に出版した初の書籍『ケチケチ贅沢主義』がベストセラーに。経済紙、女性誌をはじめ多くの媒体でとりあげられる。AFP、2級FP技能士。現在は派遣ときどき専業主婦。
『フラットシューズ宣言』
(ハンナ・ロシェル著 mucco訳 プレジデント社刊)
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