市議会議員は主婦に向いている
実際に市議として働くようになって実感したのは、市議会というのは専業主婦や私のような子育て世代の女性が活躍できる場所なんじゃないかということでした。というのも国政や県政と比べて、市政は目の前の生活を本当に小さなことから、一つひとつ変えていく仕事だからです。
例えば、私たちが日常的に進めていく仕事には、「この道の側溝が壊れていた」、「予防接種を無償化して欲しい」「子供の登下校時の安全対策はどうすべきか」、ときには「カラスがゴミを漁っているからネットをかけてほしい」といった本当に具体的な声を、市政に届けるものであることも多いんですね。
日々の生活の中で自転車に乗って町内を動いていたり、子育てやPTAなどの活動をしたりしている主婦は、街の変化に敏感です。そこにある課題も実感としてよく知っている。そのような女性たちが議会に入り、市民生活を変えていこうとすること。それは街にとって大いにメリットがあることだと思うんです。
私が現職議員として妊娠・出産して議会を休んだ際、他の議員や市民の方々からも一定の批判がありました。育休制度がそもそもないので、休んでいる間も議員報酬は減額されないんです。そのため「税金泥棒」だという声もありました。
でも、議会という場所には本来、多様な人間がいるべきなのではないでしょうか。浦安市には障がい者のお子さんを持つ議員さんもいらっしゃいますが、その課題について語るときの発言には、やはりその人でしか語れない重みとリアリティがあります。同じように私のような人間がいなければ、産前産後の女性や、小さな子どもを持つ母親の悩みや声は政策に反映されにくいでしょう。
女性が参加しやすい議会へ
1つ身近な例をあげると、浦安市の公的な施設内には今現在も、授乳室があまりありません。市は母親が外に出やすい環境をつくろうと様々な施策を打ち出していますが、対象となる母親は2時間から3時間ごとに授乳するわけです。にもかかわらず肝心の授乳室がないというのは、支援のあり方を机上で議論していたからでしょう。
幼稚園や保育園でママ友たちと交流していると、「そうはいっても授乳室が欲しいよね」という市役所には届いていなかった声を普段の会話の中で聞くことになります。それは実際に部屋そのものを作らなくても、まずは空いている会議室に張り紙を1枚貼ったり、簡単なパーテーションを置くだけでも対応できること。市議とはそれらの声を市政に届けるパイプ役であるわけですね。
だからこそ、今後、女性が参加しやすい議会をつくろうとしていくことは、女性進出の端境期に議員となった私に課せられた1つの役割だと思っています。出産が「事故」と言われるような場所に、若い女性が積極的に来ようと思うわけがありませんから。そしてなにより、私は街の具体的な変化に携われるこの仕事が好き。自分の役割を自覚しながら、さらに街を良くするために前へ進んでいきたいと思っています。
●手放せない仕事道具
抱っこひも。保育園が開園していない土日に式典やイベントに参加する際は、8カ月の子どもを背負って参加することも。料理など家事をするときも必需品。
●ストレス発散法
娘たちと遊ぶこと。一緒にお風呂に入って寝るまでの時間が至福のひととき。
●好きな言葉
If you haven't cried, your eyes can't be beautiful.(もしあなたがこれまで泣いたことがないとしたら、あなたの目は美しいはずがないわ)イタリアの女優、ソフィア・ローレンの言葉。
岡野純子(おかの・じゅんこ)
1978年、京都府生まれ。同志社大学文学部卒。NHK松山放送局に入社し、アナウンサーとしてニュースやリポートを担当。2011年、民主党公認で浦安市議会議員に初当選。2児の母。