今年も大学のセンター試験が終わり、入試シーズン本番を迎えています。受験生をお持ちの保護者の方々、お疲れさまです。志願先を決定し、不備のないように願書を書き、受験料を払い込んで期限内に提出。当日にインフルエンザで高熱が出たり、大雪で交通マヒにならないか……、そして、晴れて合格した後には入学金の支払いや入学手続きなど、心配事は多々あり、進学先が決まるまでは落ち着かない日が続きますね。

子ども1人を大学進学させるにはどれくらいのお金がかかるのでしょうか? うちも長男が現役で一昨年、浪人して昨年と2年大学受験を経験しました。平均的なデータとしては、文部科学省の各種データや、日本学生支援機構の「学生生活調査」、全国大学生協連の「学生生活実態調査」などがあります。しかし、今回は、「うちの場合」に限定してご報告しようと思います。ひとつの例としてご覧いただければ幸いです。

さて今回は、高3~浪人~大学1年までの費用を考えてみました。順を追って整理すると、うちの場合は次の5つの費用がかかりました。

[1]高校3年時に通った塾の費用
[2]高校3年時の受験費用
[3]浪人1年間に通った予備校の費用
[4]浪人時の受験費用
[5]大学の入学金と授業料

高3現役生に人気の映像授業の塾の費用

書き出しただけでも気が遠くなります。まず[1. 高校3年時に通った塾の費用]は、合計56万5000円。高3になったときに長男が「河合塾マナビス」という塾に通いたいといってきました。林修先生で有名になった東進ハイスクールと同じように、映像授業を行う塾です。ディスプレイのあるブースに1人で入って、ヘッドホンを付けて授業映像を見て勉強するシステムです。アナログ世代の私には、何だか抵抗がありました。生身の先生が決まった時間に教室で教えてくれるのではなく、いつ行ってもいいようなシステムでは結局、行かなくなるのではないかと危惧しました。また、周りの友達と一緒に勉強することでモチベーションが保てるのに、1人で受ける映像授業ではそれができません。1人で黙々と勉強ができるタイプの子ならいいのですが、そうではないということは知っていますし……。

ところが、長男がいうには「今は映像授業のほうが現役生には人気がある」とのこと。理由は、授業や部活などで時間通りに塾に行ける日ばかりではないので、自分が行ける時間にいつでも受けられる映像授業が効率的なのだそうです。塾の説明を聞きに行き、私の心配を担当者に伝えると、映像授業のあとには習熟度が試されるペーパーテストが毎回あり、8~9割以上理解していないともう1度受けさせられること、次回のブースの予約をとってから帰るので、そのあたりはフォローできるというのです。

本人に「本当にちゃんと行くのね」と念を押して、塾の費用を払いました。システムとしては、入塾時の事務手数料5000円に、英文法レベル3・4(90分授業×30回)で10万8000円、私大英語(90分授業×20回)7万2000円、これに現代文レベル3・4、古文レベル3・4、古文文法、ハイレベル日本史B、難解私大日本史演習など、講座ごとに料金が設定されていて、まとめて買う仕組みです。

私立文系で、試験科目が3教科だったにも関わらず、学習の習熟度と目標校の間に乖離があったためか、最初に40万円程度払った記憶があります。ある程度進んだら、直前対策などの講座にさらに10万円くらい払いました。ほかにも、毎月5000円の学習サポート料がかかりました。映像授業でわからないことがある場合は、サポートしてくれる先生に聞くことができる仕組みです。これが1年分で6万円。

[1]の合計56万円5000円を12カ月で割ると、月に4万7000円。一見高いようですが、月払いの塾に通いつつ、夏期講習や直前講習などにも行くことを考えると、トントンのような気もします。3月いっぱいは、その年度にとった授業は繰り返し受けられるので、思い切り活用できる人には、おトク感があるかもしれません。

うちは……。最初こそまじめに通っていたようですが、後半は、なんだかんだと言い訳をして、あまり通っていたようには見えず、おトクな感じはしませんでした(わかっていたことですが)。

チャンスが増えて受験料がやたらとかかる最近の大学入試事情

[2. 高校3年時の受験費用]は、合計21万1000円。内訳はセンター試験検定料1万8000円、センター利用受験料(私立文系)1万8000円×1校、私立文系一般入試受験料3万5000円×5校で17万5000円。

だいたい、私立大学の場合は「滑り止め2校、実力相応校2校、チャレンジ校2校……」などと考えていくと、最低6校くらいは受験することになります。受験料がかかることを考えると、「行きたい大学だけでいい」と思われるかもしれませんが、私立大入試は、前半は比較的入りやすい大学で、後半にいくほど難関校というスケジュール。「最初のうちに滑り止め校に合格して、自信を持って本命にチャレンジする」というのが受験のセオリーのよう。受験も「慣れ」は大事で、ある程度場数を踏む必要があるのです。

親の時代とは違って、今は、私立志願者もセンター試験を受ける時代です。それは、センター試験で一定以上の成績をとれば、その大学の一般入試を受けなくても合格にしてくれる私立大学があるからです。センター試験利用で複数の私立大に願書を出すこともできます。しかし、「センター利用で私大志願をする場合は、ではかなりの高得点でないと、行きたいレベルの私立に入ることはできないんだな」ということもわかりました。

子どもが大学受験をするにあたって、最近の少子化を思わずにはいられませんでした。同じ大学の同じ学部を何度でも受けるチャンスがあるのです。受験料は毎回払いますから、2回受ければ倍になります。

また、受験方法もさまざまで、明治大学などが実施している「全学部統一入試」というのには驚きました。1回の入試で、複数の学部にチャレンジして、合否判定が出る仕組みです。複数の学部に志願するので、その分受験料は増えます。2学部目以降は割引があります。ただし、この制度でとる人数は少ないようです。

幸い(?)、どこにも入学金などを払うこともできず、1年目は終了。

浪人して予備校へ。入学金が免除!?

[3. 浪人1年間に通った予備校の費用]の合計は、わかっている範囲で92万5000円。

浪人して河合塾へ。今度は昼間も使えるので、リアル授業の予備校です。私立大文系コースの年間授業料は、62万5000万円。入学金10万円は、現役のときに河合塾マナビスに通っていたため、免除されました(前の年に大金を使った甲斐があったのか、なかったのか……)。これに夏期講習、直前講習などの費用約30万円、各種模試、参考書の費用など。

[4. 浪人時の受験費用]の合計は36万1000円。

浪人時の受験費用は、センター試験検定料1万8000円、センター利用受験料(私立文系)1万8000円×1校、私立文系一般入試受験料3万5000円×9校で31万5000円。連続受験の日は、都心にホテルをとったので、これが1泊分で1万円ほど。自宅から毎日入試に行けなくはないのですが、2連チャン、3連チャンはキツイのです。

長男に宿泊をすすめた夫いわく、「受験の朝は、通勤・通学の時間帯の慣れない電車に乗って疲れること、大雪の心配などを考慮すると、本命の前日くらいは宿泊した方がいいと判断した」とのこと。「甘やかしとはわかっているけれど……」。まあ、東京に住んでいて東京の大学しか受けていないので、交通費、宿泊費は知れています。私は地元の福岡で一浪したあとに、東京の私立大を受験したので、その費用を出してくれた両親に改めて感謝しました。

[5. 大学の入学金と授業料]の合計は、135万5500円。

無事にいくつかの大学に合格して、そのうちのひとつに入学金30万円、前期の授業料(設備費なども含む)54万5500円を払い込みました。1年分の授業料を払わなかったのは、途中で「辞める」と言い出しかねないから。とことん、子どもを信じていません。というか、子どものことがわかっているから、そういう判断になるのですが。夏休みに、「後期も大学行く?」と長男に聞いて、「行く」というので、9月の納付期限ギリギリに後期の授業料51万円を払い込みました。スケジュール調整がうまくいったので、「滑り止め校に入学金だけ納めてムダにする」ということはありませんでした。

もうひとつ、心配性の夫は高3の年末あたりから、知り合いに紹介された家庭教師をつけました。彼には週1回程度勉強を見てもらいました。主に、勉強の進み具合をチェックしてもらい、おさえるべきポイントを解説してもらうことは有意義だったようです。受験へのモチベーションの持ち方などを伝授してくれました。家庭教師代も高3~浪人時代の約12カ月で40万円くらいでしょうか。

大学に入るためにかかったお金は、約382万円!

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大学進学にかかった費用

合計するのが恐ろしいですが、せっかくなので足してみると、約382万円!(大学2~4年の授業料は含んでいません)

私は家計や節約の記事を書くことが多いので、「どこかにムダはなかったか」とつい考えてしまいます。今思えば、[2]の現役のときの受験料はムダだったように思えます。しかし、受かるかもしれないのに、受けさせないわけにはいかないし、もし、落ちるにしても、次の年のためにはそこで「大学受験」を経験しておく必要があったのです。[1]の現役のときの塾もそれはそれはムダだった気がします。しかし、どれも長男の今後に役立ってくれる投資だったのなら、と思わずにいられません。がんばって、活かしてくれよぉ(祈り)!

以上は、わが家の場合ですが、自分でキチンと学習を進められるお子さんで、国公立大に入れて、浪人もしなければ、こんなにかかりません。しかし、頭がよくて理系や医学部に進むとなると、また大幅に金額が違ってきます。親はたいへんなのです。

はぁ~、多額のお金を使って大学に入学した長男ですが、実は大学入学時にひとり暮らしをさせはじめました。大学は自宅から通える範囲にあるのに、です。周りの友達からは、「生島のうちは金持ちだなぁ」などといわれたらしいのですが、そうではなく、自分で苦労をするためのひとり暮らしです。逆に、将来キチンと稼ぐ子にしないといけないという思いから、ひとり暮らしをさせることを決めました。この「ひとり暮らしをさせるためのお金」は、次回書こうと思います。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり