消費税は土地にはかからないが、建物にはかかる

国土交通省は、2013年の新設住宅着工戸数は前年比11%増の98万25戸と発表した。前年比増は4年連続で、100万戸の大台まであと少し。住宅ローンの低金利に加え、消費税が8%に上がる駆け込み需要や、東京五輪2020決定も不動産業界にとっては追い風となり、不動産市場には回復の兆しが見えている。

住宅ローン金利が低水準である今のうちに、住宅ローン控除が充実している今のうちに、欲しい不動産の価格が手の届く範囲の今のうちになど、そろそろマイホームを……と思っている人は多いのではないだろうか。

住宅購入は土地には消費税はかからないが、建物には消費税がかかる。これからマイホームを買う人は、消費税アップ分は「住宅ローン控除」あるいは「すまい給付金」で、おおよそがフォローされる。特に住宅ローン控除はマイホームを買う大きな動機になる制度で、今年は最大で年間40万円の税金が戻ってくる。でも、わかっているようでわかっていない2つの制度。今回は、詳しく説明をしよう。

10年間、毎年最大40万円の税金が戻る「住宅ローン控除」

国の住宅購入支援策としてマイホームに関連する税制優遇はいくつかあるが、いちばんの目玉は「住宅ローン控除」だろう。住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人が受けられるもの。要件を満たせば、年末の住宅ローン残高×1%を10年間、所得税から差し引かれる。所得税額がローン残高の1%に満たない場合は13万6500円を上限として翌年支払う住民税からも控除できる。平成26年4月から~平成29年末は、10年間で上限400万円までの税金が戻るよう制度が拡大された。

ここで勘違いしないで欲しいのは、納めた税金以上は戻ってこないということ。たとえば年収500万円で所得税9万6300円、住民税20万5200円の人が、住宅ローンを借入金3000万円、期間30年、全期間固定金利2.2%で借りたとしたら、住宅ローン控除で戻る税額は10年間で約230万円となる。

つまり住宅ローン控除により、イメージとしてマイホーム取得者は10年間所得税を払わない、あるいは大幅に軽減できるというものだ。

可能であれば控除分を繰り上げ返済の資金に回せば、おトク度も格段にアップするというもの。

さらに、長期優良住宅なら10年で上限500万円の税金が戻ってくる。長期優良住宅とは耐震性や省エネルギー性に優れるなど、一定の基準を満たした住宅のこと。長期優良住宅は住宅ローン控除の枠が100万円プラスになるほかに、他の税金制度の優遇やローン金利の優遇もある。建築費は高めだが、その分修繕費や光熱費など長期的にかかる費用を抑えられるというメリットもあるので考えどころだ。

住宅ローン控除を受けるには、入居した翌年にぞれぞれ個人で確定申告を行う。次年からはサラリーマンなら会社で年末調整をすれば申告は不要となる。

消費税率8%に合わせて「すまい給付金」も開始

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「すまい給付金」の給付基礎額

「すまい給付金」とは、消費税率引き上げによる住宅購入者の負担を軽くするために導入される制度だ。年収や家族構成によって所得税や住民税の納付が少ない人や、年収面で高額な借り入れをしない人もいる。そのような人は住宅ローン控除の拡大のメリットを受けることなく、消費税アップの影響だけを受けてしまう。そういった人のための国の救済制度が「すまいの給付金」だ。全員がもらえるわけではないので勘違いしないように。具体的には、年収の目安が510万円以下で、住宅の床面積が50平方メートル以上など、要件を満たした人が対象になる。

気になる給付基礎額は、都道府県民税の所得割額によって決められており、消費税率が8%のときは、収入額の目安が425万円以下で30万円、475万円以下で20万円、510万円以下で10万円となる。収入額の目安と書いたのは、実際には都道府県民税の所得割額によって決まり、また10%になると収入額の目安も変わるため。詳しくは表をみて欲しい。

このようにマイホームは政府の大きなサポートがあるので、消費税8%になっても税金面の大きな負担増はない。しかしこれが消費税10%になったときは(2015年10月予定)、さすがに負担は大きく感じるであろう。その分、給料が上がっていれば問題ないのだが……。

マネージャーナリスト 坂本君子(さかもと・きみこ)
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。