婚活において、相手の生活力を見抜くにはどんなことに注意すべきか。主宰する結婚相談所でカウンセラーを務めている大屋優子さんは「37歳の看護師女性は、年収850万円の41歳男性と真剣交際に入った。彼女は、清潔感があり、どこか抜けていてかわいい彼にひかれていた。初めて訪れた彼の部屋は、想像以上にきれいだった。ところが、冷蔵庫を開けた瞬間、彼女は言葉を失った」という――。

※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには変更や修正を加えている

シンプルでモダンなスタイルのリビングとダイニング
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「年収850万円の男性」と初めての自宅デート

結婚相談所の婚活には、さまざまなルールがある。結婚を決めて相談所を退会する「成婚退会」まで、婚前交渉を禁止するルールも、その一つだ。ハグやキスは許されるが、結婚を前提に付き合う「真剣交際」に進んでもこのルールは絶対に守らなければいけない。

一方、自宅を行き来できるなら、お相手の暮らしぶりを知る機会にもなる。結婚後の生活をより具体的にイメージするために、自宅での映画鑑賞や手作りディナーデートは、真剣交際になれば実現したい。

37歳で初婚の看護師女性が、ある男性と真剣交際に入った。相手は41歳で初婚、大卒、年収850万円だった。彼には清潔感があり、服装もきれいめのカジュアルだった。彼女にとって、見た目も好みの男性だった。

「こんな素敵な男性と、結婚相談所で出会えるなんて」

彼女は有頂天で、お見合いのときから交際に前向きだった。彼女からの積極的な働きかけが実り、二人は真剣交際になった。

彼女は、彼の「完璧なのに、どこか抜けていてかわいいところ」にひかれていたという。真剣交際に入って3回目のデートで、彼女は彼の自宅マンションを訪れた。彼が都内の実家から徒歩数分の場所に借りている部屋だ。

冷蔵庫内のタッパーに「手書きの付箋」

「どこか抜けている」彼の部屋だから、散らかっているかもしれない。そう想像していた彼女だったが、部屋は驚くほどきれいに片づけられていた。

洗いかけの食器も、脱ぎ散らかした服もない。しかも、キッチンやトイレの水回りが、ピカピカに磨かれている。キッチンのシンクはきれいに拭き上げられ、水垢の痕跡すらない。想像とはかけ離れた、整理整頓された部屋を見て、彼女は言った。

「お掃除がめちゃくちゃ上手いんだね!」

彼は、ごく当たり前のことのように答えた。

「実家がすぐそこだから、自分が仕事に行っている間に、母親が掃除してくれてる」

その言葉に、彼女は不安になったという。彼が母親に頼りきりなのではないかと思ったのだ。彼の母親は合鍵を持ち、彼が不在の間に部屋に入って片づけているようだった。映画を観る前に、彼は彼女に冷蔵庫のペットボトルを取ってほしいと頼んだ。彼女は扉を開けた瞬間、絶句した。

冷蔵庫には、いくつもの食品用の保存容器がきれいに並んでいた。それぞれの容器の側面には、中身が一目でわかるよう、手書きの付箋が貼られている。

「煮込みハンバーグ」「きんぴらごぼう」「タコのマリネ」。ほかにも3〜4品入っている。

彼女は、彼の母親が運んできた総菜なのだと受け止めた。きれいな部屋だけでなく、日々の食事も母親が支えているのだ。

冷蔵庫の中に重ねて収納された、食材や料理が入った保存容器
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実態は「大人の子供部屋」だった

彼女は、結婚するなら一人暮らしの経験がある男性と、二人で協力して家事をしていきたいと思っていた。

だが、彼女には、彼の暮らしが一人暮らしとは名ばかりに思えた。まるで、実家の子供部屋を別の場所に移しただけの「分室」ではないか。彼は掃除と食事を母親に頼っている。ならば、洗濯くらいはするのか。彼女が恐る恐る尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「自分でやってもよいんだけど、帰ってくると全部洗濯されてる」

やはり、彼のさわやかな綿のシャツも、母親がアイロンをかけているのだろう。彼女はそう思った。

彼は会社でも信頼され、期待されている様子で、帰宅が遅くなる日もある。それでもデートの日には、決まっておしゃれで清潔感のある装いで現れる。

いつも優雅で、余裕があるように見える彼を、家事の面で支えていたのは母親だったのだ。この「きれいすぎる部屋」に、彼女は奈落の底に落とされた気持ちになった。

「母親ありきの結婚生活」への不安

彼女は、自分には彼の母親と同じレベルの家事スキルはないと言う。彼には、きれいな部屋も、食事も、アイロンのかかったシャツも用意されている。

これほど快適な暮らしなら、彼は独身生活を手放したくなかったのではないか。彼女は、そんなふうにも考えた。ただ、彼がこれまで結婚しなかった理由は、それだけではわからない。

彼女は「どこか抜けていてかわいい」彼と、二人で家庭を築いていきたいと思っていた。しかし、彼の暮らしは母親のバックアップがあってこそ成り立っていた。だが、彼女は、母親の代わりに彼の身の回りを整えるのは到底無理だと言う。

結婚後も共働きであれば、実家の支援はありがたい。実家の近くに住み、力を借りて暮らすこと自体は、悪いことではない。私は彼女に、二人で協力することを前提に、実家の援助を受けてもよいのではないかとアドバイスした。だが、彼女の不安は消えなかった。

「私がお母さまと喧嘩したら、彼は母親の味方になる」
「彼は一切家事をできないし、やらないに違いない」
「専業主婦である彼の母親のように、私も完璧な母親であることを求められる」
「結婚後は毎日のように、合鍵で母親がやってくる」

彼女は、次々と結婚後の不安を口にした。ついさっきまで素敵だったはずの彼への見方は、一変していた。

テーブルに伏せる女性
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「実家との距離」は確認すべき

確かに彼は、母親のサポートを当たり前のように受け入れ、一人暮らしをしていた。もし、母親がしてくれていた家事を、結婚後は配偶者に任せきりにするつもりなら、結婚相手にはおすすめしない。

では、相手の家事能力や実家との距離感を、どのように確かめればよいのか。このことを見極めるためには、下記のポイントに注意してみるといい。

・今の家事は誰がしているか。自分では何ができ、結婚後はどう分担したいか。
・今の住まいは実家からどのくらい離れているか。実家とはどのくらいの頻度で行き来しているか。
・結婚後、親にどんな援助を頼みたいか。親が自宅を訪ねる頻度や、親に合鍵を渡すかどうかをどう考えるか。
・パートナーと自分の親の意見が食い違ったら、どう解決するか。

これらは、結婚前に具体的に話し合っておいたほうがよい。実家の近くに住んでいるというだけで、相手の自立心までは判断できない。

別の女性は、経済的に恵まれた家庭の男性と結婚した。毎週日曜日には、夫の実家の家族と夕食を共にするのが恒例だった。夫がゴルフなどでいない日も、この食事会は開かれていた。女性は、夫が不在の日は食事会に参加しないことにしたいと夫に頼んだ。だが、夫はその希望をこう一蹴したという。

「なんで嫌なの? 親の金でうまいもん食えるし、文句ないじゃん」

親を大切にすることと自立は両立する

結婚相手の実家が経済的に豊かで、愛情深いことは、結婚後の心強い支えになりうる。夫婦への援助を惜しまない両親なら、ありがたいと感じる場面も多いだろう。

ただ、新しい家庭を持つなら、相手に自立心があるかは確かめたい。

もし、相手が何よりも自分の実家を優先し、親の考えがいつも正しいと思っていたらどうか。夫婦の意見が親と食い違ったとき、あなたの思いが置き去りになりかねない。

相手は、結婚後の親との距離感を、あなたと二人で決められるか。自分の身の回りのことを自分でできるか。そして、二人の家庭を優先する覚悟があるか。普段の会話から疑問が生まれるようなら、交際終了を恐れず、踏み込んだ話をしてほしい。

親を大切にすることと、自分たちで家庭を築くことは両立できるはずだ。

43歳男性が実家を出て半年で成婚

結婚相談所の婚活では、一人暮らしの経験が、自立しているかを考える手がかりの一つになる。

実家で母親と二人暮らしをしていた、43歳の初婚男性がいた。彼はお見合い相手から「一人暮らしの経験はないのですか?」と聞かれることが多く、婚活がなかなかうまくいかなかった。彼は父親を早くに亡くし、母親を一人にするのが気がかりで、実家を出られなかったのだ。

大屋優子、現代洋子『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)
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婚活を始めた彼は、一人暮らしの経験がないことを相手に気にされていると感じた。そこで、母親と離れて暮らすことにした。引っ越し先は、実家と同じ沿線で、駅でいうと5つ先。母親も息子の自立を喜んだ。一人暮らしを始めた後はお見合いの機会も増え、彼はわずか半年で成婚退会に至った。

婚活で大切なのは、単に一人暮らしをしているかどうかだけではない。大事なのは、親を大切にしながら、自分の人生に責任を持てるかどうかだ。そして結婚後は、パートナーと新しい家庭を築く覚悟があるかどうかである。

彼の場合は、親との距離を自分で決め、一人暮らしを始めた。その一歩が、幸せをつかむきっかけの一つになったのだ。