厚生労働省は9月30日、2025年人口動態統計の確定数を公表した。独身研究家の荒川和久さんは「メディアの報道などでは晩婚化が指摘されるが、統計を見れば誤りだとわかる。実際に起きているのは“非婚化”だ」という――。
新郎新婦
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「女が最高値で売れるのは27歳」

「女が最高値で売れるのは27。私の統計では27歳が売り時のピークなの。それを超えたら値崩れを起こすわ」

これは、2000年に大ヒットしたドラマ『やまとなでしこ』で、松嶋菜々子演じる主人公の桜子が、同僚の女友達と「何歳までに結婚相手を絞り込むか」という話題に際して言い放った台詞です。

それ以前の1980年代には、「女はクリスマスケーキ。25歳までが勝負」といういわゆる「クリスマスケーキ理論」が流布されていました。クリスマスケーキが25日を過ぎると値引き・売れ残りになる様子を、女性の結婚市場に重ねた比喩です。

これらの言説は何の根拠もない話ではなく、当時の女性の初婚年齢の実態に基づいています。たとえば、「クリスマスケーキ理論」が言われた1985年の女性の平均初婚年齢は25.5歳、『やまとなでしこ』放送時の2000年のそれは27.0歳でした。そう考えると、最新の2025年の女性平均初婚年齢は29.7歳ですから、令和の現代では「30歳までに結婚すればいい」ということになるのでしょうか。

しかし、この平均値というものはあまり実態を示していません。

晩婚化なんて起きていない

世に言う「晩婚化」とは、この平均初婚年齢が上がっていることをベースに語られています。確かに1980年代からの平均初婚年齢推移だけで比べると晩婚化しているように見えます。しかし、実はその平均初婚年齢自体も2015年あたりを天井に上げ止まっています。

加えて、平均値だけでなく、中央値・最頻値の3つの指標を見比べると、少なくとも直近10年間は「晩婚化など起きていない」ことがわかります。

まず、女性だけで見ると、1985年から2015年にかけては、平均値で25.5歳→29.4歳、中央値で25.0歳→28.6歳、最頻値で24歳→27歳とすべてで上がっていますが、2015年から2025年にかけてはほぼ大きな違いはありません。最頻値に至っては、ずっと26~27歳で一定、むしろ26歳のほうが多いくらいです。

【図表1】男女初婚年齢 平均値・中央値・最頻値

男性に関しても同様に、2015年までは3指標ともに上昇しましたが、それ以降は変化なし。それどころか中央値は2015年29.9歳から2025年29.4歳へと下降、最頻値も28歳から27歳へと下降しています。

つまり、ここ10年間、男女とも初婚年齢は、平均値・中央値・最頻値の3指標すべてほぼ不動であり、これが「晩婚化など起きていない」という意味になります。

20代の半分以上が未婚の現実

とはいえ、晩婚化がなかったとは言いません。1980~2015年までは確かに晩婚化はありました。男女とも20代の初婚の激減に対して、30代での初婚が多少増えていたわけです。それも2015年を境に潮目が完全に変わり、男女とも30代ですら初婚率が激減して、今に至ります。

かつての「晩婚化」現象はもはや微塵もなく、今起きているのは20~30代の若者すべての非婚化です。要するに、男女すべての年齢で初婚が激減しているのですから、婚姻数が減るのは当然で、婚姻数に依存する出生数も必ず減少します。

【図表2】男女年齢別初婚率推移

2025年国勢調査における30歳時未婚率(25~34歳未婚率の平均)は、男65%、女55%もあり、こちらも1920年以降過去最高です。これがどういうことかというと、男女初婚の平均値・中央値・最頻値ともにすべて20代のうちなのに対して、それを達成できた割合が男35%、女45%しかいないということになります。男女とも半分以上が、20代で結婚できなくなっているということです。

「結婚したいと思っていたのに、いつのまにか30歳を超えてしまった」

実はここにこそ婚姻減の本質が隠れています。

婚姻減の要因としては、若者を取り巻くふたつの大きな環境変化があります。

見落としがちな男性の「年齢力」

ひとつは社会環境変化で、かつて皆婚を支えていたお見合いや職場結婚などの「結婚の社会的お膳立てシステム」が消滅し、結婚がチーム戦から自力による個人戦に移行したこと。さらに、結婚が市場化し、条件で選び・選ばれるという原理に飲み込まれてしまったこと。巷ではアプリ婚が増えているという声もありますが、あれこそ「結婚の市場化」の最たるもので「恋愛強者3割の総取り市場」です。個人の恋愛力でなんとかできる者だけが結婚できるという結婚の弱肉強食時代を形成しました。

もうひとつは、経済環境変化です。経済上位3割(大企業勤務や公務員など)を除く7割の若者にとっては、昨今の物価高により生活そのものが苦しい上に、耳に入る情報は、結婚や子育てにかかるコスト増大の話ばかり。そのため若者が描く「結婚や子育てに必要な年収ハードル」だけが異常に高騰して、中間層の若者にとってはもはや「手の届かない贅沢品」化しています。

こうした「結婚の個人化」と「結婚の市場化」によって、恋愛力または経済力のない者は「したくてもできない不本意未婚」の道を進むことになるわけです。若者の初婚減は、それができる上位層しかできなくなったということを示しています。

そして、見落としがちなのが「結婚における年齢力」の問題があります。これは必ずしも女性だけの問題ではなく、男性も同様です。

身も蓋もない話ですが、恋愛には「限界年齢」があります。もちろん、いくつになっても恋愛したい・恋愛できる層も存在しますが、多くは若いうちに経験しておかないと加齢とともに恋愛意欲は薄れ、恋愛力は衰えます。

「恋愛力の衰え」は軽視できない

私のラボで、一都三県の未婚男女8796人を対象に年齢と恋愛人数についての調査をしたことがあります(年齢とともにどれくらい新規の恋愛関係を作れたか)。それによれば、もっとも恋愛経験が得られるのは男女ともに24歳までがピークで、それ以降は加齢とともに減少します。40歳を超えるともはや「恋愛ってどうやってするんだっけ」となる未婚も多いことでしょう。

この「年齢による恋愛力の衰え」は軽視できません。まさに「鉄は熱いうちに打て」と同じで、恋愛なき加齢後はもう固まって恋愛する気もなくなります。

にもかかわらず、今の若者には、経済的不安が覆いかぶさり、「結婚するためには一定の年収を稼がなきゃ」と思わされています。仮に目標の年収に到達しても、その間に年齢を重ねてしまうと手遅れになります。繰り返しますが、これは女性だけではなく男性もそうです。

以下のグラフは、年齢力と経済力が恋愛力にどれくらい影響するかを示したものです(図表3)。

【図表3】恋愛力・年齢減少効果と年収補填効果

簡単にいえば、24歳までの恋愛力を100とした場合、男女ともに25~29歳で約40%減、30~34歳で60%減、35歳以上では70%減となります。それだけ落ちた恋愛力を経済力(それぞれの年齢の平均年収よりいくら加算すべきか)で補填しようとしても、とても追いつかないという状況を表しています。

たとえば、男性の場合、24歳を超えると恋愛力が44%落ちますが、それを年収100万円増額で補填しようとしても25%しか回復しません。つまり、29歳までに年収100万円上げるよりも24歳までに恋愛相手を見つけるほうが確率が高くなるということです。

本当に必要な「少子化対策」とは

それでも29歳まではまだなんとかなりそうですが、30歳を超えると、年齢力は62%も衰えるので、たとえ年収を平均年収より400万円高く稼ぐようになっても24歳までの年齢力に戻せないということになります(逆にいえば、平均を大きく超える相当高い年収であれば中年になってもなんとかなるかもしれないということでもありますが)。

一方、女性の場合は、男性より経済力の補填効果が薄いので、ひとつ歳を重ねるごとに相手を見つけることがより困難となります。

要するに、冒頭の『やまとなでしこ』の台詞は男女ともに当てはまる教訓で、男女とも年をとればとるほど恋愛できなくなるわけです。

ちなみに、2025年出生動向基本調査で、5年以内に恋愛結婚した男女(お見合いなどを除く)が結婚相手と付き合い始めた平均年齢というのがありますが、男24.6歳、女23.2歳です。いずれも恋愛結婚した男女というのは24歳までに出会った相手と結婚しています。

正直「24歳までに結婚を考えるのは早い」と思う若者が多いとは思いますが、結婚するかしないかは別にして、若いうちに恋愛をせず、後回しにすればするほど結婚が遠のく可能性があります。恋愛力や経済力以上にこの年齢力の重要性を認識しておいた方がよいでしょう。

いまさらながら、樹木希林さんの名言「結婚は若いうちにしなきゃダメなの。分別がついたらできなくなるんだから」という言葉がしみじみとくるものがあります。逆にいえば、少子化対策には、若者が20代のうちにお金の不安なく恋愛できるような環境を整えることこそ必要なのでしょう。