医療費の個人負担はますます増えていく
2026年8月からの高額療養費制度の上限の大幅引き上げで、病院に通院治療する高齢者の中には、なんと年間7万2000円も負担が増える人もいます。しかも、この上限の引き上げは今年だけではなく来年、2027年にもあり、全国保険医団体連合会によれば、高額療養費制度を利用している821万人の内、約8割の人が負担増になるとのことです。
たとえば年収700万円のサラリーマンが入院して100万円の治療を受けたとすると、2026年7月までは自己負担の上限額は8万7430円でしたが、8月からは9万2940円に。さらに、2027年8月からは11万6720円へと上限が引き上げられます。
高額療養費の上限とは、かかった医療費の上限を制限するものですが、この高額療養費を使わないという人でも、2026年6月に公布された改正健康保険法により、医療費負担が増える可能性があります。この改正健康保険法では、日本維新の会が完全除外を主張したOTC類似薬(市販薬と成分や効能が似ている医療用医薬品)について、薬剤費の一部を保険給付対象外とする「一部保険外療養」を創設。2027年3月から施行される予定で、医療機関で受けた処方薬の値段が今よりも上がることが予想されます。ほかにも、高齢者の医療費3割負担者を増やすことが検討されています。
だとしたら、できる限りのことをして医療費や薬代を自力で下げることが必要です。そのために役立つ7つの方法をご紹介します。
医療費を3万円安くする7つの方法
1.リフィル処方箋を出してもらう
高血圧症や糖尿病などの慢性疾患で症状が安定している人は、医者に「リフィル処方箋」を出してもらいましょう。
「リフィル処方箋」とは、1回の診察で最大3回まで繰り返し使える処方箋。通常の診療だと、1回の診療につき1枚の処方箋しか出してもらえませんが、「リフィル処方箋」では、医師が「リフィル可」にチェックを入れれば、調剤薬局で同じ薬を3回出してもらうことができます。
病気によっても異なりますが、保険適用の3割負担で再診すると、通常は再診料や処方箋料で600円から1500円ほどがかかります。この費用が、2回目、3回目は必要なくなり、3カ月に一度病院に行けばいいので1年で8回分、年間で4800円から1万2000円ほど診療代が安くなります。それだけでなく、わざわざ交通機関を使って病院に行っている人は、交通費も時間も浮くことになります。
ただ、医師の中には「リフィル処方箋」に消極的な人もいるので、その場合には医師と話し合って、長めの処方箋を出してもらうようにするといいでしょう。
2.飲み残しの薬を持参で安くなる
薬剤費は、医療費全体の約2割、10兆円を占めています。ところが、なんと患者の約半数に飲み残しの薬があり、厚生労働省の推計では年間約500億円のムダになっているようです。
この飲み残しの薬を少しでも減らすために、2026年6月から処方箋の備考欄に飲み残しの薬に関する項目が新設されました。1つは「減薬前に医師に相談」。もう1つは「減薬後に医師に報告」の2つ。医師が処方箋に「減薬後に報告」にチェックを入れていれば、事前に医師の確認・了承を得なくても、薬剤師の判断で飲み残し薬があるぶん、新たに出す薬を減らせる「残薬調整」がスムーズにできるようになりました。以前処方されたものの飲み残してしまっている薬があるなら、処方箋、お薬手帳とともに処方箋薬局に持って行きましょう。医者の処方してくれた薬からそのぶんを差し引けるので、薬代が安くなります。どれくらい安くなるかはケース・バイ・ケースですが、高齢になると7〜8種類の薬をもらうことも多く、仮に飲みきれなくて3000円分の薬が余っていて、まだ有効だと薬剤師が判断したら、そのぶん薬代が減らせるので大きい。
ただし、飲み残しの薬を薬局で買い取ってもらうことはできません。
処方箋薬局、診療機関選びで支払額に差が
3.同じ処方箋薬でも、安い薬局でお得に
同じ医師が書いた、同じ内容の処方箋薬でも、薬局によって支払う薬の値段が違うことを知らない人は多いのではないでしょうか。
日本は国民皆保険ですから処方箋の薬剤の価格は、全国一律でどの薬局でも同じです。ただ、処方箋の薬を買うときには、薬剤料とは別に「調剤技術料」などの料金もかかります。「調剤技術料」とは薬局の手数料のようなもので、薬局の規模や立地、処理する処方箋の枚数などで基本料金が違っています。
簡単に言えば、たくさんの処方箋を扱う院内薬局や敷地内薬局、門前薬局などは、街中にポツンとある薬局よりも基本料金が安い傾向にあるということ。チェーン店の薬局も安いところが多いですが、院内薬局などに比べるとちょっと高い傾向があるようです。安くなる料金は薬局によっても異なりますが、保険対応で数十円から数百円程度です。
4.かかりつけ医の紹介状で、大病院の初診料が安く
「体調が悪いから」と、いきなり大病院に行って診てもらうと、初診料に最低でも7000円が上乗せされ、再診でも3000円が上乗せされます(歯科は初診5000円以上、再診1900円以上)。
ただし、「7000円以上」なので、東京大学医学部附属病院や近畿大学病院のように、1万3200円を上乗せするところもあります。この上乗せ料金については、保険は適用されません。ですから、体調が悪いからといきなり大病院に行くのではなく、まず近所のかかりつけ医で診てもらい、そこで手に負えなかったら紹介状を書いてもらって、大病院でより詳しい検査などをしてもらうほうがいい。
ちなみに、医者に紹介状を書いてもらう際にかかる料金は2500円ですが、こちらは保険が効くので、1〜3割の負担で約250〜750円で済みます。
かかりつけ医に診てもらうメリットは紹介状だけではありません。たとえば、心臓が痛いなら循環器内科など、あらかじめ見当がついた診療科を紹介してもらえるので、素人が当てずっぽうで大病院に行くよりもムダが少ないでしょう。
後発薬と時間内診療で負担軽減を図る
5.ジェネリック医薬品を活用
最近は、ジェネリック医薬品で医療費を抑えるという人も増えてきています。
「ジェネリック医薬品」とは、20〜25年の独占販売特許が切れた先発薬と同等の基準で製造された後発薬のこと。開発費が安く済むぶん薬代も安く、先発薬の2〜7割になっています。20年以上も使っている薬なので、安全性が確認されていること、さらに後発薬では、大きさやニオイなどの改善もされ、飲みやすくなっているものが多いようです。
医師にジェネリック医薬品を処方してもらうには、シンプルに「ジェネリックでお願いします」と伝えるだけ。ほかの服用中の薬などを考慮して、問題ないなら処方してもらえます。薬局で薬剤師に相談するのもいいでしょう。処方箋に「後発医薬品への変更不可」となっていなければあなたの同意を得たうえで変更してもらえます。
さらに、2026年6月からは、患者の都合で後発薬があるのに先発薬を希望すると、その差額の2分の1を特別の料金として患者が負担しなければならなくなりました(以前は4分の1の負担)。たとえば、毎日飲む1錠40円の高血圧の先発医薬品が、ジェネリックで1錠12円になったとすると、差額は28円。その2分の1の14円を追加で負担することになり、先発薬代にプラスして年約5100円の加算に。ジェネリック医薬品を選べば、3割負担の人で先発薬より年8000円ほど安くなります。
6.時間外・休日診療を避ける
病院には、あらかじめ管轄の保健所や地方厚生局へ届け出た診療時間があります。届け出の多い診療時間は、午前8時30分から11時30分、午後は13時から16時30分。最近は、午後スタートで22時までやっている病院もあります。この診療時間を外すと、たとえ5分遅れても、時間外料金がかかります。
時間外料金は、平日、深夜、休日で異なりますが、3割負担の場合で初診だと255円から1440円の料金が上乗せ(※)になります。よほど緊急の時以外は、診療時間内に診てもらうようにしましょう。
※18歳(高校生年度末)以上の人の場合。それ以下の年齢の子どもは各自治体の医療費助成により負担額が変わります。
医療費控除申請の鉄則を知る
7.家族分を合算し確定申告で医療費を税金で取り戻す
医療費控除とは、年間10万円以上の医療費がかかったら、10万円を超えた部分を確定申告すると、払い過ぎの税金が戻ってくるという制度。病院代や市販薬だけでなく、フィットネスや温泉、子どもの歯の矯正など、医師が認めたものなら医療費控除の対象となります。独身でも10万円を超えれば申請できますし、家族がいるなら、一緒に暮らす家族全員の医療費が合算できるだけでなく、離れて暮らしていても仕送りをしている両親など、生計を一にしていると認められる人の医療費も合算できます。
合算で申告する場合、申告は家族の中でもっとも税率が高い人がするといいでしょう。たとえば、家族で1年間の医療費(市販の薬を含む)が30万円だった場合、たとえば、年収300万円(税率5%)の娘が申告すれば、戻る税金は1万円ですが、年収800万円(税率20%)の父親が申告すれば、戻る税金は4万円と、4倍になります。
細かな節約になりますが、あの手この手を駆使すれば、独身でも年間3万円くらいは、医療関連費を減らせる人は少なくないはず。さまざまな情報を知ることで、医療費負担を下げることができるのです。