皇室典範が改正され、皇族が旧宮家の男系男子を養子に迎えられるようになった。コラムニストの矢部万紀子さんは「麻生太郎氏は、自民党案の取りまとめで中心的な役割を果たした。その姪である三笠宮家の彬子さま、瑶子さまがいま、SNS上で相次いで批判の矢面に立たされている。男系男子による皇位継承に固執した結果、女性皇族が負担を強いられている。あまりにお気の毒だ」という――。
一般参賀で日の丸を振る人々
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皇族費増額を機に彬子さまへの批判が拡大

皇族の生活費である「皇族費」は、皇室経済法で定められている。「独立の生計を営む親王と、夫を失って独立の生計を営む親王妃」の年額(3050万円)をもとに、「独立の生計を営む親王の妃」はその「2分の1」などと決めている。

改正皇室経済法が7月17日、改正皇室典範とともに成立した。これで一部の皇族の年額が増える。ということを私が知ったのは、だいぶたってからだ。

オールドメディア世代ゆえ、新聞をよく読む。この改正を18日の朝刊で報じた全国紙は産経新聞だけだった。他紙は改正皇室典範の問題点を論じるのに忙しく、手が回らなかったのだろう。「男系男子ブラボー」の産経新聞が見せた余裕。ブラボーではまるでない私には盲点だった。

産経新聞の「皇族方の生活費一部変更 彬子さまは増額へ」という見出しの記事には、法律に則った皇族の区分、計算式、年額、該当する皇族名の一覧表が載っている。本文からも「三笠宮家の彬子さまは施行後、1067万5000円から2135万円に増額される」ことがわかる。

以来、彬子さまがSNSで叩かれている。物価高の折、この増額はなんだ。それが出発点のようだ。Xのトレンドは7月19日、「改正皇室典範成立、彬子女王の皇族費倍増で批判集中」とまとめていた。産経新聞の記事を起点に「どうして国民が苦しんでいるのに、私達の税金出さなきゃいけないの‼」といった投稿が並ぶ。

麻生氏との関係などが批判と結びつけられた

ただ、それだけがバッシングの理由ではない。投稿には「麻生の姪の皇族費だけが約2倍になってる」というのもあった。麻生とは、自民党副総裁の麻生太郎氏。「男系男子」に固執したラスボスが麻生氏だと、国民は皆知っている。彬子さまの母・信子さまはラスボスの妹、彬子さまは姪だ。

2025年12月22日、内閣制度創始140周年記念式典で乾杯の挨拶をする麻生元総理大臣
2025年12月22日、内閣制度創始140周年記念式典で乾杯の挨拶をする麻生元総理大臣(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

少しさかのぼると2025年、三笠宮家には大きな変化があった。9月30日の皇室経済会議で彬子さまが当主になり、信子さまが「三笠宮寬仁親王妃家」の当主となったのだ。なぜ二つの宮家なのか。背景にあるとされる母娘の確執については、ここでは触れない。

この時、彬子さまも信子さまも皇族費が増額された(彬子さま・640万5000円→1067万5000円、信子さま・1525万円→3050万円)。さらに信子さまが1人で暮らす旧宮内庁公邸の大規模改修費用が13億円とも伝えられた(『週刊文春』2025年10月9日号など)。この「13億円」も彬子さま&三笠宮家バッシングの種になっている。

さらに分析すると、彬子さまは叩かれやすい存在だったと思う。英・オックスフォード大学に5年間留学し、博士号を取得した体験記『赤と青のガウン』が2024年に文庫化され、ベストセラーになった。9月には「徹子の部屋」に出演。翌2025年4月に「彬子女王のオールナイトニッポンPremium」が放送された。『赤と青のガウン』は2026年3月に漫画化され、即重版していた。つまり目立っていた。

報道とSNSが“姉妹”への批判を増幅させている

だからネットの世界的に見立てをまとめるなら、彬子さまは「愛子天皇を阻止しようとしているラスボスの親戚で、このところ世間でもてはやされていて、金銭面で1人得する人」となる。ゆえにバッシングは続き、そうなるとメディアも見逃さない。

「女性自身」編集部が7月23日にウェブで、「(皇族費)約3.3倍増額」と「SNS猛反発」を見出しに記事を公開した。するとXのトレンドがその日のうちに、「彬子さまの皇族費が3.3倍に引き上げ SNSで税金不満の声」とまとめている。メディアとSNSの投稿の行ったり来たりでバッシングが続いていく。

三笠宮彬子さま。「即位礼正殿の儀」(2019年10月22日)にて
三笠宮彬子さま。「即位礼正殿の儀」(2019年10月22日)にて(写真=首相官邸 YouTube/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

彬子さまは8月7日から14日まで、非公式な訪問でブータンを訪ねた。これについても同行者(伊藤穰一・千葉工業大学学長)のこと、ワンチュク国王の隣でスニーカーを履いたことなどがバッシングの種となった。妹の瑶子さまにも類火が及び、アメリカへの私的旅行の取りやめがバッシングの対象となった。8月3日の出発当日、宮内庁が「取りやめ」を発表、理由は「熊本地震の発生」だった。ネット上では、「三笠宮家バッシングが起きているので、出発直前に渋々取りやめた」ことになっている。

“皇族費の男女格差を是正”しただけなのに…

2人とも、とんだとばっちりだ。そもそも彬子さまの皇族費が増額されたのは、“皇族費の男女格差の是正”に端を発している。これまで同じ天皇直系の子・孫であっても、女性(内親王)の皇族費は男性(親王)の半分だった。これを今回、同額に引き上げた。三笠宮家当主の彬子さまは「独立の生計を営む女王」で、皇族費は「独立の生計を営む内親王の10分の7」になる。そこは変わっていない。

当主になる→皇室経済法改正→内親王の年額アップ→結果、自分もアップ→バッシング。こういう環境で生きなくてはならない女性皇族は、どう考えてもお気の毒だ。

ここまで三笠宮家、中でも彬子さまについての事情を書いてきた。が、ここからは彬子さまに限らない問題を書いていく。深刻なのは、こちらだと思う。

ネット上には、彬子さまが「天皇の祖母となることを企てている」とか「皇室を乗っ取ろうとしている」といった見立てが山のようにある。何かというと「養親」の話だ。

改正皇室典範で「旧宮家の男系男子」を養子にすることが可能になった。では誰が養親になるか、だ。改正皇室典範によれば、「天皇、皇后両陛下と上皇ご夫妻、秋篠宮ご夫妻を除く皇族」が養親になれる。残るのは「常陸宮家」「三笠宮家」「三笠宮寬仁親王妃家」「高円宮家」の4家。4分の1の確率で、どこかの宮家が養親を引き受ける。では、どこが?

養親となる宮家に憶測が向かう構図

当主の年齢は常陸宮さま90歳、高円宮妃久子さま73歳、信子さま71歳、彬子さま44歳。一般国民だった男性を皇族として世に送り出す。そういう役目を担うには体力も気力も必要で、若い彬子さまが当主の三笠宮家が最有力。そう思う人がいても、不思議ではない。

加えて彬子さまは「男系男子派」という見方も広まっている。小泉政権下、女性・女系天皇を認める方向で皇室典範改正が議論されていた時、反対の論陣を張った寬仁さまを父に持つ。自身も2012年1月、毎日新聞で「女性宮家に特化した議論」への違和感を語った。

2011年1月2日、新年一般参賀に臨席された三笠宮彬子さま
2011年1月2日、新年一般参賀に臨席された三笠宮彬子さま(写真=Kounosu1/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

だが、別な宮家が養親になったら、問題はないだろうか。麻生氏とも、ベストセラーとも、「男系男子派」とも関係なくても、「なぜ養親に?」とあらゆる方向からの憶測が飛び交い、バッシングにつながる。火を見るより明らかだと思う。

要は国民の総意との乖離なのだ。皇族数確保のための議論のはずが皇位継承の議論になり、男系男子でつなぐために天皇陛下から36〜38親等離れているという旧宮家の男子を養子にする。女性・女系天皇を認める多くの国民の声をよそに、女性皇族は結婚したら住民基本台帳法の適用とする。配偶者と子の身分についての記載はないが、政府は「皇族にならない」と説明している。まるで働くためだけの準皇族。その不自然さへの違和感が、まずは彬子さまへのバッシングとなって表れた。

朝日新聞社は皇室典範改正の翌日、7月18日から2日間で世論調査を実施した。この法改正が国民の理解を得られていると思うかという問いに「得られている」は24%、「得られていない」が60%。今日の三笠宮家は、明日の他家だろう。誰が引き受けても、国民から痛くもない腹を探られる。そういう皇室が、皇室だろうか。

14年前の彬子さま「早く決めていただきたい」

ところで、2012年1月の毎日新聞だが、彬子さまは女性宮家についてまず「お国の決定に任せるしかないと思っています」と述べている。その上でそれだけの議論になっていることに「違和感があると申しますか」とし、旧皇族の復帰、宮家の養子による継承などに言及している。

「立場が定まらないと、ご結婚にも踏み切れない、ということはありますでしょうか」という質問には、自身は結婚後も公務をすることに抵抗はないが、相手の将来にも関わってくる問題なので、「決めるのであれば早く決めていただきたい」と答えている。彬子さま、当時30歳。これからの人生を思う1人の女性として、ごく真っ当な意見だ。

それから14年、女性皇族は宙ぶらりんなままだった。今回の皇室典範改正でも、いまの女性皇族は、結婚時に自分の意思で皇室を離れられることも決められている。皇族としての活動に意味を見いだしている女性皇族にとって、先述した「準皇族」のような扱いがうれしいはずがない。では、仕事が楽しいのに皇室の外に出る選択をするのか……。男系男子への固執は、女性皇族への失礼だと思う。

秋篠宮さま「女性、男性の区別はない」

8月13日、秋篠宮さまと紀子さまがパラグアイへの公式訪問を前に記者会見した。皇室典範改正について秋篠宮さまが「私も生身の人間なんですよね。ですから、いろいろと思うところは、もちろんあります。無かったらおかしいと私は思いますけども」と述べた。

2025年8月29日、赤坂御用地にて、エクアドル共和国のダニエル・ノボア大統領夫妻を御接見された秋篠宮皇嗣殿下
2025年8月29日、赤坂御用地にて、エクアドル共和国のダニエル・ノボア大統領夫妻を御接見された秋篠宮皇嗣殿下(写真=Isaac Castillo/エクアドル共和国大統領府/PD-author-FlickrPDM/Wikimedia Commons

改正皇室典範に反対する発言だという解釈もできる。が、テレビ東京皇室担当デスクの新見多一さんは「異論があることをみなさんに伝えたい。そういうニュアンスではありませんでした」と言い切っていた(8月18日テレ東BIZ「皇室ちょっといい話・秋篠宮さま発言の真意は?」)。

新見さんは、秋篠宮さまが皇嗣になってから全ての会見に出席したのは私と新聞社の編集委員の2人だけだと言っていた。皇室担当記者としての自負がにじんでいた。皇室全体に関わる問題について秋篠宮さまが独自の意見を言うことはできないとも指摘していて、それはその通りだろう。

この会見で秋篠宮さまは、女性皇族の役割についても聞かれていた。皇族の役割は社会の要請を受け、務めを果たすことだ。そう持論を述べ、こう続けた。「そういうことを進めていくということについて、私は女性、男性の区別というのはないと考えています」

女性、男性の区別があり過ぎる改正皇室典範。多くの女性があきれ、傷つき、女性皇族がバッシングにあっている。残念にもほどがある。