※本稿は、井戸美枝『定年前後にやるべきこと大全』(エクスナレッジ)の一部を抜粋・再編集したものです。
まずは“必要な老後資金額”を計算する
「老後2000万円問題」が話題となって久しいですが、実際に必要な金額は一律ではなく、結局のところ「人による」のが実情です。
現在の年金見込み額や保有資産、定年後も働き続けるか、そして日々の生活費や家族構成によって、準備する額は異なります。
次の4つのステップに沿って、自分にとって必要な資金を算出してみましょう。
まず、現在の支出の7割程度を老後の生活費として計算します。
次に、その生活費から年金見込み額を差し引き、月々の不足額を計算。
ステップ3で、不足額が100歳まで続くといくらになるかを算出します。
ステップ4で100歳までの不足額に医療・介護費や娯楽費など生活費以外にかかる予備費を足し、退職金や現在の資産で賄える分を差し引きます。
こうして導き出された数字が、現役時代(65歳まで)に用意しておくとよい額の目安です。漠然とした不安を解消するためにも、自身の数字を具体化してみましょう。
「銀行預金」では守れない
65歳までに必要な目標額が明確になったら、次は着実にその資金を準備していきましょう。
足元では金利上昇の傾向があるとはいえ、預貯金の金利は年0.3%程度です。資産を大きく増やすには不向きな手段であることに変わりありません。
また、長く続いたデフレを脱し、日本はインフレ下となりました。物価上昇率以上に資産を増やせなければ、実質的な資産価値は目減りしてしまいます。
資産運用は、単に「増やす」ためだけでなく、大切な資産の価値を「守る」ためにも極めて重要な手段といえるのです。
日本銀行が掲げる物価上昇率の目標値が年2%であることを踏まえると、株式などを主な運用対象とする投資信託を活用し、リスクを分散しながら年2%のリターンを目指していくとよいでしょう。
株式を投資対象とするインデックスファンドなら年5%の利回りも無理のない範囲です。100万円を30年間運用した場合、年率2%と5%では約250万円もの差になります。
「一括」よりも「積み立て」が安心な理由
「投資はまとまった資金や余裕がなければできない」と考えている人もいるでしょうが、決してそんなことはありません。特に物価上昇が続く局面では、現金の価値を守る手段として少額からの投資が大きな意味を持ちます。
預貯金の多くは「単利」で計算されますが、投資の大きな魅力は「複利」にあります。「元本+利息」の合計に利息がつくため、資産は雪だるま式に増えていく可能性が大きくなります。
投資の成果は「金額×利回り×期間」で決まるため、運用期間が長いほど有利に働きます。一時的な市場の暴落に直面しても、変動を乗り越えて経済成長の波に乗れる可能性も高まります。
また、一度にまとまった金額を投じる「一括投資」よりも、定期定額での「積立投資」のほうが、高値づかみのリスクを回避できます。
プロでも難しい相場の読みを個人で行うのは困難です。淡々と積み立てを続けることこそが、資産を安定させ、着実に将来の備えを築くための近道といえるでしょう。
資産寿命を延ばす“取り崩し方”
退職後を見据えて形成した資産が目標額に達したからといって、運用をやめるのはおすすめしません。
定年後、運用を一切せずに資産を取り崩していくと、資産は一定のペースで減り続け、寿命より先に底をつく場合もあります。ですから、年率3%程度で運用を続けながら定額または定率で取り崩すこと。そうすれば、資産寿命を延ばしつつ資金も確保することができます。
また、認知機能の低下に備えて、取り崩し方法を決めておく必要があります。
売却手続きができないために、せっかく蓄えてきた資産を支出に充てられない場合もあるのです。
そのため、判断能力がしっかりしているうちに、各証券会社が行っている自動的に一定額を現金化してくれる定期売却サービスを設定するのがおすすめです。定年前後の世代は、資産を取り崩す計画を早い段階で立てておくことが、安心につながります。
年間目安は、資産の“4%”
資産の寿命は、保有している資産額だけでなく、毎月の取り崩し額によって大きく左右されます。
たとえ退職時に十分な蓄えがあると感じていても、家計の補填として引き出す額が多ければ、想定よりも早く資産は底をついてしまいます。
逆に、取り崩し額を上手にコントロールしながら年率3%程度の運用を続ければ、資産寿命を100歳超まで大幅に延ばすことも可能です。
自分の資産が何年持つかを考える際は、生活水準を考えた無理のない取り崩し額を見極めましょう。また、退職後も働いて収入を得たり、支出を抑える工夫をしたりと、毎月の取り崩し額を減らす意識も大切です。
ひとつの考え方として、年間の取り崩し額は資産の「4%」という目安があります。投資先として人気の全世界株式の期待リターンは年率5〜7%とされるため、それ以下の4%であれば、運用益で支出をカバーしやすくなるためです。
