※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには変更や修正を加えている
超高年収男性の“本音”
結婚相談所で婚活している男性のなかには、驚くほどの高年収男性が存在する。
その多くが、会社経営者や投資家であり、年収2000万円以上あり、住まいは賃貸を選択し、会社の社宅扱いにしたり、また普段の外食や旅行に使うお金は、会社の経費からまかなうため、所得のほとんどが手残りするという方も実際にいる。
こうした方々は、自身の高所得を認識しているから、お金だけを目的にして近寄ってくる、いわゆる「カネモク」女性は避けたいという気持ちを持っている方も少なくない。
そのため、実際の年収より少ない金額で結婚相談所に登録したいという方も存在する。
そんな考えを持つ超高年収男性が私の結婚相談所にやってきた。
「年収3500万円ダウン」で登録
親の代からの資産家で、不動産会社や飲食店などを経営する会社のオーナー。自身の才覚で親の資産をさらに膨らませたという。44歳、大卒。自己申告では身長164センチ、体重88キロと、ややふくよかな体型である。手にはボッテガ・ヴェネタのバッグを提げて面談にやって来た。
元々ひげが濃い体質で、ひげの永久脱毛中。中学生のころからニキビに悩まされてきたといい、その痕を消すため美容整形外科に通って美肌治療を試みているそうである。ご自身の見た目には、相応の手間とお金をかけているのが伝わってきた。
「ご年収はいくらでしょうか?」という質問に彼は「実際には5000万円ほどあるけど、登録するときは1500万円くらいにしておきたい。金目当ての女とは結婚したくないから」と言う。
超リッチな彼は、お金があると思われて、近寄ってくる女性たちに、さんざん貢がされたりした過去を語り、それに嫌気がさし、結婚相談所で真面目な女性と結婚をしたいという。
だから、車は外車に乗らず国産のレクサスを選んでいるそうだし、見た目も金持ちに見えないようにしている、と胸を張る。だが面談時、彼の手首にはロレックスのデイトナが巻かれ、上着はモンクレール、足元にはボッテガ・ヴェネタのバッグが置かれていた。
一流レストランでデートするも連戦連敗
彼の発言には違和感を覚えつつも、「どんな方とご結婚されたいですか?」の質問には「若くて、背がスラっとしている女性」と間髪入れずに答える。身長は165センチ以上ならいくら高くても構わないのだそう。
そんな彼の婚活は、順風満帆とはいかないのは言うまでもなく、片っ端から申し込む若くて高身長の美人とのお見合いは、なかなか成立しない。
一回りも年下の高身長の女性を求める彼に、お見合いのお申し込みが来るのはアラフォーの女性が多く、奇跡ともいえる31歳の女性からお申し込みが来たのだが、「身長が152センチだった」と彼がNGを出す。
とはいえ、年収を1500万円で掲載しているということもあり、3人の30代の女性とお見合いや交際にもなった。デートには、一流レストランで食事をしたり、ディズニーランドにもでかけた。
だが、交際になっても、初回デート、あるいは2回デートしただけで、先方から次々とお断りを受ける。交際終了の理由には、「結婚をイメージできなかった」「フィーリングが合わなかった」など、無難な理由がシステムには記載されていた。
彼は、相手を喜ばせようと高級レストランに連れていき、最高級のフルコースをご馳走したりと、一生懸命だったのにである。
半日デートで暴走、「真剣交際に進みたい」
こうした中、ある日身長164センチのスラリとした34歳女性とのお見合いが決まった。
お見合いの場で、相手の女性が金銭的な話を一切しなかったと彼は喜び、また先方からも仮交際希望が来て、交際が成立した。
その彼女との初デート後に、なんと彼は浮かれた声で「真剣交際に進みたい」と言い出したので、この発言には驚くしかなかった。
「なぜそんなに急ぐのか?」と聞くと、「鉄は熱いうちに打たないと、彼女の気持ちが変わってしまう。彼女が欲しいエンゲージリングの下見に銀座のカルティエにも行ってきたし」と言う。
さすがにそれはいくらなんでもおかしい。1時間お茶しながらお見合いをして、たった半日デートした相手にカルティエの婚約指輪を買う約束をし、結婚するんだと、40歳を過ぎた大人の男性がなぜ有頂天になるのか。
さんざん、カネモク女性たちに貢がされた過去を、あれだけ熱く、そしてつらい思い出として、面談の時に語っていたではないか。その当人が、結婚相談所で結婚前提とはいえ、また同じ過ちを繰り返す可能性があるとなぜ考えないのか。
彼女のどんなところが一生を共にする配偶者として良いと思うのかを彼に問うと「見た目が好みで、子供も一日も早くほしいと言っている。性格も優しそうだし」と素朴に語る。
たった数時間で相手の人柄がわかるはずはないし、彼女だって、こちらのどこを気に入って結婚を決意したのか、きちんと確認してほしい。「優しそう」なのはよいが、本当に心根がよいのか、「優しそうなふり」をしているだけかもしれないとは疑わないのか。
1週間で返信が来なくなり…
不安しかない私は、相手のカウンセラーに連絡を取った。
すると相手のカウンセラーは、他人事のように「そうですか、確認してみます」と答える。その後3日が過ぎても、連絡がないため、もう一度先方に連絡してみると「真剣交際になると会員が申しております」と言う。
これにも私は唖然として言葉を失ったが、カウンセラーにはさまざまなタイプがいて、お見合いを取り次いだあと、会員が勝手に交際をし、交際終了になるも、成婚退会するもほったらかしている一部の仲人がいることを思い出した。
このカウンセラーに、うちの会員のどこが良いと思ってくれたのかを聞いたところで、わかるはずがない。彼女と結婚するんだとウキウキしていたはずの彼からは、1週間後に暗い声で「彼女からLINEの返信がないし、電話しても出ない」と連絡が入る。
予想通りの展開だった。もしかしたら彼女こそ、一瞬お金に目がくらんだカネモク女性だったのではないか。
「生理的に無理」という残酷な感想
私はしつこく、先方のカウンセラーに連絡をし、彼女の気持ちを確認してほしいとお願いすると、数日後に「生理的に無理だと感じ、交際終了したい」と告げられたのである。「生理的に無理」という言葉ほど、胸に突き刺さるお断り理由はないし、これはまた結婚相手としてどんなに好条件であっても、乗り越えるのが難しい違和感である。
おそらく彼女は、「生理的に無理」だと感じながらも、彼の収入や資産を数時間の中で嗅ぎ分け、結婚しようと思ったものの、よく考えてみれば難しいと現実に立ち返ったのであろう。
確かに彼は、金銭的には申し分のない男性だが、彼との面談の中で、私が彼から感じる問題点はいくつかあった。
第一に清潔感の欠如である。肥満気味なためか、首筋に汗をかいていて汗のにおいを感じた。ある日は、会話中にいきなり獣の鳴き声のような大きな音をたて、思い切り鼻をかんで、そのティッシュをテーブルの上に置いた。
これを女性の前でやれば、一発アウトを食らうだろうと、やんわりと彼に注意したこともある。だが、彼はこれを重大な修正事項と思っていないのか、それよりもひげの永久脱毛や、ニキビ痕の修正への課金には一生懸命であった。
彼にとっては、ひげやニキビ痕は大きな弱点なのだろうし、昔から抱えてきたコンプレックスなのは理解できる。ただ、自分が気になっていることだけを解決したとしても、相手女性に「清潔感のある男性」だと思ってもらえるかは別の話なのである。
お金で乗り越えられない「生理的な違和感」
一方で、無課金でできる「清潔感」の基本に無頓着すぎる。「清潔感」こそ、婚活において何より重要なのは、身だしなみであるにもかかわらず、だ。
前述の交際終了となった3人の30代女性たちも、表面上は当たり障りのない交際終了理由であったが、本音は彼の不潔なところに嫌悪感を抱いたのであろうと容易に想像がつく。
彼は、一生お金に困らない経済力があるから、自分が思い描く若くてすらっとした好みの女性と結婚できると思い込み、疑うことなどない。自分の好みの女性には、お金にものを言わせて高級レストランでご馳走し、ブランド物のプレゼントを与え、贅沢な暮らしをさせれば結婚できると思っている。
だから、彼のそんな甘い考えを見抜いて、いわゆる「カネモク」女性が集まってきてしまうのだ。
彼に「清潔感や衛生観念」の重要性を話し、お金より自分自身の人間性を理解してくれる女性との結婚こそが、幸せにつながることをアドバイスしたが、彼はわかったような口ぶりを見せたのも束の間、すらっとした年下美人への執着が消えることはなく、「好みの女性とお見合いできない」と結婚相談所を1年弱で退会していった。
婚活には収入よりも大切なものがある
結婚相談所の婚活は、年収から男性を検索することができるし、高年収の男性からお見合いのお申し込みが来れば、贅沢な暮らしができるのではないかと、女性も一瞬心躍る。
だが、生理的に無理な男性とは、絶対に結婚はしない。お金さえあれば理想通りの女性と結婚できると思うのは間違いだ。
潤沢な資産を持ち、どんなに高年収であったとしても、自分が考える理想の相手と並んだ時にしっくりくる見た目や清潔感やマナーがなければ、結婚はできないことを肝に銘じてほしい。
