血液型による性格分類に根拠はないが…
「血液型で性格が決まるなんて非科学的だ」
そう考える人は多いでしょう。実際、現在の心理学や医学では、「A型は真面目」「B型は自己中心的」といった血液型性格診断に科学的根拠はないとされています。
しかし、最新の研究から、日本社会では血液型が実際の人生に影響を与えている可能性が見えてきました。
しかも、その影響は単なる雑談レベルではありません。
恋愛、就職、人間関係。さらには本人への評価まで。
人々が「血液型で人を判断する」ことで、現実の人生に差が生まれている可能性があるのです。
中でも、特に不利益を受けやすい傾向が見られる血液型もわかってきました。
なぜ、科学的根拠がないにもかかわらず、血液型がこれほど強い影響力を持ってしまうのでしょうか。
本稿では、血液型性格診断が日本社会に与えてきた影響と、最新研究から見えてきた「見えない偏見」について考えていきます。
血液型性格診断の歴史
血液型と性格の関連を最初に唱えたのは、1927年の教育学者の古川竹二氏です。彼は11人の親族を観察し、「A型は内向的、B型とO型は外向的」という結論を導きました。
論文は学術的にはその後否定されましたが、社会では逆に大きな注目を集めます。
1970〜80年代にはジャーナリスト・能見正比古氏の著作がベストセラー化。血液型性格診断は国民的ブームになりました。
佐藤達哉・渡邊芳之(1992)の研究では、1980年代半ばには「日本人の約6割が血液型で性格がわかると信じていた」とされています(*1)。
そして2000年代。
テレビ番組が血液型特集を繰り返し放送したことで、ブームはさらに加熱します。
一方で、BPO(放送倫理・番組向上機構)が「血液型による偏見や差別を助長する恐れがある」として、番組制作側に注意喚起を行う事態にもなりました。
つまり、単なる娯楽では済まされなくなったのです。
「一番損している」と言われる血液型
こうした血液型イメージの中で、一貫して否定的に語られてきた血液型があります。
それが「B型」です。
「自己中心的」、「わがまま」、「協調性がない」、「マイペースすぎる。」
こうしたイメージを聞いたことがある人も多いでしょう。もちろん、これらに科学的根拠はありません。
しかし問題なのは、「多くの人が信じている」という点です。
たとえ根拠がなくても、社会全体がそうしたイメージを共有すると、それは現実の評価や行動に影響を与え始めます。
実際、日本では過去に、「B型とは付き合いたくない」、「採用や職場で不利になる」といった言説がたびたび話題になってきました。
つまり、血液型性格診断は「ただの遊び」では終わらず、社会的なラベリングとして機能してしまう恐れがあるのです。
B型の男性が直面する3つの格差
では、血液型による偏見は、実際に人生へ影響しているのでしょうか。
この疑問を検証したのが、一橋大学経営管理研究科の小泉秀人専任講師です(*2)。
小泉氏は、大阪大学が実施した約4200人規模の日本人データを用い、血液型と結婚・就業・所得との関係を分析しました。
その結果、特に「B型男性」において、以下のような3つの格差が生じていることが判明しました。
②労働市場の壁:B型男性の失業率は、他の血液型に比べて2ポイント(割合にして約121%)も高い。
③年収の崖:特に若年層のB型男性において、年収が最大約68万円も減少している。

※図表=Koizumi, H. (2025) Quantifying Social Construction: Evidence from blood type discrimination in Japan, RIETI Discussion Paper Series 25-E-017を基にGeminiを使用して編集部作成
これらはいずれも無視できない影響です。なぜ科学的根拠が皆無のはずの血液型がこれほどまでに人生の「実損」をもたらすのでしょうか。
B型男性だけが影響を受ける3つの理由
小泉専任講師はB型男性だけ不利になる理由について、以下の3つの要因が影響しているのではないかと指摘しています。
1. 恋愛市場におけるB型男性フィルター
1つ目は、恋愛市場に存在する「B型男性フィルター」です。
日本では、今でも「血液型で性格がわかる」と考える人が少なくありません。特に恋愛では、第一印象や相性判断が重視されやすい世界です。
そのため、「B型って自己中心的そう」「付き合うと振り回されそう」といったイメージが無意識のうちに相手選びへ入り込む可能性があります。
重要なのは、実際に自己中心的かどうか、ではありません。「そう思われている」こと自体が恋愛市場で不利に働き得るのです。
2. 採用・人事評価でのラベリング
2つ目が採用・昇進で起きる「無意識のラベリング」です。
小泉氏は、企業の採用や人事評価で、血液型が話題にされるケースが現実に存在したと指摘しています。もちろん、公式に「B型だから不採用」とする企業はありません。
しかし問題は、「無意識の偏見」です。
例えば、「B型はチームプレーが苦手そう」「管理が難しそう」といったイメージが、面接官や上司の頭の片隅に存在していれば、それだけで評価に影響する可能性があります。
こうした小さな不利が積み重なると、就職で不利になる→収入が伸びにくくなる→結婚市場でも不利になる、という負の連鎖が生まれかねません。
3. 自分自身の思い込み
3つ目は、「自己充足的予言の悲劇」です。
自己充足的予言とは、自分の思い込みや期待がその人の行動や態度に影響を与え、結果として「思い込みどおりの現実」を作り出してしまう現象のことを指しています。
たとえば、子どもの頃から、「B型だからわがまま」「B型は遅刻する」「協調性がない」と言われ続けた場合、人は無意識にその役割へ引き寄せられてしまうことがあります。
周囲の期待に合わせる形で、本当にそのような行動パターンを取りやすくなるのです。実際、小泉氏の研究でも、その可能性を示唆する結果が確認されています。
つまり恐ろしいのは、「偏見がある」→「本人がその扱いを受け続ける」→「偏見通りの行動を取りやすくなる」→「さらに偏見が強化される」というループです。
科学的根拠がないはずの血液型イメージが社会全体によって現実化されてしまう。そこに、この問題の本当の怖さがあります。
日米比較で見えてきた事実
ここまで読むと、こう疑いたくなる人もいるでしょう。
「でも、B型の人には本当に何か性格的特徴があるのでは?」
実際、日本では長年にわたり、「B型は自己中心的」「マイペース」「協調性に欠ける」といったイメージが繰り返し語られてきました。
しかし、小泉氏はこの疑問に対して、非常に興味深い検証を行っています。
それが、「血液型性格診断」がほとんど存在しないアメリカとの比較です。もし本当に血液型そのものに性格差があり、それが人生へ影響するのであれば、日本以外でも同じ現象が起きるはずです。
ところが、アメリカのデータを用いて分析すると、日本で見られたような差は確認されませんでした。
これは極めて重要な結果です。なぜなら、「原因は血液型そのものではない」ことを強く示しているからです。
つまり、日本でB型男性が直面している不利益は、生まれつきの性格ではなく、日本社会が長年作り上げてきた「イメージ」によって生じている可能性が高いのです。
「根拠なき偏見」が持つ影響力
改めて言いますが、血液型性格診断に、科学的根拠はありません。
それにもかかわらず、日本では長年にわたり、「B型は自己中心的」「A型は真面目」といったイメージがテレビや雑誌を通じて広まり、多くの人々に共有されてきました。
そして今回の研究は、その「ただの娯楽」が恋愛や就職、年収といった現実の人生にまで影響している可能性を示しています。
重要なのは、「本当にそうか」ではありません。
「みんながそう信じている」だけで、人々の評価や行動は変わってしまうのです。
その結果、根拠のないイメージが結婚率や収入、キャリアの差として表れてしまう。血液型性格診断は、社会に広がった「思い込み」がどれほど強い影響力を持ち得るのかを示していると言えるでしょう。
〈参考文献〉
(*1) 佐藤達哉・渡邊芳之(1992)「現代の血液型性格判断ブームとその心理学的研究」『心理学評論』, 35, 234-268.
(*2) Koizumi, H. (2025) Quantifying Social Construction: Evidence from blood type discrimination in Japan, RIETI Discussion Paper Series 25-E-017