※本稿は、西﨑彩智『貯まる片づけ』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「片づけ」と「お金」の関係
「片づけ」と「お金」は、密接につながっています。
多くの人に、片づける前のお金の状態を聞くと、「何に使っているかわからない」「クレジットカードの請求がきて、毎月びっくり」「ストレス解消で買い物をしている」といった回答がすごく多い。浪費が多く、家計管理もできていない。お金の出入りに無頓着なんですね。
お金の使い方や管理の仕方など、すべての思考は「家」に出ますから、家が片づいていない人がお金の問題も抱えるのは、不思議なことではありません。例えば、年収800万円以上でも、家庭収入が2000万円以上でも、片づいていない「お金が貯まらない家」からはお金が湯水のように出ていくので、貯まりません。
外ではバリバリ働いていたり、豊かに見えたりしているのに、いざ家に帰ると部屋が散らかっていて、お金にも悩みがあって……という“外向けの自分”とのギャップに苦しんでいる人もたくさん見てきました。
家を片づけたあとに尋ねると、「お金が貯まった!」という声の多いこと。収入や支出に大きな変化が生まれていました。なぜ片づけると、お金が貯まるようになるのでしょうか。またお金を貯めるためには、どんな片づけをすればいいのでしょうか。
片づけると貯められるようになるワケ
「アレ、どこに行ったっけ」
家が片づいていないせいで、「ものが見つからない」→「仕方ないから新たに買う」ということを繰り返していませんか? そこそこ稼いでいるのになぜかお金が貯まらない人は、このような行動に覚えがある人がほとんど。日常的な無駄遣いが当たり前になっているのです。
ものが雑多にあふれて、部屋が倉庫みたいになっていて気が休まらない。日中の生産性が下がる余分なものをたっぷり入れた冷蔵庫には、電気代も余分にかかり続けています。そもそもものを溜め込んだ、使えていないスペースにも家賃がかかっていると認識してほしいと思います。
私は、家を片づけたことで「生活費が半分になった」「貯金ができるようになった」といううれしい声をこれまでたくさん聞いてきました。もっと直接的に、片づけている最中に、あちこちからお金が出てきたという人も少なくありません。
過去最大は200万円。ご主人が独身時代にかけて満期になっていた保険の証書が出てきたのです。
受取期限はギリギリで、翌月だったら単なる紙切れになっていました。そのときは「彩智さん、ありがとう~」と、ずいぶん感謝されました。片づけずに現状が把握できていないと、証書自体も見つからないわけです。
片づけが生む「5つの成長」
では、なぜ家を片づけると、お金が貯まるのでしょうか? 私は、次の5つの理由があると考えています。
① 現状を把握できる
片づいていない家は、とにかくものでいっぱい。置き場に困ってあふれています。それなのに、手持ちのアイテムを把握できないことで同じようなものを買ってしまうほか、「便利そうだから」「お得だったから」とさらに余分なものを買いがちです。
家を片づけると、自分が「何をどれだけ持っているか」「収納スペースに余白はあるか」という「現状」を把握できるようになります。また、そこに至るまでに不要と判断してたくさんのものを捨てることができています。
そこから、次にものを買うときに、本当に必要かどうかを慎重に検討するようになり、「つい買っちゃう」といった衝動買い、無駄遣いがなくなります。
② 管理能力が高まる
ものの住所を決めて、「使ったものを元に戻す」とルール化すれば、必要なものがすぐに見つかるし、同じものを重複して買ってしまうこともなくなります。
片づけは「後回しにしていたところに手をつける」作業ですから、やっていく中で、優先順位をつけて効率的に動く習慣がつきます。
片づけて、どこに何があるのかを把握し、ものの置き場所を決めていくと、余分なものや無駄なものを買わなくなり、自然とお金の管理能力が上がっていくのです。
管理能力は当然、仕事にも必要ですから、片づけでこの能力が高まると仕事の効率が上がり、収入アップにつながっていきます。
③ 自分と向き合える
片づけを始めると、見栄で買ったものや断れなくて買ったものなども出てきます。
それらを捨てる過程で、自分が本当に快適に感じるアイテム、自分の性格や好むライフスタイルなどへの理解が深まり、結果的に「本当の自分」が見えてきます。本当に自分にとって心地よいものを理解することで、無駄な買い物はしなくなっていくのです。
自分の「期待」に応えられない辛さ
④ ストレスから解放される
片づいていない家に住む人は、ストレスがマグマのように溜まっています。どこに何があるかわからず、探すのに時間がかかるため、そのたびにイライラ。ごちゃついた部屋が視界に入るたびにイライラ。
片づけられない自分に自信が持てなくなったり、罪悪感を抱えたりする人も。そのようなストレスから買い物をし、もっとものが増えていく……。そういう悪循環に陥りがちです。
「できない、できない」が積み重なって、「なんで私ってできないんだろう。なんてダメな人間なんだろう」と、さらなるストレスが溜まっていきます。自分にかけた期待に自分が応えられないのって、つらいんですよね。
⑤ 長期目線を持てる
私もそうでしたが、部屋が片づけられていないときは、「欲しい!」と思ったものを衝動的に買っていました。その一瞬の気持ちを満たすことを優先していたんです。ところが片づけに着手し、1カ所ずつきれいになっていくのを体感すると、この家をどんなふうに使いたいか、そしてこの家でどんな人生を送っていきたいか、と長期的な視点で未来を描けるようになります。
未来への想像力を持てるようになると、「これは買っても使わないな」「無駄に買ったら、また捨てるのに苦労するな」などと冷静に判断できるようになって、無駄遣いしなくなります。
物事を長期的に見られる段階になると、お金を「消費」や「浪費」ではなく、「投資」に使えるようになります。それによってお金の使い方や稼ぎ方が変わり、収入アップも期待できます。
片づけられるようになることで意識が変わります。例えば同じ朝の10分でも、以前なら「もう10分しかない。全然時間がない」という感覚だったのが、「10分もある! じゃあ洗濯物をたためるな」と、時間をうまく使えるようになります。余裕が生まれますし、その積み重ねが、「自己肯定感」も上げていきます。
これらの変化によって、周囲との雰囲気がよくなり、職場での信頼も高まり、収入がアップしていく。それは「自然なこと」ではないでしょうか。
まずは小さな目標を立ててみる
ここまで読んで、「片づけるだけでお金が貯まるなら!」と興味を持っていただけたとしても、今日までさんざん後回しにしてきた片づけです。短期間で一気に片づけられるように変わるのは、現実的ではないでしょう。
ポイントは“小さな目標”を立てること。片づけられない人の多くが、実は完璧主義者です。これ、ものすごく大事なので、もう一度書いておきます。あなたは完璧主義者です。「そんな、全然、完璧になんてできてないよ」と思うかもしれません。でもそれが完璧主義者。
自分への期待も理想も高く、やるなら完璧を目指したいと考えているところはありませんか? そういう人ほど「この週末こそ、部屋をキレイに」などと無謀な目標を掲げがちなのです。
脱・完璧主義でお金が貯まる理由
これからは完璧主義を捨てて、「今日はこれができた」という“完了主義”になってください。完璧に美しい状態を目指したいあなたの繊細な感性は、片づいて余白が生まれたあとに発揮しましょう。「一日で一気に」ではなく、「できること」を少しずつ完了させれば、理想のわが家になる日が必ずやってきます。だから、大丈夫です。
小さな成功体験をたくさん積み重ねるうちに、自分に自信も持てるようになります。今までは「今日もダメだった」「やっぱりできなかった」と言っていたのが、「今日もできた」「今週もよくやった」と、自己信頼感も高まります。
「自分のことが嫌い」でも「自信」はつけられる
自信というのは、自分のことが好きとか嫌いというものではなく、大丈夫と思えるかどうかだと、私は考えています。「自分は大丈夫」「私はこういう人」と、自分自身を認めることができるのは、自信のあらわれです。
その状態になると、不思議と見栄を張って自分をよく見せようとは思わなくなります。無駄なお金も使わなくなり、お金が貯まり出します。
あるがままの自分の状態を認めることが最初のステップです。それができれば、現実と期待のギャップが見えてきます。次に、ギャップを埋めていくことにフォーカスできるようになり、最終的には理想の自分に近づいていくことができます。
片づけというのは、生活の中でできる、自分を変えるトレーニングなのだと、つくづく思います。
●完璧主義より「完了」主義
目標が高すぎて達成できなかったり、完璧な状態にならないとわかった時点で投げ出してしまったりしたら本末転倒。とにかくやり遂げる「完了主義」で、理想の未来に着実に進みましょう。
「片づけたい」と願う男性が増えている
近年は、「片づけ」をテーマに企業研修を行う機会が増え、男性から片づけの悩みを聞くことも多くなりました。
そこで気づいたのが、妻に言われたからではなく、能動的に「家を片づけたい」と思う男性が、数年前と比べてあきらかに増えているということです。
大きな転機になったのが、コロナ禍。今まで外にいた男性が家の中で仕事をするようになり、環境が変わったことで、自然と目が「家」に向くようになったようですね。意識を向けてみると、家じゅうにものがあふれていて、自分のワークスペースがつくれない。でも、必要だからと無理やりにデスクまわりを買いそろえて押し込んだものの、出社回帰になった今、それらすべてが無駄になってしまっている。
家賃に光熱費に教育費……とお金に悩む人が日本の経済事情で増えている今、男性も、片づけたり、夫婦のコミュニケーションを円滑にしたりすることが、日々の無駄をなくし、生産性アップや収入アップ、集中力アップにつながる、という話に納得し、興味を持ち始めていただけているようです。
「株式会社自分」になるということ
私は、片づけに悩み、私のもとを訪れるみなさんによく、「『株式会社自分』になりましょう」という話をしています。会社には、それぞれ企業理念があり、それに基づく経営計画があります。また、今期の目標がある。人生も同じです。理念があり、人生設計を立てて目標を掲げていく。
「お金のせいで、希望の選択ができない」。そのように悩んでいる女性は、自らの手でお金を生み出していきましょう。そのための自己肯定感を片づけで育むことが最初のステップです。
「家族のために仕事を頑張って養っている」「なのに家に居場所がない」「家に帰るのが辛くて、いつも疲れている」。心の中にそんな悩みを抱える男性は、勇気をもって、奥さんに一歩踏み込んでみて。片づけたい意思を示し、「なぜ片づけたいのか」「片づけてどんな家庭にしたいのか」。コミュニケーションで夫婦のズレを解消していきましょう。
現実を見て、一つひとつ手放していく
こうして振り返ってみると、私自身を変えてくれたのも、片づけです。最初は片づけ(=現実を見て、不要なものを一つひとつ手放す作業)を「つらいな」「しんどいな」と思うかもしれません。しかし、継続する中で、きっとあなたの“悩み”が軽くなっていく瞬間が訪れます。
今こそ「株式会社自分」を立ち上げてください。まずは引き出しを一つだけ片づけて、その気持ちよさを感じることから始めましょう。頭で考えてしない10分より、まずはやってみる10分を、だまされたと思って始めてください。
その先には、必ず「自分らしい幸せ」をあきらめない人生が必ず待っているはずです。頑張りましょう!

