子どもを産むのにいくらかかるのか
そろそろ子どもが欲しい……でも、出産や教育にお金がいくらかかるか心配、という人も少なくないと思う。
子どもの教育費には、1000万円、2000万円などの膨大なお金がかかるといわれるのだが、まず、子どもを産むための費用がいくらくらいかかるのか、ご存知だろうか?
単純に、出産するための費用の相場は、40万~100万円程度。これには、分娩費用、入院費用、入院中の食事代、出産から退院までの母子へのケア費用などが含まれる。なぜ、こんなに差があるのだろうか。病気の場合の医療費と違って、妊娠・出産は、健康保険の対象外となる。健康保険は使えず、すべて実費負担になるのだ。
そのため、それぞれの病院が独自のケアやサービスをして費用を決めている。出産する場所も、総合病院、一般病院、個人産院、助産院など、さまざまだ。どんな出産をしたいかで、出産施設の選択も費用も変わる。一戸建てのおうちの畳の和室に入院し、母乳にいいとされる自然食を出す助産院もあれば、ホテルのスイートルームのような部屋で、フランス料理のフルコースを出すような高級産院もある。
子どもを産んだら、42万円が支給される
出産費用には健康保険が使えないが、加入している健康保険から「出産育児一時金」または「家族出産育児一時金」として42万円が支給される(産科医療補償制度に加入していない医療機関で産む場合は39万円)。出産育児一時金は、妊娠85日以上の出産について支給される。考えたくないことだが、流産や死産になった場合も受け取れる(ただし、在胎週数が22週未満の場合は、産科医療補償制度の対象とならないため、39万円の支給となる)。
健康保険組合によっては、健康保険法に決められた法定給付(42万円)にプラスして、付加給付を行っているところもある。この金額は組合によって、5万円、10万円など違いがある。また、東京都港区のように、区内に居住し、健康保険に加入している人に対して出産育児一時金の42万円を超えて60万円までは出産費用の助成を独自に行う自治体もある(2013年現在)。
以前は、出産費用はいったん全額立て替えて医療機関に支払い、出産後に健康保険の窓口へ請求していた。そのため、40万~50万円程度の費用を貯蓄などから捻出する必要があったのだ。しかし、今は出産育児一時金の請求と受け取りを医療機関が行い、健康保険組合などから医療機関へ直接支給される「直接支払制度」や、妊婦が加入する健康保険組合に出産育児一時金の請求をする際に、医療機関に受け取りを委任することで直接支給される「受取代理制度」などが導入され、出産後の退院時に払うのは、かかった出産費用から出産育児一時金の42万円を差し引いた額だけですむ場合が増えた。
ただし、医療機関によっては、妊娠中期頃に「分娩予約金」という一定のお金を納入しなければならない場合もある。納入時期や金額などは、それぞれの医療機関ごとに違う。例えば、A産院は、妊娠20週までに30万円納入、という具合だ。もちろん、不要な医療機関もある。分娩予約金は、出産費用に充当されるので、出産育児一時金が出ればまかなえるが、立て替えが必要になる。どうしても困ったら、「出産育児一時金の貸付制度」(表参照)を実施している場合があるので、問い合せてみよう。
トラブルがなければ、持ち出しは10万円程度
比較的費用が安いほうだといわれている都立病院のホームページには、「正常分娩:45万~50万円程度、予定帝王切開術:40万~45万円程度」とあり、分娩した時間帯、薬の種類や量、その他さまざまな医療行為によって発生する費用があるので、実際にかかる費用は1人ずつ違う可能性があることが記されている。また、個室を希望する場合には、差額ベッド代が1日あたり1万6000円~2万8000円かかる。最高の2万8000円の部屋に出産後4日間入院すると、プラス11万2000円かかることになる。
分娩の時間によっては、深夜料金がかかる医療機関もあるし、陣痛の前に破水してしまう前期破水などで出産前にも入院が必要になる場合もあるので、出産は予算通り、予定通りにはいかないものだ。助産院での自然分娩も40万円台くらいのところが多い。
あまりトラブルもなく、贅沢な高級産院を選ばなければ、実際の持ち出しは10万円程度ですみそうだ。しかし、出産は、自分が望んだようなケアをしてもらえるか、安心して産めるかどうかも大きなポイント。費用だけでなく、総合的に比較して出産場所は選びたい。
合併症や帝王切開などの場合は、健康保険の適用に
妊娠・出産に関しては、公的健康保険の対象外だが、合併症や帝王切開などの場合には、健康保険が適用されることも覚えておこう。その分の費用に関しては、医療費の窓口負担3割で、高額療養費制度の対象にもなる。
また、この場合、自分で加入している民間の医療保険があれば、手術給付金や入院給付金が受け取れる。民間の医療保険は、妊娠すると加入に制限がかかる場合もあるので、加入を検討しているのなら、妊婦になる前に加入することがおすすめだ。
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。