デジタル化が進んでも顧客は“人”を重視する
2018年夏ごろにはトヨタの人気車種「クラウン」が"コネクティッドカー"として発売される予定だ。
コネクティッドカーとは、ICT端末としての機能を有するクルマのこと。車両の状態や周囲の道路状況などのデータをセンサーで取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。
「コネクティッドカーが普及することで、営業担当者がデータを活用し、次の一手を打ちやすくなると考えています」と架谷社長は期待を込めて話す。
それに先駆けて今春には、県内に白山店がオープンする。同店では顧客がクルマに乗って来店した際、ナンバーを読み取り、あらかじめ店舗スタッフが顧客情報を確認できる仕組みを構築する。それによってよりきめ細かなサービスを提供できるという。
また現在、平日に試乗車が利用されることが少ないため、石川トヨタの顧客に「カーシェア」として有料で貸し出すことも計画している。例えば、日ごろはコンパクトカーに乗っている顧客がスキーをしに行くときにトヨタの4WD車「ランドクルーザー」を利用してもらうことで豊かなカーライフを提供するだけでなく、新車の魅力を感じてもらったり、乗ってみた感想を聞いてWebサイトに掲載したりすることができるようになる。
アプリの今後の展望については、マイレージの仕組みを導入し、クルマの購入や来店、車検や点検を行うことでポイントがたまるサービスも検討している。ポイントに合わせてキャッシュバックなどをすることによって、石川トヨタを利用するメリットを高めるためだ。
「大半のお客様はおよそ半年に1度しか来店されません。そのため、Webサイトやアプリを活用してお客様の日常生活にどう寄り添うことができるかが大変重要になると考えています」
石川トヨタ経営企画部の北本毅部長はこう話す。
石川トヨタはアプリの事前登録キャンペーンを実施し、約500人の顧客にアンケート調査を行った。「アプリで使いたい機能は何か」という質問に対し、「営業担当者とチャット形式で気軽に連絡できる機能」と回答した人が最も多く、その数は過半数に上ったという。「予想外の結果でしたが、デジタル化が進んでもお客様は"人"を重視するのだということがよくわかりました」と北本氏は振り返る。
「耐久財であるクルマは、一度購入したら7~8年間は乗り続けられる製品です。ですから、お客様は安心して乗れるクルマを、安心して相談できる人から購入したいと考えるはずです。行き着くところはやはり"人"です。石川トヨタはこれからもお客様が接客してもらいたいと思うスタッフがいる店舗、お客様が足を運びたくなる店舗づくりを進めていきます」(架谷社長)
デジタル化を進め、従業員の人間力を高める――。その両方に取り組み、高い次元で融合できたとき、圧倒的に顧客から支持される企業となることができるのだろう。