「空の産業革命」と呼ばれるドローン(小型無人機)は急激に市場規模が拡大する可能性を秘めていることから、さまざまな業界でその活用が始まっている。同時に新しい技術や製品の研究開発も進み、国際競争も激化している。ドローンの技術やルールを研究する一般社団法人日本UAS産業振興協議会の鈴木真二理事長(東京大学大学院工学研究科教授)に、ドローンビジネスの現状を聞いた。

2018年は“ドローン物流元年”になる

――「空の産業革命」と呼ばれるドローンビジネスですが、昨年はどんな年でしたか。

日本でドローンビジネスは花開くか。

2017年は“産業用ドローン元年”だったといっていいのではないでしょうか。2015年末には航空法の改正でドローンの法整備がなされました。その後、航空局にはドローンの使用を求めて月に1000件ほど申請がありました。それが実用化に向かって進んでいます。安倍総理が「ドローンを使った物流網を3年で構築できるような環境を整える」と語ったのがちょうど3年前。ですから、今年は“ドローン物流元年”になればと思っています。

――産業界ではドローンは今、どのように活用されているのでしょうか。

代表的なものは、農薬散布です。これまでラジコンヘリのような大型の無人ヘリコプターを使って散布していました。3000台ぐらいが農薬散布用に活用されています。しかし、そうした無人ヘリを購入するには1000万円はかかる。農薬散布用のドローンは通常のドローンよりも大型になりますから費用はかかりますが、無人ヘリの数分の1、数百万円で購入できます。無人ヘリでは散布できないような狭いところでも散布することが可能です。

このほかドローンは測量の分野で活用され、上空から写真をとってその画像データをコンピューターで分析することなどが行われています。国土交通省は「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もっと魅力ある建設現場を目指す取組である「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を進めています。そんな取り組みの一環でドローンが公共事業などの工事現場でも活用されています。このほか災害対策などではヘリが飛べないようなところでドローンが活躍しています。

――今後は管制システムが重要な課題になるといわれています。

無人飛行などをするためには管制システムを整備する必要があり、そうした取り組みにも数社が手を挙げて進めています。ただ、こうした管制システムをさらに効率化するためには共通の空域で、測量や農薬散布、空撮でも、それぞれ異なる会社のシステムが同時に作動するような仕組み作りが大切です。そのためには全体を管理するシステムが必要になってきますから、航空交通管理(Air traffic management, ATM)の似たようなシステムでドローン向けの空中航空管理システム(Unmanned Aircraft System Traffic Management,UTM)が各国で検討されています。米国はNASAが連邦航空局(FAA)と一緒に行っています。

また、日本では今年度からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとしてスタートして、複数のシステムを統合するための大枠はJAXA(宇宙航空研究開発機構)が研究開発を始めています。JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)もそうした活動の中で助言などを行っています。3月22日から行われる「ジャパンドローン 2018」(Japan Drone 2018)でもNEDOのセッションなどが行われますから、それを見ればどんな研究が行われるのかわかります。