多くの会社でリモートワークが日常となった現在。通常の社内会議はもちろん、取引先へのプレゼンや営業トークもオンラインで行なわれるようになってきている。そんな“ニューノーマル”の働き方をする中で、これまで通り自分の価値を保ち、さらにキャリアアップを目指すにはどうすればいいのか? 今回はオンライン会議やオンラインプレゼンに的を絞ってグロービスの鳥潟幸志氏が解説する。
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※写真はイメージです(写真=iStock.com/fizkes)

相手の状態を把握するための雑談を

オンライン会議では、相手がどういう状態にあるかを把握しないままに自分の言いたいことを話してしまいがちです。ビデオの画面越しではなかなか難しいのですが、なるべく「相手の感情を踏まえた」上でポイントを伝えるようにしたいですね。例えば、オンラインでも最初にあいさつをするとか、「最近どうですか?」と少し雑談するなど。

私はオンライン授業を行うとき、まず受講生の皆さんの状態を良い悪いで投票してもらい、感触をつかむように工夫しています。一方的に長く説明するときは「何かご意見があれば、チャット機能でコメントください」と伝えます。そんなふうにツールの使い方を工夫し、相互理解になるためのコミュニケーションを取っておきましょう。

結論、理由、具体例の順で話す

前回お話したように、オンライン会議では対面で話すよりも相手に伝わる情報量が減ります。そのため「何を言いたいのかわからない!」となり、相手が気持ちをシャットアウトしてしまうことが起こりやすいのです。そこで、「論理的思考」に基づいて話す努力がオフライン時代よりいっそう求められます。

例えば、会議ではありがちですが、発言者は自分が考えたプロセスをなぞって説明したがるもの。「最初にこういう分析をしてこんな壁に当たり、このことに気づいて、だから、結論はこうです!」と言いたくなりますが、実は聞き手はその順番では聞きたくない。「この人、話が長いな」などと思われてしまうので、提案を論理的に整理し「①結論はこうです。②その理由はこういうことで、③具体的事例はこれです」と、誰が聞いてもわかりやすいように話す必要があります。

以上は一般的なオンライン会議での発言についてでしたが、オンラインでプレゼンをする場合はどうでしょう。

プレゼンで「外さない」ための3つの準備

プレゼンの成否は事前の準備で決まるものですが、オンライン時代は、準備にさらに時間をかける必要があります。

大切なのは3つのステップ。まず、第一に「プレゼンの目的を何にするか合意を取っておく」こと。これは根回しと言ってもいいのですが、会議を開いた後に的外れだったということにならないように、ぜひ確認しておきましょう。

第二に「聞き手のことを理解する」。相手が何に興味を持つのか、過去にどんな仕事をしてきたのか、どんな失敗をしてきたのかを調べておきます。

そして、その情報に基づいて「聞き手の導き方を考えておく」ことが、第三の準備になります。これまでの対面プレゼンでは、その場で相手の反応を見て調整できましたが、オンラインではビデオなどの不具合で、それができないこともあります。そんな場合でも、この3つの準備をしておけば“外す”ことはないと思います。

本番では「初頭効果」と「終末効果」を意識する

オンラインプレゼンの怖いところは、「この人の話は聞く価値がない」と思われた瞬間から、相手はPC上で他の作業ができてしまう状況であること。オフラインでのプレゼンより厳しい目にさらされます。そうならないためにも、プレゼンでは「初頭効果」「終末効果」を意識しましょう。「初頭効果」というのは、要は“つかみ”のことです。「今から話すことはとても大事なんです」「この数字、ご存知ですか?」などの言い方で、相手の注意を惹きつける。また、最後にどういうインパクトを与えて会議を終えるかという「終末効果」も忘れずに。例えば会議の目的が予算確保なら、最後に次の予算取りのためのステップを確認しておくなど、終わり方までこだわりを持つことが大事です。

オンラインのやりとりでは拘束時間のシビアさが増す

リモートワークの時代は、これまでより「相手の時間をもらう」ということがシビアになってきています。プライベート空間にいる相手を拘束し、その空間から気持ちを切り替えて仕事に入ってきてもらうわけですから、時間を無駄に使っては申し訳ないということになる。それは自分の時間も同じで、皆さんも感じたことがあると思うのですが、オンライン会議が終わり、WEBミーティングから退出した瞬間、「この会議に何の意味があったんだろう」と思ってしまう。プライベート空間にいて、ボタン一つで会議に入ったり出たりできる分、「何だったんだ、あれは」という落差をオフィスでの会議より大きく感じるのです。自分がそんな“時間泥棒”にはならないように、くれぐれも気をつけましょう。